第42号 渋谷区パートナーシップ証明書を、大胆予想する!?

 

 ●渋谷区のパートナーシップ証明開始は、11月ごろか?

7月14日、性的マイノリティ問題に取り組む超党派の国会議員でつくる議員連盟、通称LGBT議連のセンセイたちが、同性のカップルに「結婚に相当する関係」と認める証明書を発行する条例を制定した長谷部健・渋谷区長に対するヒアリングを行なったという報道がありました(NHK)。
参加した議員自身がツイッターなどで触れているのも散見されます。
このヒアリングで長谷部区長は、ことし11月ごろに証明書を発行するとともに、悩みを抱えるすべての当事者に向けて相談窓口の設置を検討していることなどを説明しました。

ここでいくつかおさらいを。
パートナーシップ条例とか一部メディアが「同性婚条例」と書きたてた、渋谷区男女平等多様性推進条例では、性的少数者の尊重を盛り込むとともに、区のパートナーシップ証明書を定めた条項で全国の注目を浴びました。条例案は2月に発表され、3月議会に上程。内野・外野とも騒然のうちに3月31日可決、4月1日施行。ただしパートナーシップ証明を定めた10条のみ、施行規則が制定されるまで保留になっています。
このご時世、反対した自民党もさすがに同性愛は異常だ、同性婚は国を壊す、などとアナクロな主張もできず(ハラのなかはいざ知らず)、ただ審議時間が不十分だと言うのがせいぜい。推進側の長谷部区議(当時)らは3年前から同趣旨の区議会質問を重ねており、認知はあったという反論はありえます。ともかく、規則制定の過程で2度は議会に報告することを付帯決議することで、矛を収めざるをえませんでした。

さて、その後どうなったかな~、と思っていたら、5月27日付け「ハフィントンポスト」で長谷部区長の就任会見報道が出て、「発行は10月を目指す」。その後、今回の議連ヒアリングでは11月と述べるに至ったわけです。なににせよはじめてのことなので、少し遅れぎみなのかな?

なお、LGBT議連の動き、そして国会議員や中央官庁へロビーイングを重ねている当事者団体のグループ「LGBT法連合会」の動きについては、こちらでご紹介しました。連合会以外にも、さまざまな課題で同様の取り組みをしている人たちも大勢います。ぜひ、みなさんもそうした動きのあることを心に留め、できれば応援してくださると嬉しいです。

 意外に興ざめかもしれない、行政からの証明文書

さて今号では、現在いろいろ準備も進められているであろう渋谷区のパートナーシップ証明について、「どんな証明になるのかな?」と、勝手に大胆予想してみようという無茶な記事です。
いや、普段の「老後の新聞」はちゃんと取材を重ね、実証的な裏付けもきちんとしたうえで、みなさんに少しでも役立つ記事を、と心がけて執筆していますが、今回はどこかにネタ元があるとか、週刊誌などをほぼ引き写したとかではなく、私の勝手な妄想(?)ですから、真に受けないでくださいね(笑)。

証明を出すと聞いたときから、「これ、どんな証明書になるんだろう……」と思ったのは事実です。法的効力はないのに意味あるのかよ、とか、公正証書作れる金持ちカップルだけ優遇だ、とか、20代の若いカップルに老後の認知症に備える「任意後見契約」作らせるってどうよ、とか、中身的なことはいろいろ批判はありました。それらに対する反批判(?)も、すでにこちらで述べておきました。私は、そういう「批判」を差し引いても、公的機関が同性カップルの存在を認めるのには意義があると思っています。「ないほうがマシ」「撤回してほしい」などとは、口が裂けても言う気はありません。しかし、いざ証明出すとなると、さて、どんな証明になるのか?

役所の証明といえば、なじみぶかいところでは住民票や戸籍謄本、印鑑証明といったところでしょうか。これらは行政に原簿があってそこへ私たちが届け出て登録し、必要に応じてその写しを交付してもらい、その写しを他人に見せて、ハイ、夫婦でしょ、親子でしょ、私の実印でしょ、と証明するわけですね。
パートナーシップ証明もなにかパートナーシップ台帳のようなものが作られ、条例や規則に定めた要件を満たしていれば台帳に登録されるのでしょうか(その点でプライバシー管理にうるさい人から「同性愛者の名簿を作るのか!」と言われればその通りではあります。でも、それ言うと、この制度自体が成り立たないけど。苦笑)。
ちなみに要件は、①相互に任意後見契約を交わし、登記していること。②共同生活の合意契約を公正証書で作っていること、が条例にあります(こちらでも解説しました)。そのほか、たぶん区内に同居していることも当然の要件になるでしょう。あと、任意後見契約は未成年もすることはできます(ただし親権者が代理して契約する)が、わずらわしさを避けるために、双方が成人とするのが無難でしょう。そうして登録された内容が、証明書として交付されるわけです。
たぶんこんな感じ……。

 渋谷区パートナーシップ証明書

 住所 渋谷区ーーーー
氏名A
本籍(または国籍)
生年月日
氏名B
本籍(または国籍)
生年月日

この写しは、渋谷区パートナーシップ台帳の原本と相違ないことを証明する。
平成 年 月 日       渋谷区長        公印

 どうでしょ? これ貰って嬉しい? お役所の証明って殺風景なものです。もうちょと色がつくかもしれませんが(登録の要件になっている公正証書の番号とか任意後見契約の登記番号を記載とか)、「ぜひ欲しい、早く取りに行きたいです!」とハシャグにはちょっと無理があるような……。

