第101回 世界で問題視される“同性愛矯正レイプ” 日本の法律は男性被害者軽視?

 

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まきむらよ。

毎週金曜、世界のニュースから性を考える時事コラム「まきむぅの虹色NEWSサテライト」をお送りしております。

今回のテーマは「世界で問題視される“同性愛矯正レイプ”」です。

ここ数日、インドのゲイ男性が“同性愛を矯正する”という名目で母親との性行為を強いられたというニュースが、世界中のメディアで報じられています。

でも、実はこれ、インドだけの話でも、同性愛者だけが被害者になってる話でもないのよね。今回はこの問題について、

★ “同性愛矯正レイプ”が横行しているのはインドだけじゃない
★ “同性愛矯正レイプ”、日本では報じられない?
★ 被害者になっているのは同性愛者だけじゃない
★ もし、日本でゲイ男性が女性にレイプされたら……日本の法律は男性軽視?

以上の流れでお送りします。

※ 扱うテーマの性質上、ものすごい胸糞悪い話が出てきたりします。胸糞悪い話は灰色の文字で書きますので、そういう話を読みたくない人は灰色の部分を読み飛ばすことをお勧めします。


★ “同性愛矯正レイプ”が横行しているのはインドだけじゃない
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(写真:By Charles Haynes from Hobart, Australia [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons)
南アフリカで女性同士のカップルが暴行され、殺害されたことに対する抗議のもよう。

一部メディアではあたかも「インドびっくりニュース」みたいに扱われているこの問題――同性愛を“矯正”するという言い訳でのレイプ

しかしこれは、別に最近の話でもインドだけの話でもありません。昔から以下の国々で問題になっていることなんです。

▼同性愛を“矯正”するという言い訳での性暴力事件が報じられた国
・アメリカ
・インド
・タイ
・南アフリカ
・ウガンダ
・ジャマイカ
・エクアドル
・カメルーン

(リストはGMHC, HRWほかの資料をもとに作成)

加害者たちは犯行時、「(ゲイ男性に対して)オカマ野郎」「(レズビアン女性に対して)お前が女であることを感じさせてやる」「美人なのに男の喜びを知らないなんてもったいない、教えてやろう」などと言っていたといいます(出典:GMHCM&G)。

……ん?

なんかこれ……

日本でも聞くセリフよね……?

ところがところが。もしこういった性暴力事件が日本で起きた場合、少なくともそれとわかる形では報じられない可能性が高いのだといいます。


★ “同性愛矯正レイプ”、日本では報じられない?

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写真:ぱくたそ

元・地方新聞記者の方によると、例えば日本でゲイ男性が“同性愛矯正レイプ”の被害に遭ったとしても、そのようには報じられない可能性がきわめて高いのだそうです。理由は以下の3点です。

▼日本で“同性愛矯正”を騙るレイプが報じられない理由

(1)性暴力事件の場合、プライバシーを守るため、被害者がどんな人なのかということは極力隠される。まして「被害者は同性愛者男性だった」などと報じられることは、よほどの必要性が無い限り、まずないと考えられる。

(2)日本では、強姦は被害者が訴え出なければ事件にならない。被害者がカミングアウトしていない同性愛者だった場合、そもそも警察に訴え出ること自体を恐れると考えられるので、立件されにくく、ニュースにもなりにくい。

(3)日本では、強姦被害者が男性だった場合、そもそも強姦罪が適用されない。

(4)日本では、性的指向を理由にしたヘイトクライムを法で取り締まっていない。たとえば同性愛を言い訳にした性暴力事件が起きても、「同性愛者に対するヘイトクライム」ではなく、単に「性暴力事件」として処理される。
ということで

インドびっくりニュースとして済ませちゃいけないのよ

“同性愛矯正レイプ”を騙る性暴力が、日本で起こっていないとは言い切れません。「報じられにくい」ことは確かでしょうが、だからといって「起こっていない」とは限らないというわけです。

