第38号 老後の「ひとり問題」をどうする〜ふたたびグループリビングを語る〜

 

 イイね!やステキで、LGBTのグループホームは建たない?

前回は、パープル・ハンズのライフプランニング研究会(LP研)で、高齢期のグループリビングについて考えてみたときの様子をご報告をしました。

それはある(一般)高齢者のNPOの物語。高齢者がたがいに支えあって暮らす住まいを求めて苦節10年、ようやく地域の空き家の提供者を見つけ、空き家改修・活用のモデル事業として国と都からも助成金を受け、5世帯+共有スペースのホームを設立。全国から見学者が訪れ、地域での説明会には50名以上が参加し、募集開始!
ところが、いざ蓋を開けてみると、入居希望者がいなかった……。自分たちでの支え合いの仲間暮らしは、言うほど簡単ではない。みんな老後が心配、孤立が不安、と口に出しては言うものの、いざできてみると、それまでの生活を整理し、この共同生活に参加する人がいなかったという現実はどう考えればいいのか……。
建物と残った借金を抱えながら、さてどうしよう、と豪快に笑うNPO理事長(73歳)をお迎えして開催された5月のLP研でした。

もちろん、この高齢社会で、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などには、それなりに入居者がいます。

「やっぱり企業が安心。NPO運営では信用されない?」(企業で破綻しているところもありますが……)
「お金を出してそれに見合う介護やサービスを受けるのではなく、自分たちで支え合う暮らしでは、敷居が高すぎるのか」(消費者でいるほうが楽?)
「しかし、それでは富裕層しか入居できないし、低所得層の高齢者はどうしたらいいのか」(ホントに!)

なるほど、今回のお話で、空き家や助成金の活用でこうすればホームをつくることができるのか、とイメージがわきました(こちらのページの実例2が今回の話です)。その一方、入居者を集めてともに仲間暮らしをするというのは現実に可能なのか?
さまざまなことを思わされたLP研でした。

そして、これは私にとって、いまコミュニティのあちこちで関心が高まっている、LGBTにやさしいグループホームとか、性的マイノリティ向けの介護施設といったことへの、夢や熱気はともかくとして、現実の可能性を考えさせずにはおかない話だったのです。

昔、どこの住宅メーカーのCMだったでしょう、披露宴で挨拶する花嫁の父といった感じで、渋い俳優の芦田伸介さんが、「愛だの夢だので、二世帯住宅は建たないのです」と繰り返している画面を思い出しました。娘をもっていく男が「お義父さん、僕が二世帯住宅を建てますから上下で一緒に住みましょうよ」などと気楽なことを言ったのを現実の厳しさでたしなめている、そんなドラマが想像されました(笑)。これに照らせば、「イイね!やステキで、LGBTのグループホームは建たないのです」というところでしょうか……。

同性婚テーマが盛り上がる一方、現実には多くの人は、自分は単身で高齢期を迎えるであろうと予想しているようです(このあいだも私が担当する木曜タックスノットでそんな話をしたところ……)。高齢期をどう送るのか、私もふくめ気になっています。

 高齢期の共同暮らしには現実にどんなものがあるか

とりあえず、「老後の1人問題」をどうするのか? 少なくも住宅面では、1人が不安、他人が近くにいるところで暮らしたいーーもしそういう希望があるなら(もちろん、孤独死上等! でもいいのですが)、いま現実にはどんな共同暮らしの形態があるのでしょう? ここで少し整理してみます。

【事業者が運営する共同住居】
行政系の老人ホーム 老人ホームでいちばん耳馴染みなのは特別養護老人ホーム、通称、特養でしょう。介護を受けながら最期までそこで生活できる施設です。介護保険で入所でき、費用的にも安くすみますが、常時介護必要など入居条件は厳しく、待機者が多いのも周知のとおりです。
ほかに、低所得層の高齢者が入所できる軽費老人ホーム(A型、B型)やその一種のケアハウス(C型)があり(食事提供や介護、所得制限の有無などで区分)、さらに現在では数は少なくなりましたが、養護老人ホーム(下記)というものもあります。これは古典的な養老院ーー身寄りのない貧困高齢者の収容ーーのイメージに近いでしょうか。

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都内の「養護老人ホーム」に入居する姉妹を伝える記事。「年収150万円 貧困層の行方は」などの見出し。入居は行政が審査し公費で入居させる、と。

企業系の老人ホーム 以上が基本、社会福祉法人などが運営し、行政を介して入所するものである一方、株式会社なども参入し、一般の人が直接申し込める有料老人ホームもおなじみになりました。設備や人員配置は行政の基準に準拠し、富裕層向けから中堅層向けまで、それぞれのターゲットによってさまざまな金額や特徴が見られます。介護付きもあれば、介護なしのものもあります。

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新聞広告や折り込み広告には、有料老人ホームのものがたくさん入っています。
サービス付き高齢者住宅 これまであった高専賃や高優賃などのさまざまな高齢者向け住宅を一本化し、国交省と厚労省所管の「高齢者すまい法」によって平成23年から始まったもの。通称、サ高住。高齢者向けのハードの面(バリアフリー、一定面積〈25平米〉や設備)と、見守りサービス(ケア専門家による安否確認、生活相談は必須)が要件です。24時間待機の管理人がいる老人向けワンルームマンションといったイメージ。有料老人ホームなどと異なり、高額な入居一時金は不要です。そこを自宅として、介護が必要な場合は訪問介護や、近隣の提携先医院から訪問医療に来てもらいます。安否確認や相談以外の、食事付きやその他のサービスは施設によってさまざまで、これから値段とともに多様化が見込まれます。基本、賃貸マンションですので、合わなければ引っ越すことも可能。
また、公営住宅でサ高住同様、バリアフリー設備や見守りなどのある高齢者向けのものをシルバーハウジングと呼んでいます。

