第121回【子どもを迎える方法について考える】Part 3 代理母出産

子どもを迎える方法について考えるシリーズ最終回のテーマは、「代理母出産」です。
レズビアンカップルには、どちらかが産む、または両方が産むという選択肢があるため、日本でも「子どもを持つこと」について、自分のこととして考えやすい傾向があります。しかし、現在の法律では同性カップルは特別養子縁組ができないので、レズビアンカップルのように自分で産むという選択肢がないゲイカップルが子どもを持つには、さらに高いハードルがあると言わざるを得ません。
そんな中でも、日本にも子どもを育てているゲイカップルがすでにいらっしゃいます。「OUT IN JAPAN」プロジェクト第一弾の中で、唯一のゲイファミリーの写真がこちらです。まだ見たことがなかったという人にはぜひ見ていただきたい、笑顔の写真とカミングアウトにまつわるメッセージ(英語)です。
アメリカの一部の地域やヨーロッパでは、子育てをするゲイカップルが増えてきているようです。ゲイカップルが子どもを迎える選択肢の一つに、今回取り上げる代理母出産があります。
まずは代理母出産に関する基本的な知識から見ていきましょう。
代理母出産には、大きく分けて2つの種類があります。
ひとつは、代理母の卵子を使う、人工授精型
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もうひとつは、妻の卵子または卵子提供者(エッグドナー)の卵子と精子を体外受精させて、受精卵を代理母の子宮に移植する、体外受精型
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医療技術が発達する以前(1980年代半ば頃まで)は人工授精型で行われていた代理母出産ですが、現在はほとんどの場合、体外受精型で行われているようです。
現在の日本には、代理母出産に関する法律はありません。日本産科婦人科学会の会告(ガイドライン)によって、自主規制されています。これにより、一部の例外を除いて原則的に日本では代理母出産はできません。
「原則的に現在の日本では代理母出産はできない」というのは、男女の夫婦もゲイカップルも同じ状況です。男女のご夫婦では、2003年にアメリカのネバダ州で代理母出産により双子の赤ちゃんを授かったタレントの向井亜紀さんがとても有名ですね。こちらの手記はとてもおすすめ。
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向井さんは、ご自身の卵子を採卵して旦那さんの精子と体外受精しました。この受精卵を代理母の子宮に移植して、赤ちゃんが生まれてきました。日本の民法では「産んだ人が母親」(分娩主義)となるために、代理母出産への挑戦を公表していた向井さんは、代理母が産んだ向井さんのお子さんを実子として登録することができませんでした。

私は、日本から海外に渡って、代理母出産でお子さんを持たれたゲイカップルをまだ知りません。

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上の図にあるように、日本に暮らすゲイカップルが海外へ渡り、エッグドナーの卵子と、自分の精子で体外受精をして、その受精卵を代理母の子宮に移植して子どもが生まれてきた場合、以下の大きな課題があると思います。
1. 子の出生の手続きと、帰国するためのパスポートなどの手配
2. 帰国後、戸籍などへの登録がどうなるのか
アメリカのカリフォルニア州は、生殖補助医療に関してとても先進的な地域だと聞きます。アメリカ人のゲイカップルが、エッグドナーと代理母と契約して得た子どもは、法的にもゲイカップルの実子になるそうです。これが日本からのゲイカップルの場合はどうなるのでしょうか?
まずは代理母を実母として、国際養子縁組をするのでしょうか……? でも日本には国際養子縁組の枠組みはなく、基本的にはできないはずだし……。
渡航費や医療費、エッグドナー、代理母への謝礼等を考えると、経済的に非常に高いハードルがありますが、今後は高級車1台をあきらめてでも子どもがほしいと願うゲイカップルが現れても、全く不思議ではないと思います。技術的には、日本のゲイカップルが子どもを持つことも可能ですが、法的なハードルをどうクリアしていくのか、ここにはまだ多くの課題がありそうです。
また、代理母出産や卵子提供に関しては、センセーショナルな事件が報道されたり、人身売買に近いとの批判も多くあります。
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向井さんのご著書に書かれている代理母出産の経験と、このルポルタージュに書かれている内容には、非常に乖離がありました。また、私がニューヨークで出会った、代理母出産でお子さんを授かったゲイファザーから直接うかがったお話も、このルポに書かれているようなこととは、全く違った印象を受けたのです。
私は代理母出産の当事者ではないので、この乖離をとても疑問に思いました。日本国内に、日本語で読める代理母出産に関する文献や情報、そして報道がまだまだ少ないのではないかと感じています。
今回は代理母出産の医療技術や報道、法律面について考えてきました。
最後に、こちらの記事(英語)をご紹介したいと思います。
代理母出産でお子さんを授かったゲイの漫画家が、子どもに「どうやって生まれてきたか」を伝えるために漫画を描いているという記事です。とても素敵なストーリーですので、英語が読める方はぜひご一読ください。
第三者が関わる生殖補助医療には賛否があります。日本では議論も法整備も遅れていると言わざるを得ません。私は、全ての人が子どもを持つことがいいと思っているわけでは決してありません。しかし、子どもを持ちたいと願う全ての人には、選択肢と十分な情報があって、セクシュアリティに関わらず子どもを持つことについて選択できたらいいと思っています。
その選択肢の中には、特別養子縁組があってほしい。生殖補助医療の利用もできてほしい。選択肢は多い方がいいと思うのです。
考えて考えて、望まれて生まれてきた子どもに、「あなたはこんなにも望まれて生まれてきた大切な存在」「生まれてきてくれてありがとう」という気持ちで子育てをすることが大切なのではないでしょうか。そこに、「血縁」や「親の性別」や「どのように生まれてきたか」は関係ないと私は思います。
このシリーズは今回でラストですが、今後もLGBTを含めた新しい家族のかたちについて、積極的にお伝えしていきます。ご期待ください。
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LGBTファミリーがテーマの、心からおすすめの写真集
《その他参考文献》
・大野和基『代理出産 生殖ビジネスと命の尊厳』(集英社新書)
・小林亜津子『生殖医療はヒトを幸せにするのか 生命倫理から考える』(光文社新書)

 

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