 豪華な婚姻届受理証明書は筒つきで1400円なり

ところで、こんなものもあります、ということでのご紹介ですが。
婚姻届受理証明書という、やはり行政が出す証明書があります。婚姻届をしても、夫婦の新戸籍が編成されるには通常2週間ぐらいかかるそう。夫婦である証明を得るためにそれから戸籍謄本を取得していてはちょっと間に合わないということもあります。それで、婚姻届を受理し、法律上、婚姻が成立しました(二人は夫婦です)という証明を出すことがあります。これ、なにも言わなければ、通常こういう証明書がペロっと1枚、交付されます。

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これは私が居住する中野区の戸籍窓口で聞き、写真を撮らせてもらいました。付箋が貼ってあるのは、なぜか区職員は区長の名前などが写真に写ると悪用されると言って、こういうことをしました。意味がわかりませんが。

末尾に、「上記の届出は⚪︎年⚪︎月⚪︎日に受理したことを証明する」とあります。婚姻は、「戸籍法の定めるところによりこれを届け出ることによつて、その効力を生ずる」(民法739条)とあり、届出が受理されたことで婚姻が成立、二人は本当の夫婦です、と、この末尾を見れば法律に明るい人ならわかるわけです。
でも、通常の人は、これを見せられて意味がわかりますか? おまけに届出人欄はいいとして、夫婦の事項を証明する欄が「事件本人」って、たしかに戸籍事件って言うんですけど、なんだかねえ……。
それで、こういう証明書を出すこともできます。

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冒頭の夫/妻のところには、本籍(または国籍)、氏名、生年月日などが記入されます。こちらの付箋も区職員によるもの。すべて架空の名義が入っているだけなのに、なぜ?

いちおう文言を拾っておくと、「右当事者の婚姻届は、証人・・・・及び・・・・連署の上届け出られたところ、本職は審査の上、平成拾七年拾弐月弐拾四日これを受理した。よってここに法律上婚姻は、成立したこととなる。右証明する」。どうでしょ、これなら二人が婚姻した、夫婦だということが一読明瞭ですね。これはなにも中野区だけの先進事例というわけではなく、「婚姻届受理証明」で画像検索すると、いろいろ出てきます。ただ、文言はみな同じで、これは法務省で定めた全国共通のものです(『戸籍実務六法』収載)。

渋谷区のパートナーシップ証明も、もしやるならこれぐらいはずんでいただかないと、見せられた人はちょっとわからないのじゃないかしら? まあ、こういうゴテゴテしい桐と鳳凰の飾り枠がいいかどうかわかりませんが(苦笑)。ちなみに、通常の証明書は350円、特製版は賞状筒もついて1400円だそうです。

 有効期限と法律効果なしの注記?

ただ、ここで留意点はあります。
一つは、このパートナーシップ証明書には「有効期限」がつくかもしれないということ。
結婚なら戸籍が作られ、離婚届や一方の死亡届が出されないかぎり婚姻が継続しているとみなされます。届出は戸籍法上の義務です。証明(戸籍謄本など)もそれと連動しています。
それにたいしてパートナーシップ証明は、その土台になっている任意後見契約で、契約を解除したり(別れた)、終了した(一方が亡くなったなど)ときは、それを登記することは法定されていますが、直接、役所への通知義務はありません。パートナーシップ証明の規則で、任意後見契約が解除や終了したときは区に届け出ることを定めてもいいし、悪用を防ぐなら有効期限⚪︎年などとして、更新ごとに契約が継続していることを確認するのもいいかもしれません。「永遠の愛」を誓いたい人には、有効期限付きの証明は興ざめでしょうが。

もう一つは、提案時から区は、この証明制度は婚姻とは別であり、法的効果はない、とたびたび言っていますが、この証明書にもそうした注記がされるかもしれません。みなさんは同時期、台湾の台北市でも同様の同性パートナーシップ証明制度が始まったのをご存知でしょうか。その証明書の画像が回ってきました。

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台湾で書類入れてくれる封筒、やけにハデ……。

画像がいまいち不鮮明なのと、台湾のこうした公文の書式に不慣れなのですが、当住民事務所は貴殿が×××氏の「同性伴侶」であると登録する、といったことが記載されています。そして、説明3には、「この登録内容にはなんらの法律上の効力はありません(所内註内容不具任何法律効力)」と明記されています。一般の「誤解」を避けるために、こうした説明を加えたのかもしれません。渋谷区はどうするでしょうか。

ということで、最初にも述べましたが、以上はあくまで私の頭のなかでこねくっただけの話ですから、実際どんなものが出てくるのか、区議会への2回の報告もまだなされていないようでは、まったくわかりません。しょせんお役所の証明書ですから、ウェディングケーキのように盛り上げるわけにもいかないでしょう。

これまでも連載で述べたことですが、私たち生活者としては、区証明の行方を見守りつつも、みずからのパートナーシップを安定的なものとし、それを守るためにどういうことができるのか、今回の新制度をご自分のライフプランやパートナーシップを考える契機としていただけたら、と願うしだいです。それは渋谷区であれ、他のエリアであれ、どこに暮らすものにも必要なことですから。

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