しかも。


★ 被害者になっているのは同性愛者だけじゃない
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過去記事でも書いた通り、同性愛者を標的とした犯罪の被害者となるのは、

×同性愛者
加害者によって同性愛者だということにされた人

なのよね。第一報としてこの“同性愛矯正レイプ”を報じた、インドの有名新聞「ザ・タイムズ・オブ・インディア」によると、こんなケースも報告されているのだそうです。

あるレズビアンカップルには、異性愛者である女友達がいた。異性愛者の女の子の家族が、レズビアンカップルのもとを訪ねた結果、家族は「このカップルの一方とうちの娘が“不自然な関係”にあるのではないか」と疑った。そこで彼らは、レズビアンカップルに対してのみならず、(異性愛者である)自分たちの娘に対してまで“同性愛矯正レイプ”を計画したのだった。

また同紙によれば、トランスジェンダーが被害者になったケースも複数報じられています。

自分はトランスジェンダー男性だが、17歳の時にいとこにレイプされた。私には小さい時から性別違和があり、自分が男性だという自認があったが、家族は『自分が女だということを認めろ』と暴言や暴力で責め立てた。それでも私が言うことを聞かないので、家族は私のいとこに命じ、私をレイプさせた。そのことを両親に訴えると、彼らは私を殴りつけ、私をレイプした人間を『夫として受け入れろ』と強いた。

許しがたいケースです。が、少なくとも問題視されるようにはなってきたわけよね。また日本でも、「性自認や性的指向を理由にした差別を法律で禁じよう」という動きがあります。

最後に、もし日本でそういうことが起きた場合はどうすればいいのか、弁護士さんのコメントを紹介します。


★ もし、日本でゲイ男性が女性にレイプされたら……?
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あっっっっっっったりまえのことですけど、同性愛とかなんとか全然関係なく、性暴力は犯罪です

なので、被害者がゲイだろうがミニスカをはいてようが、それを言い訳にする加害者が悪いのであって、加害者は法で裁かれ相応の刑罰を受けることになります。

だけれども日本では、ヘイトクライム禁止法もなければ、男性が被害者の場合は強姦罪も適用されないわけです。

そういう中で、もしゲイ男性が「ゲイを治す」との言い訳で女性から性暴力を振るわれた場合は、いったいどうすればいいのか。LGBTs関連の法律相談に積極的に取り組む、永野・山下法律事務所の永野靖弁護士にお話を伺いました。

「ゲイを治す」との言い訳で男性が女性から性暴力を振るわれた場合、強制わいせつ罪(刑法176条)が適用されます。また、性暴力によってケガをさせたり死亡させたりすれば強制わいせつ致死傷罪(刑法181条)が適用されますので、警察に被害を訴えれば加害者の女性は処罰されます。

ということで、「自分が同性愛者だから悪いんだ」「自分は男だから、性暴力被害者として扱われない」なんてことは全然ないわけです。そんなことがあったとしたら、そんなことを言うヤツのほうが間違ってるの。

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日本でも、今年3月に法務省で男性が被害者となった性犯罪事例が話し合われたりと、すこしずつ状況が変わりつつあります。

ですので、万が一“同性愛矯正レイプ”を騙る性暴力の被害に遭われたとしても、性別に関係なく、どうか以下二つのことを覚えていていただきたいと思います。

(1)自分の心をきちんと休め、自分を責めないこと。
「夜出歩いた自分が悪い」「自分が同性愛者だから悪い」などという考えにとらわれない。

(2)LGBT関連に詳しい弁護士さんなど、しかるべき場所に相談すること。
コメントを下さった永野靖弁護士の永野・山下法律事務所はじめ、最近では力になってくれる弁護士さんも増えています。
なにより、性に関する正しい知識が広まり、“同性愛矯正レイプ”なんてものを騙る人がそもそもいなくなることを願ってやみません。

ということで、読んでくださってありがとうございました! また来週金曜日にね。まきむぅでした◎


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