第3回 さつきの車窓から

 Comment  コラム   となりのさつきぽん              

 

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私が住んでいる場所は、実は都内から少し離れていて、電車で片道小1時間ほどかかる。しかし都内での仕事がほとんどのため、仕事の度に毎日約2時間ずつ電車の中にいる計算だ。

東京に越してきてからは、性別適合手術の療養のために自宅で過ごすことがほとんどだった。それがいつしか少しずつ都内に出る回数が増え、最近ではほぼ毎日のように外へ出ている。

乗る時間帯もバラバラのため、車内の人間模様も様々だ。夕方頃に乗れば、下校中の学生達で賑わっているし、終電間際に乗れば飲み会帰りのサラリーマンが顔を赤らめているし、休日の昼間なんかは家族連れのベビーカーがよく目立つ。1日2時間も電車の中にいると、本当に色んな事を考える。最近では上京したての頃をよく思い出す。

術後すぐの体調が不安定の状態で、職も無く、家も無く、知り合いもほとんどいない状態で、スーツケース1個だけ担いで東京へやってきたのが2年前の5月13日。

本当に、何も無かった。

性別適合手術手術が終わって、第2の人生がスタートするはずだったのに、私は自分の人生に何の目標も見出せていなかった。体調が悪いせいもあったのか、とにかく毎日が鬱陶しかった。

自分で言うのもなんだけど、男が女になるっていうのは、まぁ並大抵の事じゃない。性別を女性へ変化させる度に色んなものを捨ててきた。本当に、沢山。

望んだ身体を手に入れたけれど、気付いた時には何も残っていなかった。別に自分がいなくなっても困る人はいないんだなと思うと、生きている意味がよく分からなくなった。

そんな状態で、ふらっとスーツケース1個だけで上京したのが2年前。真っ白だったスケジュールも、今ではほぼ毎日何かしらの予定が入っている。お仕事も少しずつだけど頂けるようになった。

特別な事は何もしていないのだけれど、よく感謝するようになった。人にも、物事にも。

もう絶対に手に入らないと諦めかけていた身体が手に入って。それ以外は全部失って。

でも美味しいご飯が食べられて、温かいお布団で寝られて。あぁ、何だ。もうそれだけで充分幸せなんだなぁと気が付いてから、ただただ生きている事に感謝するようになった。まぁそんな話を私も、普段はあまりしないのでこういった場所でたまにお話させてもらってる。

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電車の中を眺めていると、色んな人がいる。

英語が赤点だと友人に相談している女子高生も、モンストを必死にクリアしていってるサラリーマンも、そろそろ美容院に行こうかと話し合っている夫婦も。きっとみんなそれぞれ、見えないだけで様々なものを背負ってる。他人には理解されないような悩みを抱えているかもしれない。それでもみんな笑いながら生きているんだなぁと、よく思う。

そういう気持ちで電車の中を眺めて仕事に向かう。

そうすると、何だか今日も1日頑張れそうな気がするのです。


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 2015/07/31 12:30    Comment  コラム   となりのさつきぽん              
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