第120回 安冨先生の『生きる技法』から親へのカミングアウトについて考える

先日、「男装をやめた東大教授」というキャッチフレーズでテレビにもご出演の安冨歩先生と、東大の研究会でじっくりお話しさせていただきました。安冨先生とは、以前TBSのバラエティ「私の何がイケないの?」でご一緒させていただきました。
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(安冨先生のご著書生きる技法(青灯社)は私のブログでもご紹介させていただいたことがあるので、関心がある方はよろしければこちらのエントリーをお読みください)
今回、人生初の「ホースセラピー」も体験してきました。ホースセラピーはアニマルセラピーの一種。馬と触れあうことによって心理的・身体的に様々な癒しの効果を得ることができるため、近年日本でも注目が高まっています。準備段階で「今度の研究会ではホースセラピーもやります」とうかがったときは、「東大に馬が来るの??」とはてなマークだったのですが、実際に東大の本郷キャンパスに馬が来ました(笑)
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写真:烏賀陽弘道
始めはおっかなびっくりでしたが乗馬体験、とても楽しかったです。すっかり馬に魅了されました! 発見がたくさんありました。
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馬ってとても温かいんです。そして「みっちりした」不思議な手触りでした。年齢や障害の有無に関わらずセラピーができるのだとか。牧場にも行ってみたいです。

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赤門前で。

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写真:烏賀陽弘道

さて、ホースセラピー体験のあと、安冨先生、ホースセラピーのよりたかつひこさん、ジャーナリストの烏賀陽(うがや)弘道さんとお話しさせていただきました。

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よりたさん。

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写真:烏賀陽弘道

今回のホースセラピーは、私が虐待のトラウマを抱えて、乗り越えてきた経験を持つことをご存知の安冨先生からのご提案でした。私が安冨先生をここでご紹介させていただくのは、今を生きるLGBTの人たちにも、とても必要な言葉をたくさん発信してくださっているからです。私は先生の「ハラスメント研究」が大好きです。
例えば「親へのカミングアウトにまつわる問題」。
私は親にカミングアウトするときには「本を送る」とか「手紙を書く」とか、「時間をかけて話し合う」とか、これまでそういった方法をおすすめしてきました。「タイミングを見計らう」とか、「LGBTの家族と友人をつなぐ会」をご紹介することもあります。
もちろん、それらの方法でうまくいく場合もあるとは思います。しかしたくさんの「親へのカミングアウト問題」に悩むLGBTの方と接するうちに、違う問題が浮かび上がってきました。
それは、「コミュニケーションがもともとハラスメント的である場合がある」ということです。
私は以前から不思議に思っていました。
「子どもがLGBTであることを受け入れられる親と、そうでない親の違いはなにか?」
時代背景? 教育? 情報の有無? 地域性?
そういった要素が関係している場合もあります。しかし、「戦時中でポジティブな情報が全くなく、それどころか同性愛が違法である国であってもゲイの息子を受け入れる親」もいれば、「2015年の東京であっても受け入れられない親」もいます。それを考えると、上記の要素はカミングアウトの結果に影響はしても、決定的なものではないようなのです。
ハラスメントコミュニケーションがどのようなものであるかは、ぜひ安冨先生のご著書をじっくりお読みいただきたいのですが、私が「本を送れ」だの「親に手紙を書きなさい」だの「時間がかかるものだ」などと言ってしまうと、あたかも「カミングアウトする当事者に責任がある」かのようになってしまいますよね…。
LGBTであることは絶対に悪いことではありません。当たり前ですね。カミングアウトしたときに「知らなくてびっくりする」ことはあると思います。しかしその後のことは、残念ながら当事者が責任をとれることではないのだと思うのです。
時間をかけて話をすることも、手紙を書くことも、本を送ることもいいと思います。やってみたければ。
でも、「泥仕合から降りる」「逃げる」という選択肢もあります。ハラスメント的なコミュニケーションを避けることは、決して悪いことではありません。それが実の親であったとしてもです。(実の親だからこそハラスメントから逃れるのが難しいわけなのですが…。)
自己嫌悪を乗り越える道に踏み出すことがかくも恐ろしいのは、自分の信頼する人が自分を利用する人に過ぎなかった、ということに直面するのが怖いからです。その勇気が、生きるためには必ず必要です。
(安富歩『生きる技法』160-161ページより引用)
私はこの文章を読んだときに、親へのカミングアウト問題が多くの人にとって辛いのは、「自分の信頼する人(親)が、自分を利用する人に過ぎなかったという事実に直面するのが辛い」からだと思い当たりました。そして今では、「私のあり方が悪いのではなく、親に人を愛する力がなかった(たまたま人を愛する力のない親の元に生まれ落ちてしまった)のだ」と理解しています。
親へのカミングアウトに悩む当事者の方と毎日のようにお話しするのに、これまでこのことを伝えるのを避けてきたように感じました。それで本当に思っていることを書くことにしました。これからもこのことは伝えていきたいと思っています。
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最新刊・安冨歩ありのままの私(ぴあ)が発売になったばかりです。こちらも読みやすいのに深いエッセイでおすすめ。
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安冨歩『生きる技法』(青灯社)
※お伝えしていた予定を変更して、「【子どもを迎える方法について考える】Part 3 代理母出産」は来週の更新とさせていただきます。お楽しみにお待ちください。

 

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