Vol.9 世界の女装雑記

女装コーディネーターという仕事柄たくさんの人と関わらせていただきましたが、年々目まぐるしく状況が変わっていきますね。国内での動きの速さや、新しくデビューする人の初心者レベルではないクオリティの高さには目をみはるばかりです。さて、国内での動きはいろいろあるのですが、そういえば海外ってどうなんだろう? って気になりませんか。

そこで、今回は私が足を運んだことのある国の中から、特色のある場所についての女装趣味事情をご紹介します。ここではあえてネット界隈ではなく、実社会での様子を書いてみましたがあくまで私見ですので、海外経験豊富な読者の方はぜひいろいろ情報をいただければと思います!


■中国・香港・台湾
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それぞれ異なる風土を持ちますが、女装については、中国語で「男の娘(意味はVol.1記事参照)」を意味する「偽娘」という単語があり、認識は進んでいます。日本の二次元文化への憧れもあって、コスプレの延長として女装が受け入れられていて、アニメマンガフェスティバル等では女装コスプレが回を追うごとに増えています。

これらの地域のいずれも保守的な社会で性転換ができませんが女装できるメイドカフェができたり、小さいながらも女装サロンがあったりと充実していきています。街中で普通に外出している女装子を見かけるようになりました。台北に百数十件もある変身写真館では、主に日本人観光客用ではありますが女装用コースを設けるところも多くあります。

それでも、コスプレの延長線上という雰囲気が強く、いわゆる普通の女装趣味は理解を得るのは難しいようです。

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ただ、2013年に出版された女装男子写真集「ゆりだんし」の台湾販売やそれに伴うファンの会、女装写真の個展開催などができたことから、女装文化への興味関心は高いと感じました。

■韓国
比較的マッチョな価値観なのか、街中で女装した人や女装サービスの情報を見ることはありません。日本はニューハーフにやさしいから、と何人も連れ立って日本に来た(そして働いたあとのあれこれ)という話がニュースになっていましたが、異性装者にとって厳しい環境なのは想像に難くありません。

■タイ
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言わずと知れたレディボーイ(ニューハーフ)大国。その美意識は非常に高く、「きれいすぎる女は皆ニューハーフと思え」と言われているように美女揃い。意外ですが、タイにはファッションやコスプレとして女装する人はあまり目にしません(それとも完全にパスしているのか……)。

多くの人は、ニューハーフという職業として、あるいは女性として日常生活を女装して過ごしている印象です。社会認識も進んでいて、ニューハーフを受け入れる大学があったり、大学がトランスジェンダー向けの制服の着こなしを認めたりとその柔軟さには感心します。ちなみに性転換手術世界一の症例数を誇る一方で、性転換者の戸籍変更は認められていません。

■ドイツ
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女装をして外出している人は夜の街でも見受けられません。女装コミュニティはあるものの、正攻法で調べてもサロンやサークルの情報を探り当てるのは困難です。

歓楽街で働くドイツ人に尋ねてみたところ、女装サロンはマンションの一室で集まる秘密クラブのようなものしかないとのこと。まるで昭和時代の日本のような印象でした。

■オランダ
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性に開放的なことで知られるオランダはかの有名な飾り窓にはニューハーフ専用の並びがあり、世界各国のポルノ・フェティッシュ・カルチャー雑誌も専門店で容易に手に入ります。

ヨーロッパでは数少ない女装サロンも複数存在し、本格的な女装撮影も楽しめます。ヨーロッパの女装全体に言えますが、こちらではドレスやドラァグクイーン風の女装が人気です。女装をした上で何かする、というよりも、華やかな変身体験自体を楽しんでいるようです。

■アメリカ(本土)
ここくらい場所によって可否が分かれるところはないでしょう。下手な場所で女装をしたら、暴行されても文句も言わせて貰えないくらい厳しく、圧力がかかっている分、自由なところはとても解放されています。

とはいえ、もっとも開かれている部類のサンフランシスコでも、女装外出は少し奇妙な目で見られます。殺されはしないけど、自然に受け入れられているわけではない。まだまだ偏見が根強い印象です。

■イギリス
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ひたすら厳格な一方で、とことんはじけたカルチャーの両面性を備えたイギリス。実は女装サービスがすこぶる充実しています。ロンドンでは女装者のためのクラブイベントが定期的に開催され、女装サロンはもちろん、1回のサービス利用が10万を超えながらもヨーロッパ各地から利用者が訪れる高級サロンも存在します。

しかし、社会規範を厳密に守ることが要求され、外出にはファッション性や社会性を備えた上で、日中は外を出歩かないことが暗黙のルールになっています。その基準は日本よりもはるかに高いものだと感じました。現地の女装者さんと会食をさせていただきましたが、みなさん素敵なレディでした!

■フランス
フランス人から私のところにわざわざ問合せのメールが来るくらい、女装関連サービスがありません。そして女装して歩いている人は見かけません。どうしてもやりたい人は、近くの国に行くのでしょうか。

ヨーロッパ全体がそうですが、性癖に近いものは日本ほどおおっぴらになりません。私が現地人に連れて行ってもらった男性向けのお店は、静まり返った住宅街の中にひっそりと看板も出さず、入口にセキュリティとドーベルマンを置いて営業していました(その中は、まるで別世界のように華やかで淫靡なものでしたが!)。

女装関連も同じようにわかる人にだけわかる形で営業しているのかもしれませんが、情報が比較的容易に手に入り、外出を楽しめるなんて、日本がいかに開かれているのかがわかります。

■オーストラリア
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LGBTに寛容なこの国では女装に対してもおおらかなようです。日本と同じような形態の女装サロンがいくつもあり、ヨーロッパとは異なり、女性の日常的な洋服を扱うところが多いです。この点は日本と近いですね。

オーストラリア人の友人から写真を送ってもらいましたが、オフ会などでの外出も楽しんでいる様子。陽気でフレンドリー、細かいことを気にしない国民性もあいまってのびのびとしています。


このように諸外国の情報をまとめていて思うのは、欧州では全体的に年齢層が高め、女装趣味は大人のためのものの一方でアジアでは若い人がどんどん増えている、ということ。

そして、日本の女装に興味を持った外国人からの問い合わせも私の場所に多く届いていて、女装文化の広がりを感じています。

日本発の女装文化がこれからどんな形で発展し、世界に発信していくのか、ちょっと楽しみです!

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