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「安心のサービス付き高齢者向け住宅」「自立から要介護5まで安心」と謳っています。

グループホーム 認知症の人が運営者とともに共同生活することで、進行を遅らせたり改善が見られたりすることもあります。介護保険が適用されます。

以上のように、介護や食事提供、所得制限の有無、行政による措置入所か自分での契約かなどによって、いくつか分かれるようです。

【自分でできる共同住居】︎
自宅に同居人を募る 1人が不安で他人と住みたい、でも相方いない。なら、同居者(間借り人)募集もどう? 自分所有のマンションならだれも文句はないでしょう。生活もシェアすれば、食費など生活費も節約可能。昔の彼氏といまふたたびの共暮らし。「おい、そっちも一人なら、また一緒に住まないか?」。これも人生やねえ〜。

UR(旧住宅公団)のハウスシェアリング 賃貸住宅でなら、URハウスシェアーー非親族でも部屋の数まで一緒に賃貸できるーーも候補になります。そもそも高齢者どうしの共住ニーズに対応、が導入理由でした。さらに、高齢化・団地過疎問題を抱えるUR団地では、各地の団地自治会が孤独死を出さない見守りや交流(空きテナントなどをカフェや居場所に改修など)にも取り組んでおり(横浜の公田町団地の例)、そこに参加していくことも安心な暮らし方かもしれません(セクマイフレンドリーかはわかりませんが)。

自前グループホーム 自家でアパートをもっているなら、借り手はゲイ/セクマイをSNSなどで募集し、自身も居住。入居者がたがいに行き来し、あるいは1室は入居者の共同使用部屋として交流など、大家の特権でみずからグループホームを作ってしまう。私もすでに2例ほど知っています。なんだかドリフのアパートみたい(ふる! 笑)。オ〜ッス!

なりゆきグループホーム・なりゆきゲイタウン そこまで大仰でなくとも、おなじマンションや団地内にセクマイの友人がいると、実際にはグループホームに近い機能をもつことになります。関西にはUR団地で、やけにゲイ居住率が高いところもあるとか(笑)。また、駅界隈で自転車3分の距離で知り合いを作っておく。これらは、お金かけずに今すぐできる命綱です。

こう見てくると、共同で住む方法はいろいろあり、時代も「シェア」へ風が吹いています。あとは、おなじ仲間を信じながら、かつほどほどの距離を保って1つ屋根の下に平和共存する、「大人のコミュ力」が問われているのかもしれません。

 老後の孤立を回避する仲間暮らしを求めて

さて、老人ホームなどでは共同生活のなかでさまざまな「アクティビティ」(余暇活動など)も行なわれています。ただ、自転車に乗るように飛行機に乗って世界中を旅してきたゴージャスなオネエさんが、いまさらなにが悲しくて童謡歌ってリズム体操したり絵手紙描いたりしないといけないのか。スタッフも、性的マイノリティ対応の点での不備もあるかも。一人暮らしの場合でなくても、パートナーへ家族としての対応があるのか不安。
そのへんに、LGBT向け介護施設やホームを、といった声もあがる理由があるのでしょう。

事業者が参入しやすいのは、有料老人ホームとサービス付き高齢者住宅ですが、行政の認可や補助金が入るので、入居者を限定したものは不可。LGBT向き・優遇をうたって応募者を選別する(ノンケははじめから来ないように仕向ける)ことになるのでしょうが、一棟まるごとカムアウト状態は当事者にはまだ敷居が高い? 地元住民からの反対運動が起こる(まさか)?

一方、空き家改修でグループホームとはよくいうのですが、前回のLP研報告でも出ましたが、改修して入居者(賃借人)を集める事業をする場合、建物は建築基準法上、「寄宿舎」の要件を満たす必要があり、耐火構造だとか、隣家との距離、廊下の幅、もちろん防火設備とか、じつは意外に厳しい。これは劣悪な「脱法ハウス」や「貧困ビジネス」を規制するため近年、急に厳しくなったのですが、助成金もらってもけっこう改修費がかかり、かならずしも安く住めるとは限らないかも……。もちろんそのうえで、そこで共同生活をする入居者の募集や生活づくりのノウハウは要開発です。

いろいろ困難そうに書きましたが、それでも老後の孤立を回避する仲間暮らしは、私もずっと関心をもっていきたいのです……。

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事務所のある東中野にもこんな空き家(しかももともとアパート)がいくらもあって、ここは1階に店舗(整体院、右奥)が入っていたようで、そこをNPOの事務所にし、あとは入居者が、なんて思うのですが……。

ということで、じつは8月のLP研では、パープル・ハンズのメンバーの1人が個人的にかかわっている「LGBT向けの老人ホーム」をつくろうと動いているプロジェクトがあるとかで、これまでも何度か当事者をまじえワークショップを開催したりしているそう。そちらから主宰者のかたなどに来ていただき、中間報告会を企画してみようと思っています。こちらも企画が決まり次第、また2CHOPOでもご紹介していきますので、どうぞご注目ください。

【お知らせ】
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