Vol.6 漫画「ボクがさやかちゃんになったわけ」の作者が語る女装の楽しさ

ここ数年、女装をするきっかけとして急上昇しているのが「コスプレ」!

一部の熟練者だけが女装コスプレをしていたのが、同人ゲーム「東方Project」の大ヒットでネット販売されている手ごろな衣装を着て気軽に仲間と楽しむ人が2010年ごろから特に増えました。

女装コスプレの敷居が下がるにつれて、どんどん女装者が増え、そして自分の女装スタイルを見出している今、ある意味時代が動いている瞬間なのかもしれません。

そこで、今回は女装コスプレを最近始めたというコスプレイヤーさんにお話を伺ってみました! 男性である自分を女性、そして2次元へと落とし込む、ある意味究極の変身行為の裏には通常の女装とはまた違うベクトルの思いが詰まっていました。


―自己紹介をお願いします。

こんにちは! 女装コスプレネタで漫画同人誌やってます、さやぶ~です! 設定は永遠の14歳ですが大阪万博でソ連館に並んでたのはナイショだよ(笑)。

―大阪万博って、1970年ですね。なかなか豊富な人生経験がうかがえます(笑)。 お仕事は何ですか?

職業は魔法少女ですが、事件が無い時はオッサンに変身して、世界の危機じゃなくて会社の機器を保守管理してます。

技術系なので何事もテクニカルに考えますが、好きな言葉は「奇跡も魔法もあるんだよ!」です。

―まさに奇跡的な出会いからこのインタビューがあるわけですが、さやぶ~さんが女装を始めるきっかけは何でしたか?

女装歴は……ちょっとアプローチが変化球なのですが趣味で学生映画をやっていて、スタントとか女性の出演者に頼みにくいアクションとか黒のゴスロリドレス着たりして、自分でやっていました。

あと、自主制作映画は何でも自分達でやりますのでスキルの一つとしてコスメティックをちゃんと勉強したかったのもあります。なので異性装以前に「役に応じた服装」にはあまり抵抗のない環境にありました。

―なるほど、まず最初に演じ表現することがあったんですね。本格的にコスプレを始めたのはいつですか?

女装コスプレでイベントデビューしたのは一昨年の冬コミが初めてで、以後毎回「女装したオッサンの同人誌漫画描きなキャラ」で参加しています。

―さやぶ~さんは、2年ほど前に本格的にマンガを描き始めたとのことですが、とても読み応えのあるレポート漫画も描かれていますよね。

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実は漫画は学生時代描いていましたが就職してから縁遠くなってしまい漫画もアニメも20年以上離れていました。

アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」に放映の2年遅れで出会ってハマり、自主制作映画サークルの女性陣も「まど☆マギ」にハマっていたので「同人誌作るべ!」…となり、コミケにリサーチに行ったらコスプレ売り子が人気なのがわかり……「ならば5人で魔法少女やるべ!」と言う事で気づけばメンバー5人(ボク以外は女子)で魔法少女になってました。

―同人活動と同軸にコスプレがあったんですね。pixivや同人誌即売会での反応はどうですか?

当初コスプレはマーケティングの一環だったのですが、やってみるとテクニカルに物凄く面白くて、初コミケは「まど☆マギ」の2次創作と、「女装ハウツーと周りの反応」を題材とした2種類の同人誌を出しました。

当初「女装本なんて1冊も売れないんじゃぁ?」と考えていたのですが並べてみると2次創作本より出て驚きました。「ええ?このジャンル需要あるの!?」と。

その時はまだ女装を取り巻く市場も全くわかっていなかったんです。

―思わぬ反響を得た女装ハウツー同人誌ですが、どうして作ろうと思ったんですか?

初めてメイクした時は、元素材がかなり問題アリ……いえ、ボクは「デカくて黒くてデコボコのブサ面」なものですからそれこそ1工程1工程が全く巧く行かなくて……。

初めて鏡見た時は恐怖と戦慄で倒れる所でした。しかし、いろいろ調べて試してみるとノウハウが見えてきました。この瞬間が技術者的にたまらないのですね。

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また、月面のようだった肌がスキンケアによって改善いく様も大自然の驚異で驚きました。それで、この技術的興奮をシェアしたくて漫画にすることにしました。丁度その頃pixivというイラストの投稿サイトがある事を教えてもらったので「ウチラ魔法少女部」という4コマ漫画を描き始めました。

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その後、4コマでネタにしたハウツーと周りの反応をドラマ仕立てにした「ボクがさやかちゃんになったわけ」というストーリー漫画を描いてみました。もちろん、男性向けに描いたのですがコミケでは女性に人気で一度購入された方が「友達用に」とまた買いに来てくれることもありました。

