第26回 イケメンと自分が釣り合わないと決めつける前に

 

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ゲイ雑誌の表紙からそのまま出てきたようなイケメンから声かけられて、頭の中が真っ白になってカチカチになった。フォトショップでいじったような腹筋、吸い込まれそうなセクシーな瞳、そして、漆黒に輝く髪の毛。あんまり魅力的で少しフラフラしてしまった。これは新手の詐欺ではないかと半信半疑になりながら、必死に返事をした。

「アプローチする人間違ってない?」

つい本音が飛び出してしまった。別に自分がブサイクと言いたいわけではない。これでもそれなりにモテるつもりだ。しかし、こんな釣り合わないイケメンが自分を相手にしないと知らないほどウブではない。彼が大作映画の主役なら、自分は低予算テレビドラマの脇役がやっとだろう。彼が世界を救っている横で、自分は開始15分で殺される運命だ。ルックス至上主義は残酷だ。

そんなネガティブな態度丸出しだったせいか、すっかり愛想を尽かされてしまった。夢のイケメンは不満そうに立ち去った。せっかくのステキな出会いのチャンスをみすみす逃してしまった。そして、なぜかちょっとホッとした。

どうして見た目だけで、自分と相手の価値を判断したのだろうか。冷静になってみたら、急に自分の行動が恥ずかしくなった。外見以外の良さはないがしろにする文化に流されて、すっかり自信を失って、自分自身の良さも忘れてしまったようだ。

道行くカップルを見かけて「なんであんなブサイクがあのイケメンと付き合ってるんだろう?」とふと思ったときに覚えるのと同じ罪悪感で胸の中がいっぱいになった。目に見える良さだけにとらわれて、他のものは目にも入らなかった。相手にあるものと自分にないものを比べて、心に重い劣等感がのしかかった。

そうやって逃したステキな出会いはどれほどあったのだろうか。もしかしたら、もっと素直に対応していれば、今頃はあのイケメンと結ばれていたのかもしれない。

「あんた、夢見てるんじゃないよ! 世の中、そんなに甘くないわよ!」

そんな妄想はあっという間に粉々に砕かれた。説教好きの友人は容赦なく現実へと引き戻してくれた。見た目ばかりが重要視される社会でサバイバルするのは簡単ではない。「みんなちがって、みんないい」だなんて口先だけだ。そんなポジティブなメッセージが流れる横で、ルックスが完璧な人ばかりが表舞台に立つ。世間のイケメンや美人に当てはまらない人にスポットライトは当たらない。

ゲイコミュニティでイケてるとされるイメージとはかけ離れた友人は、「もっと自信持って、ポジティブな態度でいればモテるよ」というアドバイスをよくもらうという。しかし、そんな言葉たちは逆に彼を追い詰める。まるでモテない原因が彼にあるように聞こえるからだ。「社会が多様な見た目に価値を見出せない限り、いくら頑張ったっていわゆるイケメンと同じ土俵には立てない」という彼の言葉は切実だ。

もしいつかまた超イケメンにアプローチされたときは、もう他人に目が眩んで自分の価値を見失うようなことはしたくない。結ばれなくてもいいから、せめて美味しく食べておこう。

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