BLの歴史と本質をわかりやすく考察した、話題の『BL進化論』著者・溝口彰子氏2CHOPO独占インタビュー!

 

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みなさん、BL(ボーイズラブ)を論理的に考察した『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』(太田出版)という書籍を知っていますか?

本著は、今や一般的に認知された「BL」という分野を膨大な資料を元に、その歴史から数多くの作品紹介、現在はどのような進化が見られるのか……など、まさに「いま、BLに何がおきているのか」を独自の視点を交えつつ丁寧に考察してあり、多くのBL愛好家から支持を得ています。

今回は著者である溝口彰子さん本人に、ご自身のことはもちろん、BL愛好家の方々から初心者の方までわかりやすく一大エンターテインメントジャンルにまで進化したBLの魅力を語っていただきました。

■溝口彰子さんプロフィール

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                                       撮影:市川勝弘

みぞくち・あきこ
ビジュアル&カルチュラル・スタディーズPhD。BL愛好家。
現在、学習院大学大学院、共立女子大学、多摩美術大学、法政大学、明治学院大学、早稲田大学非常勤務講師。上智大学卒業後、寛斎カンパニーでファッション、スパイラル/ワコールアートセンターでアート分野で活躍、LGBTコミュニティ活動にも従事。米国・ロチェスター大学大学院へ留学。その他、執筆・翻訳活動も積極的に行い、現在に至る。

■構想から10数年の歳月を経て完成した『BL進化論』
ーまず、『BL進化論』を制作するに至った経緯をお教えください。
「出版社に企画を説明し、原稿を初めて見せたのは、2013年の、たしか3月ごろでした。プロジェクトの構想段階から言いますと、1998年の秋にまで遡ります。子供時代は除き、BL研究者として、同時に1人の愛好家としてBLに触れ合うようになったのが17年前になりますね」

ーそれまで、溝口さんはどのような活動をされていたんですか?
「長い期間の話なので、要約してお伝えすると『「レズビアン」である、ということ』の著者である掛札悠子さんという、おそらく日本で初めて顔と名前をオープンにした方がいらっしゃって、掛札さんが1992年にレズビアン、バイセクシャル向けの『ラブリス』というミニコミ誌をはじめたんです。当時、私はペンネームでしたが、その雑誌に参加するようになりました。執筆活動はそこからですね」

「また、その時の本業としては、スパイラル(青山にあるアートの複合施設)の企画広報をしていたんです。そこでアーティストグループ『ダムタイプ』の1992〜1996年に展開された『S/N』というパフォーマンス作品に関わった際、グループの中心メンバーである故・古橋悌二さんがHIV陽性であることやゲイであることを公表されたんです。それがすべてではありませんが、そういったオープンにされている方々と仕事をしていく中で、自分がレズビアンであるいうことを徐々に職場でも言うようになりましたね。その後、様々な媒体でも執筆していくようになりました」

ーBL作品を本格的に考察していくようになった1998年頃も執筆活動をされていたんですか?
「米国のロチェスター大学の大学院に留学していました。そもそも、スパイラルで働いていた時に、先ほどお話した古橋さんがきっかけを作ってくださり、留学先の指導教官となるダグラス・クリンプと1994年に出会っていました。留学して、ビジュアル&カルチュラル・スタディーズやクィア理論を学ぶなかで、ふと幼い頃に楽しんでいた『美少年マンガ』が自分のルーツだと感じたんです。当時は既にボーイズラブという言葉も使われていましたね。それから表紙で気に入った作品だったり、日本にいるBL愛好家の友人に教えてもらったりしました」

■進化したBL作品はセクシャリティ問わず楽しめる
ー研究当初と比べ市場は大きくなっていますが、現在のBL市場全体をどのようにとらえていますか?
「BL作品があるということは広く認知されるようになりましたが、多品種少ロット化が進んでいるような気がします。私が『進化形』と言ってる作品が生まれるためにも裾野が広がる必要があるので、興味はあるけどまだ触れていないという人は、今回執筆した『BL進化論』を読んでいただけると嬉しいですし、ガイドサイトや書評サイトのようなものもありますし、1、2冊読んで当たらなくても、多種多様なサブジャンルの作品がありますので、自分のお気に入りの作品は絶対あると思います。ぜひ古本ではなく、新品で購入していただきたいですね」