―女装コスプレ体験談なのに、女性が買いに来るとは興味深いですね。

考えてもみなかったのですが、女性でも基本的なメイク方法を体系的に教わる機会がなかったり、学生時代に覚えたメイク方のまま止まってたり、自己流だったりしてることがわかりました。それで今は男女関係無く描いてます。

一方、男性読者では女装に興味のある読者ばかりでなくむしろ全く興味の無い方が多くいる事に気づきました。

たぶん男って技術的難関を突破する瞬間が好きなんですね。ボクもそうなんですけど。たぶんこれって昔のスポーツ根性モノの流れと同じなんだと思います。なのでボクが巧く行かない様や試行錯誤の過程が賛同を得たようで、女装界隈でない方の共感を得られたのも自分的に満足度の高い反応でした。

―ところで、さやぶ~さんは家族や職場に女装コスプレをオープンにしていらっしゃいますが、とても珍しいと思います。

元が自主制作映画の……特にSF&ホラーが主軸のサークルですのでストーリー的にゾンビとか血まみれ少女とかが出てきます。そうすると家で皆で集まって特殊メイクや特殊造形を試したり、衣装のフィッティングも普通にやりますので「女装」とか特別な意味を持たなかったんです。

―女装モデルにウルトラマン創業一家の子がいますが、彼も女装は一種の特撮っていっていたのを思い出しました(笑)。

なので魔法少女部結成後も撮影準備と同じで皆で集まって、男はボクだけですが……フツーにメイク勉強会とかやってました。

そんな環境で子供らも育ってますので、ボクが魔法少女になってたところで「ああ、またやってらぁ」とそんな反応です。

むしろボクはサバイバル力こそ人生だと思ってますのでむしろ子供には積極的に「揺さぶり」かけてやります。人のいろんな面を認める許容量って人生豊かにすると思うんですよね……いえ、自己弁護でなく。

―子供の前へ変身とは! すごい教育環境ですね。LGBTを始め、多様な価値観が顕著になっている今、他人を許容できる力は、今の時代大きなキーワードになっていると思います。

あとボクの描きたいテーマの一つに「日常に非日常を持ち込みそれが日常に取って代わる瞬間」と言うのがあって、コスプレはまさに実体験できます。

一度「魔法少女寿司」というイベントをやりました。これは全員でガッツリ魔法少女に盛ってなってから酢飯作ったりして寿司パーティをやりました。

そうしたら面白いことが起こって2時間も魔法少女で寿司作ってると馴れてきて全く違和感無くなっちゃうんですね。「ウチラ昔から魔法少女だったよね?」って……逆に変身といた時の違和感はハンパ無かったです。「キミ誰?」的な。

そんな感じなので、女装コスがバッチリ決まった時には嬉しくってFacebookに乗せるわ、会社の同僚にも当然ウケると思ってドヤ顔で自慢したのですが……。

―趣味のノリを会社へ! どうでしたか?

ドン引きされました。それはもう「これがドン引きか!」と言うくらいドン引きされました。その時気づきました。ああ、なるほど……社会的に女装とはこういうモノかと。女装を取り巻く文化的な背景が良くわかってなかったのですね。

ある人は困惑し、ある人は「応援するよ!」って涙目になったり、このレスポンスは何なのかと。一般的に「女装」と言う言葉の持つ破壊力に触れることができました。自分が不勉強だったからこその体験ですが、これは重要なことだと思いました。

人は自分の知らない事や未知の事を受け入れる選択も出来れば、単純に恐れ、それから逃れる為に拒絶や防衛に走るのだなと。言葉では分かってても体験できたのは財産でした。一方で異なる価値を認める事や、未知のものから面白さを発見出来ると言うのはとても楽しいことです。

―その体験を言葉にできるのは、物事をすごくフラットな見方ができていて尊敬します。その上であえてお尋ねしますが、女装で何か嫌な思いをさせられたことはありますか?

ボクの場合、女装するのは同人関係のイベント会場だけですし経験値も知れてますので嫌な思いをしたことはありません。むしろ、感動することの方が多いです。

―同人イベントだと、そもそも環境が出来上がっていますものね。では、初めての時はどうでしたか?

初めてのイベント参加……女装での外出は本当に恐かったです。

自分でヤルと言っておきながら逃げちゃおうかとも思いました。おまけにガクブルで更衣室行ったらツケマ忘れてきた事に気づいたんですね。冗談みたいですけど「ツケマが無いと外歩けないよ!」って思いました。

そしたら隣にいた女装レイヤーさんが気遣ってくれて声をかけてくれたんです。ちょっとした一言二言だったんですけど救われました。思い返せば、見ず知らずの人にも声かけてくれたり助けてくれたりと親切な女装レイヤーさんとと会う事が多いです。今は更衣室でのコミニュケーションが楽しみになりました。

あと、今やコスプレと言っても女装コスが過半数占めますので男子更衣室といっても景観は女子更衣室です。最初は驚愕したのですが、若い人達は下着姿でも全く躊躇しないんですよね。ふと思ったら女装や女性用下着の着用について差別して貶めてるのは自分自身である事に気づきました。たぶんそんな自分はヤなヤツだったと思います。

―女装を通して、常に新しい気づきがあるんですね。自分の予想外の反応を得たことはありますか?

