第47号 “結納プラン”で両親の顔合わせ~私たちのカミングアウト大作戦「90年代世代の同窓会」⑫

 

  先月のインタビュー「レズビアンの未来はレズビアンが切り開く」。世田谷区に事務所を置くレインボーコミュニティcoLLabo代表・鳩貝啓美さん(49)が語る、女性たちの長年にわたる地に足をつけた活動の姿勢が共感を呼んだのか、多くのかたに読んでいただきました。自分たちの場・コミュニティを作り、自分の足でしっかり立とう、という活動をコツコツと続ける女性たちの姿には、私も強い共感を覚えます。
いま、新しい世代による「LGBTへの、社会の意識を変える」ための鮮やかなキャンペーン活動がつぎつぎ展開されていますが、私自身は、やはり昔ながら(?)の、当事者による当事者エンパワーメントな、手作り市民運動スタイルに、おなじ90年代の時代の子として点が甘くなっちゃうのかしら??

さて、鳩貝さんのインタビューではパートナーの河智志乃さん(43)も同席し、そこここで補ってくれたのですが、ときに河智さんご自身のお話もうかがう時間がありました。そのなかでも自分の親御さんへのカミングアウト、そしてホテルの「結納プラン」なるメニューを使って両親どうしの顔合わせを実現した話が、私はとても興味深かった。
きょうは先月のインタビューの記憶が薄れないうちに、インタビュー楽屋話として河智さんのお話を、みなさんにもお伝えしたいと思います。

 ●あ、父がやっと「レズビアン」って口に出して言った!

河智志乃さんの話ーー
「パートナーの鳩貝と出会った10年前ぐらいには、彼女はもう両親にカミングアウト済みで、関係も安定していました。恋人の親御さんにご挨拶にうかがい、「この人のこと、よろしくお願いします」と返されるのが、そもそも私にとって初めてで、衝撃的だったんですね。私は親にカミングアウトしてないし、レズビアンコミュニティにも出たばかり。自分がレズビアンであることは、墓場まで言うものかと思っていただけに、こういう関係が作れるんだ、というのがちょっとショックだった」
「そのあと、彼女の弟さんの結婚式で、私も一緒に親族席に出ることになって、レズビアンとしてこういうライフがあるというのもすごく新鮮で」

こうした経験もあって、河智さんも両親へのカミングアウトを少しずつ考え始めたそうです。

「もちろん、カミングアウトの成否はいろんな要因に左右されると思います。親の性格にもより、言ったらパチンと弾き返す人なのか。父母の関係も、どっちがイニシアチブをとっているのか。よく、母親側に話すと「お父さんには伏せておきましょう」となることが多いと聞いたので、私は、だったら両親二人を並べて一緒に話そうと。話す内容は、A4用紙に7枚の原稿作って、必要な資料を全部そろえ、3日ぐらいまえから両親に、今度お話があります、と(笑)。向こうは絶対、結婚話だと思ったでしょうね。私はすでに家を出ていて、自分が住まう家もあり、両親との関係にも適度な距離を保てていたので、まずは準備に時間をかけました」

「カミングアウトのときは、黙って最後まで話を聞いてください、と切り出して。正座ですね(笑)。いろいろ話したと思いますが、ただ、過去の話や悩みや苦悩的なものは、ここにまとめてありますのであとで読んでおいてください。私はいまとりあえず幸せですし、お二人と切れるためではなくて、関係を再構築するためにこのお話をしているんです、ということは強調しました」

「一通り話し終わると、父は押し黙ってます。もう頭パンパンで真っ白になって、きょうはもうわかったから、と。私もその日はそこで引き取りました。どのみち同性愛にいいイメージなんかないのはわかっているし、だから絶対弱いところは見せないで、自分が悩んだなんていうことは見せず、親へはポジティブな、いい情報をどんどん入れて、引かれたらこっちもちょっと引いて、様子をみてまたどんどんポジティブな情報を送って、の繰り返し」
「父へは少しずつ本を持って行ったり、無理やり話をしむけたりして、関係を続けました。強いなあ、ですって? いえ、気持ちはドキドキで、明日は実家へ行かなくちゃというときは夜は眠れません」
「ちょうどNHKのEテレで性的マイノリティの番組がよく放送されるようになって、それもすかさずビデオに録って送ったりしたら、父は最初、ドウセイアイって言うのも嫌だったのに、「またレズビアンのビデオか、嫌だなあ……」って。こっちはたとえ否定的な反応でも、「あ、レズビアンって口に出して言った、よし!」って(苦笑)。くじけそうになったら、coLLaboの仲間たちに話して、みんなからアドバイスや励まし、元気をもらって、また父に立ち向かってを繰り返していました」

お母さまのほうはどうだったでしょう。

「母は少し興味もったのか、「パートナーさん、どんな人なの」と。1か月後ぐらいには、彼女に会ってもらったんです」
「最初、母に「レズビアンってどういうものだと思う? どんなことでもいいから言ってみて」って聞いたら、「暗い部屋で髪の長い女の人たちが抱き合っているイメージ」って言ったので、「じゃあ私たちカップルですけど、ポルノチックな感じがします?」。百聞は一見に如かずで、母は私たち二人を見ると、納得して安心してくれたようでした」