ーいわゆる「ゲイマンガ」と「BL」の違いは明確にあるのでしょうか。
「本書の第三章や対談でも触れていますが、90年代に入ってボーイズラブ雑誌やレーベルが目立ってきた時期に、ある程度読んだことがあるゲイの人は多いと思います。しかし、どっぷりとハマった人は多くはなかった印象です。とあるゲイの友人は、ここ7、8年離れていたけど『その間にこんなに進化していたんだ!』と言ってまたBLに興味を持ってくれました」

ー2CHOPOの若い読者の方の中には自分の性について悩んでいる方もいらっしゃいます。溝口さん自身も本著で語られているようにBL作品が、その悩みを和らげるものになりえるのでしょうか。
「なりえると思います。私が幼い頃に読んでいた美少年マンガでは、結末は同性愛カップルにはならなかったんですが、友情と恋愛のはざまで葛藤するプロセスが描かれているだけで助けになりましたし、今では同性愛カップル作品も多いので、性で悩んでいる若い方にもぜひBLを読んでもらえるといいなと感じます」

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本著のカバーを外すと、溝口さんも大好きと公言している中村明日美子先生がカバーイラストで描いた男性カップルの「30年後」の姿が描かれています!! 既に購入された方も知っていましたか?こういう遊び心って素敵ですよね!

■多くのBL愛好家から好意的な意見や賛同をいただいた作品
ー発売されてから、およそ2カ月が経ちどのような反響がありましたか?
「最初は、『そんなこと知ってるよ!』という意見も出るかなと思ったのですが、BLというジャンルの歴史、作品解説など、ここまで評論した作品はなかったようで、BL愛好家の友人であったり帯にコメントをいただいた小説家の三浦しをんさんだったり、書評だったりと好意的なコメントをいただけて嬉しい限りです」

ー本著は2015年4月までに発表された商業作品をまとめられていますが、それ以降発表された作品でお気に入りはありますか?
「お気に入りはたくさんあるんですが、進化形作品として、すごいイマジネーションが詰まった『パパ’sアサシン。』(SHOOWA)と義理の兄弟を描いた『起きて最初にすることは』(志村貴子)をおすすめしたいですね。両作品とも気に入る方は多いと思います」

ー溝口さんはレズビアンであることをオープンにされていますが、現在のLGBT関連のニュースが大手メディアなどで取り上げられることにどう思われていますか?
「とても良いことだと感じています。当事者の方々だけではなく、政治家の方々だったりより多くの人たちがLGBTに関心を持っていただけると嬉しいですね。ひと昔前はオープンにしている人も少なかったですが、今では、タレントさんも含めて様々な職業の方で、オープンにして活動している人が増えてきたので嬉しく思います」

ー最後に2CHOPO読者の方に向けて『BL進化論』の魅力を教えてください。
「BLという言葉は近年浸透し、一般的には異性愛者の女性が楽しむものと理解されがちです。確かにそういう面はありますが、BLの祖先から数えれば50年以上の歴史があり、現在では、現実よりもホモフォビアやミソジニーを乗り越えたキャラクターや世界を提示して、恋愛だけではなく、職業ものだったりファンタジーであたっりアドベンチャーであったりと色々な作品がありますよ、ということを含めて、BL作品に救われたレズビアンという立場から愛を持って、理論的に論じている本なのでBLに興味がある人は、ぜひ手に取っていただきたいですね」

■まとめ
BL作品は決して腐女子だけのものではないということがわかっていただけたと思います。本著は、BLジャンルの成り立ちから「やおい論争」、進化形と定義する現在の作品群、サブジャンルの多様性などあらゆる角度からBLについて考察しています。愛好家はより深く、初心者はよりとっつきやすくなるはずなので、『BL進化論』を読んでBL作品を楽しんでほしいと思います!

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溝口彰子 著『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』(太田出版)

 

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