予想外……これは女装してみせた時の反応につきますね。反応には明確に男女差があるように感じます。

男はまず拒絶、女性は拒絶もありますがしばしば女子グループに向かえ入れられ女子の序列に入ります。これは面白い。なにかこうDNAに刻まれた人の基本OS部分を垣間みた気がします。

―女装をすることで女子グループに入れるというのはありますね。

共通の話題がメイクやファッションになったりして。

それと同人誌描きの女装レイヤー「さやぶ~さん」が独自のネットワークを持ち始め、実在するキャラクターとして認知されてきたこと……読者の皆さんは当然「中の人」には関心が無くて「さやぶ~さん」と友達だという関係、中の人「僕」にもさやぶ~さんがどこに行くのか分からないと言う第三者的な視点が軽くカルチャーショックです。

―活動のために作った「さやぶ~」というキャラクターが一人歩きしはじめているということですね。女装をした人なら、誰しも通る道かもしれません。では、一番楽しいことは何ですか?

やはり、テクニカルに、社会的に奥深いものなので日々発見や出会いがあることですね。立花さんの所に伺ったキッカケも熟練の女装レイヤーさんの紹介でしたし、それが元でまたいろいろな事を学んだり。

まぁ、ボクの場合女装するには高齢者だし5頭身なんで「美女装」ってわけにいかないですが個人的には巧く行かないことも面白さですね。「諦めたらそれまでだ!」ですから。また、最近は女性にメイクの助言を求められたりする場面も多く、人を勇気づけたりテクニカルに役に立てて喜んでもらえるのが嬉しいです。

―人に教える立場になったというのは大きいですね!

それと二次的な効果として女装コスを初めて健康状態は俄然良くなりました。

なにしろ衣装に入る体型とメイクの下地を維持向上する為には健康管理ハンパ無いですから。運動に全く縁遠い生活だったのが毎日欠かさずジョギングしたり体幹トレーニングはじめたり、美容の為に早寝早起きで規則正しい生活になりましたし。おかげで毎年悩まされていた関節痛とか直っちゃいまして体調はすこぶる快調です。

中年男性は健康のためにも女装した方がイイです。

―さやぶ~さんはとても精力的にマンガを公開し続けていらっしゃいますが、執筆活動を通じてどんなことを人に伝えていきたいのでしょうか?

どんなモノにも価値が合ってそれは尊いモノだと言うこと。でも価値って自分が見つけるものなので、面白さを引き出す目を持ってないとダメですよね。

なので自分が面白いと思ったことを伝えるためにシツコク描きたいと思います。

また、テクニカルな面白さの他に、例えば立花さんに撮影してもらって何が面白いって、すごく一生懸命撮ってくれますよね、ただのオッサンの僕を。そんな生き様にいちいち感動しちゃう……。そんな人に貰った感動を読者に伝えたいです。

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―ただ好きでやってるだけなんですが、そう感じていただけてありがたいです(笑)。コスプレ以外でも女装をしたいと思いますか?

なにぶんコスプレ…しかもまど☆マギのさやかちゃん担当(魔法少女部は5人なので全員担当が決まってる)なのでその発想自体無かったのですが……。あ、小悪魔agehaファンなので盛り盛りに盛ってage嬢やりたいです! それで「age嬢寿司パーティ」をやりたいですね。

―やっぱり非日常を日常に持ってくるんですね、それは期待! 最後に一言お願いします。

只今pixivにてメイク、美容、女装コスプレネタ4コマ漫画をコツコツ不定期投稿中です。

皆様のレスポンスこそボクの燃料ですのでお立寄の際はゼヒ加点やツッコミ宜しくお願いします。そしてもしご興味を持たれた方がおられましたら是非イベント会場でボクと握手っ!! 最新情報は告知ページにて紹介しています。

さやぶ~でした~!

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いかがでしたか?

女装行為によって、様々な発見は皆それぞれにありますがさやぶ~さんがステキなところは、自分の体験をてらいなく周囲に発信し、そして人に楽しんでもらおうという姿勢。そのストイックな探求心は、性別や世代関係なく、様々な人を巻き込んでいくように思います。

一口に女装といっても多種多様な境遇・性質・スタンスの人ばかりですがコスプレという入口があったからこそ、すそ野が広がったと感じています。みなが自分らしく生きていくためには、異なる価値観を認めあうことが大切なのではないか、そんなことを感じたインタビューでした。

ありがとうございました!

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