第45号 同性パートナーシップの中身を作るって?

 

 ●認めてもらうことと、自分で作りあげる法的保証と

前号では、世田谷で始まりそうな宣誓方式による同性カップル公認制度について、解説的な記事を書きました。末尾で私は、

  • 婚姻やパートナーシップは、区(行政)から認められるという社会的承認の側面も大事ですが、同時に、契約や合意書を作成し、二人でパートナーシップの中身や法的保証を自前で形成していくという面も、おなじぐらい大事
  • 同性の婚姻制度のないなかで、二人のライフプランや法的保証をリアルにどう形成していくのか真剣に考えよう。それはウェディングよりもっと大事なことであり、これはどこの区にいても、同性カップルなら考えていくべきこと
と書きました。同性婚をめぐるさまざまな場所で、「なぜ私たちの関係が認められないのか」「なにかあったときに引き裂かれるのではと、不安でたまらない」という声が聞かれます。だからこそ行政による同性パートナーの承認を求める声には、おなじ仲間として、胸の痛くなる思いがします。
と同時に私は、認めてほしい、わかってほしい、と言うだけでなく、いまの法律や制度のなかでもできることをやり、自分で自分たちの暮らしを守ろう、と呼びかけてきました。私たちは、いつまでも救済が必要な、福祉番組のなかの「かわいそうな」人たちではない、自分で自分の暮らしや権利を作り出す誇りある人間なんだ、と。

ポイントは自己決定であり、その書面による外部への表示です。法的な権利や関係は、お上から与えられたり認めてもらったりするものではなく、二人の合意によって形成することができるのだという思想です。
また、ポイントその2は、同性パートナーシップの中身を場面ごとに分析(切り分け)し、その現状とそのなかで私たちができることを冷静に考えていく、ライフプランの視点をもつことです。

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今回は、私の事務所やパープル・ハンズのLP研(ライフプランニング研究会)で、同性パートナーシップ保証としてよくお話することの要点をご紹介してみましょう。

 ●現状を知り、場面ごとの対策を考える

同性婚を求めるなかで、同性カップルも男女の夫婦とおなじことができるようにしてほしい、という訴えを目にします。男女の夫婦とおなじ、とはどういうことを指すのでしょう。もう少し場面ごとに切り分け(分析)て、考えてみます。
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 社会的な認知    

 海外の話としては耳にしていても、日々の職場に、地域に、家族のなかに、同性のパートナーシップを求めている、あるいは現に営んでいる人がいるという認知は、まだまだないかもしれません。同時に、そうした認知は本人たちがカミングアウトすることでしか得られません。同性ウェディングを挙げたり、公的証明への期待が高まっているのは、当事者たちもカミングアウトのリスクをとっても自分たちの認知を求めようという気運が高まっているからなのかもしれません。

 ふうふ間の権利・義務  
民法には、夫婦は「同居・協力・扶助」の義務が定められ、また貞操の義務も判例法理上、確立しています(だから、不倫等による離婚のさいは慰謝料などを請求できる)。同性カップルは、その適用外と言わざるをえません。同性パートナーシップ契約書などで、二人の共同生活における合意事項をまとめておくとともに、どういうことがパートナーシップ解消事由となるのかを明確にしておくことも大事でしょう。

 病院等での面会、看護
家族と認められない同性パートナーが、医療の現場から個人情報保護を理由に排除される現実があります。あらかじめ、おたがいに医療の意思表示書を交換しあい、意識不明時の面会や医療説明を許可しあっておきましょう。なお、「家族(親族)」も法律上は第三者であり、本人の許諾がないと家族も面会などできないのが原則なのですが、現場では「家族主義」が当たり前とされているのは遺憾です。

 銀行や契約などの対応
相手名義の預貯金の処分や契約を、勝手に行なうことはできません。重病時や認知症で判断能力が失われたときに備えて、財産管理委任契約や任意後見契約を結んでおくと安心です。男女夫婦でも、こうした契約や委任状がないと、相手の財産管理の代理をすることはできません。

 賃貸住宅の契約
同性二人の住宅賃貸は拒否されることが多いといいます。とはいえ、最近は理解ある不動産屋も増えたといわれます(パープル・ハンズでも信頼できる不動産屋さんをご紹介できます)。また、UR(旧住宅公団)のハウスシェアは同性カップルにはおすすめです。

 共同ローン、不動産の共有
一方、住宅購入については、夫婦ローンなどの利用は不可です。ただ、不動産の購入・所有には、今後の大災害による損壊や経済変化によるローン返済困難のリスクも考えて、いろいろな考え方があってよいでしょう。

 生命保険の受取人指定  
ほとんどの保険会社が、受取人は2親等以内に限っており、パートナーを受取人に指定することはほぼ不可です。ただ、パートナーにも定職や貯蓄があるなら、あえて保険でお金を渡す必要はないかもしれません。なお、郵便局で申し込むかんぽ生命はパートナーを受取人に指定することが可能です。保険についても、多様な視点が大切です。

 相続、死後の片付け等 
同性パートナーに法定相続はありません。しかし、遺言死後事務委任契約で、財産の継承や片付けを任せることができます。二人でお金を出し合ってマンションなどを買うときは、公正証書遺言の作成は購入経費の一部だと考えるべきでしょう。

 税制、社会保険の扶養
同性パートナーに税金の配偶者控除や社会保険の被扶養扱いはありません。これは専業主婦(夫)への保護策であり、男女の共働き夫婦にも関係ないことです。双方が職業と収入をもち、経済的に依存・扶養されることなく、たがいに独立することが、対等なパートナーシップの一歩と考えます。障害・疾病や予期せぬ失業による経済的困難は、「家族」責任に帰せられるのではなく公的援護が行なわれるべきでしょう。

 ●3つの書面で同性カップルの人生はつながる

以上の場面別対応で、いくつか書面の名前が出てきました。こうした書面を人生の流れに応じて配置したのがつぎの図です。
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ずいぶんたくさんの書面があるように見えますが、①内容がほとんどおなじである財産管理委任契約と任意後見契約は、移行型として一緒に作り(恒常的に判断能力が失わる段階になったら任意後見に切り替える)、②医療意思表示書のなかに尊厳死宣言(終末期の意思)も入れておき、③死後事務委任は片付けをするかわりに財産をあげるという負担付き遺贈のかたちで遺言にまとめれば、3本の書面で二人のパートナーシップを夫婦と同様のものに近づけることができます。
同性婚のない日本ですが、意外にできることは多いのです。

書面のなかには、自筆証書遺言をはじめ自作できるものもありますし、市販の「エンディングノート」「もしもノート」などに情報を整理しておくことでも、さまざまな効果が得られる場合もあります。
しかし、効力のより強い公正証書を作成するとなれば、安心ですがお金がかかりますし、法律に不慣れな身では法律の専門家に依頼する必要もあるでしょう。同性間でも婚姻ができれば、これらが届け出一枚ですべて無料で行なえると思えば、理不尽な思いも禁じえません(財産管理の代理等は、夫婦間でも自由に行なうことはできませんが)。性別にかかわらない、同性婚またはそれに類する制度の立法が、求められるゆえんでしょう。

しかし同時に、それが一朝一夕にはかなわない現実をまえに、いま守るべきものとかけられる費用、得られる効果を冷静に見つめ、お上に認めてもらうことを願うだけでなく、主体的に二人のパートナーシップを形成していく知恵と勇気ももってほしいーーそれが、「老後とパートナーシップの確かな情報センター」を掲げるパープル・ハンズ、そして私の事務所のミッションであり願いです。

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