「父に、彼女に会ってもらったのは結局1年ぐらいあと、私たちが同居しはじめてからだったかな。その後、彼女も一緒に実家に顔を出してくれて、きょうはどこまで話す、あなたがこれを話して、私がこれを話して、って打ち合わせして。二人の悩みとかネガティブな話は聞かせず、今回はここまで理解してもらおう、ここを目標にしよう、って毎回作戦を決めてました」
「そんななかで、彼女が「私の父もご挨拶にうかがいたいと申しております」と話すと、年下の自分のほうへ挨拶に来てもらうのが社会人としてのマナーに反すると思ったのか、「それは申し訳ない、ご挨拶ならこちらから」って。父のそういう社会人としての大人な反応も、私たちにはありがたかった。「じゃ、親どうし顔をあわせる席を設けますから」って」

ホント、カミングアウト大作戦ですね。それと、相談したり話を聞いたりしてもらえるパートナーや仲間の存在がすごく大事な気がしました。

「やっぱり親に言われたことって、なにを言われてもショックだと思うんですよ。だから、ヨロッとしたときに支えてもらえる場を作っておかないと、くじけちゃう。一、二回ショッキングなことがあったら、そのまま親から遠ざかってしまうのもわかるよね」
「でも、カミングアウトの経験って、他人に繋がっていきますよね。人がうまく親と関係作れている話を聞くと、それは自分のことのように嬉しいし、それがまた自分にもよい影響を与えてくれたり」

c7b2e3c3b9bd690f4784e9cf00297c3f
 河智志乃さん

 ●すまし顔で利用、でも本当は内心ドキドキ

いよいよ、両親どうしの顔合わせへと進むことになりました。

「私たちの親世代って、まだ家と家って感覚が大事みたいで、私たちが生きやすい環境を整えるなかで、異性愛者の結婚のときみたいに親どうしが顔を合わせて、以後、子どもたちをよろしくお願いします、って挨拶を交わしておくことで、私たちも支えられるわけですよね。もちろん親たちも安心する。そのために、双方の親を“近づける戦略”を定めたわけです」
「遺言や公正証書があっても、親・きょうだい・親戚が納得していないと、どこかでひっくり返される可能性もなきにしもあらずじゃないですか。そういう点で、ふだんからおたがいの家へは行き来したり、一年に一度は双方の親も一緒に顔を合わせて食事会をやったり。継続する努力がいりますね」

家族との関係は人それぞれ、一概には言えないでしょうが、鳩貝さんと河智さんは両親たちとの関係を作っていく努力を選択したのでした。

「それで親どうし、きちんと顔合わせの場をつくろうと探していたら、料理だ、部屋だ、で意外に高くつくんですよ。そんなとき近所のホテルに「結納プラン」というのを見つけまして。本人たちと双方の両親が小部屋で会食して、けっこうリーズナブルで、まさにこれじゃん、って(笑)。それを、私たちレズビアンのカップルですが、と、ちゃんとカミングアウトして使わせてもらおうと思ったんです。でも、電話で問い合わせて、レズビアンなんて言ったらそのまま切られるかもしれないと思って(苦笑)、ホテルで突撃取材じゃないけど、窓口で直接行けば、まさかその場で逃げたりはしないだろう、って。フロントで声かけるときの、スマイルの練習からしました(笑)。明日はホテルへ相談に行くってときは、緊張して眠れなくて」

どこまでも前向きな二人です(笑)。

「まずフロントの黒服さんのところへ行って、結納プランについて聞きたい、ついてはこっちは女性のパートナーなんですけど、って練習した笑顔で言ったら、向こうは一瞬顔が引きつったんですが(苦笑)、そこの立て直しは早かったですね、「そうなんですね」って。私たちも、このプランがリーズナブルなので利用したい、ただ新郎新婦ではないので、こういう形にしてもらえると使いやすいのですが、とか希望を伝えると、持ち帰って検討しますとか言わずにその場で受けてくれたのはありがたかったです」
「部屋を見せてもらって、先方はやたら上座・下座を気にしてましたが(結納品の交換上、必要らしいですが)、私たちは対等なパートナーなんでそういうのはナシでお願いとか、ここでスライドを上映できますかとか(お互いにライフヒストリーを紹介しようと)、いろいろ希望を伝えてみました。担当者も、45、6歳の中堅の男性でしたが、よく対応してくれたと思います。2009年、いまみたいにドウセイコンとかあまり聞かない時代ですから」
「後日、電話で最終打ち合わせしたときも、女性の担当者によく引き継いでくれていて、当日も安心して利用できました」

ほんとに素敵で、意義深いひとときになりましたね。

「ホテルの人もたぶん同性カップルに接するなんて初めてだったと思いますが、生身の人間が来て、私たちは困っているのだけど、ぜひおたくを使いたい、と真剣な気持ちが伝わったら、この人たちのために手伝いたいという人間としての気持ちが動いてくれたんでしょうね。当日はお料理の給仕の人や最後に写真とってくれた人も、みんなプロとしてきちんと努めてくれて。私たち、すましてニコニコしながら利用してましたが、本当は内心ドキドキでした(笑)」

「そうやって顔合わせも済んで、あれだけかたくなだった父ですが、いまは私たちが載った日弁連の人権救済申し立ての新聞記事を切り抜き、母がそれを親戚にメールで送るまでに変わりました。母は友人に自分の娘がレズビアンでという話をしたら、そちらもゲイの息子さんがいたらしい。いろいろ親も一緒に成長してくれました」
「私たちのカミングアウトも、親から始めて、きょうだい、親類とだんだん輪を広げて、最後は学校時代の同級生へも。高校時代の級友で結婚式のときにお祝いの家電を贈り合うしきたりだったのですが、みんなが、じゃあお祝いするねって電子レンジを贈ってくれたのが、まさに感無量でした」

CA390880

CA390880

 

Top