第23回 タイプじゃない人と恋に落ちる秘訣

 

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次のコラムは何について書くのかと聞かれたので、こう答えた。

「タイプじゃない人と恋に落ちたり、セックスする秘訣よ!」

相手は戸惑った。予想通りの反応だ。首を傾げながら、その人は当たり前のようにこう返した。

「なんでタイプじゃない人とセックスする必要があるの?」

タイプじゃない人とは付き合わないし、セックスもしない。そんな鉄板ルールにケチをつけるなんて、キャシーはよほどのひねくれ者かコラムのネタが切れて困っているのだろう。そう思われても仕方ない。しかし、それを承知の上でケチをつけてみよう。

日本のゲイコミュニティに足を踏み入れて間もなかった頃、とある文化にとても違和感を覚えた。熊専とか、デブ専とか、ガリ専とか、外専とか、特定のタイプしか好きにならない人がたくさんいて、白黒ハッキリと性的対象になるかならないか線が引かれていたのだ。トロントのゲイコミュニティではそれに加えて、白人専やアジ専と人種でも線を引かれるようになった。違和感は増すばかりだ。様々なタイプの人や人種に惹かれる自分は少数派だった。一応、「誰専」という言葉もあったが、どちらかといえば誰でも見境なく好きになるという意味合いが強くて、なんだか自分のあり方にフィットしなかった。

今、ティンダーというアプリがとても流行っている。社会現象と呼んでも過言ではないほど、新たなデート文化を形成している。使い方は簡単だ。スマホの画面に現れる相手の写真を見て、気に入れば右にスワイプして、興味がなければ左にスワイプする。それを繰り返して、両思いの相手を見つけるのだ。そのアプリを初めて手にした時、ゲーム的な楽しさにワクワクした。しかし、なんとも言えない悲しさも感じた。相手に対して好きか嫌いかでしか反応できないなんて、自分の価値観からは遠く離れていた。

誰かと出会ったとき、様々な感情や考えが頭の中を過る。「今すぐこの人とベッドに飛び込みたい」と思うことがあれば、「この人のこともっと知りたいな」と興味が湧いたり、「この人の笑顔は素敵だな」と自分まで笑顔になることもある。相手の外見に惹かれることもあれば、考え方にビビビッと来ることもある。ちょっとしたしぐさで心がとろけることだってある。人間と人間の化学反応は、イケるかどうかより遥かに豊かだ。しかし、狭い見方でしか相手を捉えることができなければ、そうした多様性にも気が付かない。それではもったいない。

例えば、「私は背の高い人しかイケない」だなんて自分に言い聞かせていれば、そこばかりに目がいって、背の低い人は問答無用で除外してしまう。本当ならとてもいい関係が築けた人も、そのせいでチャンスを逃してしまう。相手にないものを見つけようと必死になっても、何も見えるはずがない。そんな時は、相手に惹かれる部分がないか探してみよう。もしかしたら、全然見つからないかもしれない。それならそれでいい。しかし、たまに思わぬものに惹かれている自分に気付くかもしれない。そしたら、そこに注目してみよう。興味があれば、もっと深くまで掘ってみよう。そうすれば、あっという間に恋に落ちている……なんてこともあるかもしれない。少なくとも、普段なら見過ごしていた相手の魅力を発見できるだろう。

キャシーのセックス歴を辿ってみると、気持ちが良かったセックスに限って相手がタイプじゃなかったりする。だから、そのジンクスに従って、タイプかどうかは重視しなくなった。私たちのタイプは、思う以上に絶対ではない。自分のタイプにあんまりがんじがらめになっていると、豊かな出会いをみすみす見逃してしまう。別に無理にタイプじゃない人を好きになる必要はない。ただ、たまには心の窓を開けて、少し違う風も楽しんでみればいい。

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