第49号 上野・浅草のバーで聞いた「ゲイの老後」

  ●パンフとチラシを、上野・浅草のお店へ
連載第46号でもお知らせしましたが、NPO法人パープル・ハンズでは、郵便貯金でもおなじみの一般財団法人「ゆうちょ財団」さまの助成金をいただいて、上野の会場で、「にじ色あんしん老いじたく」講座という、性的マイノリティの現状に即したライフプランニングの講座を開催しました。

パープル・ハンズはセクマイの老後を考え、つながるNPOを掲げて、すでに6年の活動歴を経ましたが、これまで新宿二丁目のaktaさんを会場に、活動を続けてきました。
だけど、東京でセクマイの「老後」といえば、上野・浅草も大事でしょ〜〜。
ご存知ないかたに解説すると、上野や浅草エリアのゲイバーはシニア層のお客さんが多く、「上野・浅草」はシルバーゲイの代名詞でもあるのです。

でも、これまで東京東部エリアへは、ご挨拶にも行ったことがなかった。
だって、お金がなくて、配るパンフレットやチラシも作れなかったし、東京東部にはaktaみたいに無料で使えるところもないので、イベントや勉強会をすることもできなかったのです。そう、「パープル・ハンズは金がない」「みんな貧乏が悪いんや〜」。

それで助成金などに応募して、少しずつですがなんとか活動を助成してもらえるようになりました。
大和証券福祉財団さまから、新パンフレットの作成費用とバーなどへの配布費用の助成を受けました。
そしてゆうちょ財団さまから、セミナー開催のための会場費、チラシ作成費、講師料などの助成をいただいたわけです。

この8月もひときわ暑い夏でしたが、やっとお店訪問がかないました。やっぱり先輩たち、「ネットで検索してください」って言っても、「ネット? やってねえよ!」「どうやって調べんだよ!」ってなりますよね(汗)。
一軒一軒、足で回ってこそ、認知もしていただき、覚えてもいただけるというもの。上野・浅草でなんと33軒のお店に、パンフレットを設置していただけました。新橋でも4軒のお店にご協力いただいています。上野のビッグジムさん(バラエティショップ)も、パンフやチラシをお客さんに配ってくださいました。

お店訪問では、事前にお送りしたお願い郵便がうまく届いてなく、珍味売りと勘違いされて追い返されそうになったところ、「ゲイの老後ならご協力しましょう」とニッコリ笑って機嫌を直してくださったマスターもいました。居合わせたお客さんが、「あなたのツイッター、まえからフォローしてました。いつかご相談に行きたいと思ってたんです」と言ってくださるお店も!
やがて、「お店でチラシを見た」と講座を申し込んでくださったり、大阪から遊びに行った上野の店でパンフを見た、こういう団体があったとは心強い、とお電話をくださるなど、ちらほら反響が出始めました。

もちろんお店によっては断られたり怒られたり、「今、マスターいませんから」と言われたり(ホントはあなたがマスターでしょ?)、イロイロありますが、それは承知の助。とかく外部に警戒的とも言われるゲイバーで、こんなにご協力がいただけたことに大感謝です。

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こんなボックスを、バーのカウンターの片隅やトイレに設置していただきました。ご協力店は末尾に。ご来店のさいは、みなさまもどうぞよろしくお願いします。

 ●ゲイバーで聞いたゲイの老後の話
一軒あたりの滞在時間は短かかったものの、現場を回るといろんな発見、聞き込みがあるものです。

 エピソード1 
上野・浅草のお客さんは、(時代の制約もあって)既婚者のかたが多いと思っていました。午後3時から盛り上がるカラオケ道場やふんどしスナックは、そんなおとうさんのホッと癒しの場なのでしょう。でも、お店によっては、「一人の人も多いから老後は心配だよ」と。ずっとシングルだった人や離婚でシングルに戻った人など、一人暮らしの高齢期の話題が出るお店もけっこうあるようです。

 エピソード2 
同性カップルのことでは、最近ニュースになった渋谷区や世田谷区での同性カップル証明書の話もけっこう耳にされているようでした。シルバー層はそういう話、関心ないと思ってたら、そうでもないようです。
長くなった相方さんがいるお客さんやマスターもちらほらいて、同性結婚式はどうでもいいけど(笑)、でもこれからの二人のことはやはり心配、と。
お店で名刺を出して、私、ライターと同時に行政書士といって法律的な書面を作る仕事もしていますと言うと、パートナーの証明とか遺言とか大事よね、と答えてくださって、ああ、みんなホントは気にしてるんだ……。

 エピソード3 
事前に郵送したお願い状は見なかったけど、とおっしゃった60代後半とおぼしいマスターは、じつは「ちょっと入院してて、きのうから店開けたばかりなの」とのことでした。
「お客さんからも、自分が病気したときの話や、相方が面会できるのかとか、話に出るね。私が入院してたときも、いかにもゲイの二人連れで、一人が付き添ってきたような人を病院で見かけた」。なんだか目に浮かぶようです。

 エピソード4
あるお店では、「うちのお客さんにも、一人暮らしで認知症になっちゃったかた、いるのよ。それで私が市役所へ相談に行ってあげて、成年後見人? なんかそういうのをいま探してくれてるって」。お〜、やっぱり出ますか、そういう話。
ほかのお店でも、居合わせた若いお客さんが、「常連の80歳のおじいちゃんのことを、店のみんなが心配してます」。お店の常連さんがある種の家族のようになっているお店って、ありますよね。なんとかしてあげたいのだけど、認知症とかからむと、客同士のレベルでは、これからどうしていいかわからない……。
日常のことはまだできても、お金の管理、それから介護や病院の手配など、複雑なことが自分でできなくなって、親族がいないとか遠いとかのとき、後見人がつく仕組みがあります。後見人がノンケの人でも、もちろん責任もってやってくれると思いますが、パープル・ハンズはまさにそういうときの見守り団体になりたいと思っています。私(行政書士)以外にも司法書士のメンバーや税理士のメンバーなど、それぞれの専門家もいます。介護業界HIV業界へ研修などを行なっていることも、連載で紹介してきました(リンク記事をご参照)。こうして少しずつみなさんの信頼を得られたらと思っています。

とまあ、少し歩いただけでも、ゲイ/セクマイの老後をこれからみんなで本腰入れて考えたいなぁ、と思わせてくれた経験でした。
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パープル・ハンズが、見守り契約を引き受けられるよう、これからも頑張っていきます!

 ●次回は、発病したとき、認知症のとき
このセミナーは3回シリーズで、第2回は「介護、病気、認知症」をテーマに開講予定。すでに1回目から、質問コーナーでは、相方が入院したらとか、自分が認知症になったら、といった質問が出ていました。次回もセクマイの事情を踏まえて、それらについて「みっちり」お話しする予定です。
セクマイの事情とは、シングルだったり、家族と認知されづらい同性パートナーがいたり、親族と関係が悪かったり、HIV陽性だったり、書類と見た目の性別が違っていたり……などなどです。
一般的な家族仕様で設計されている社会の制度を、いかに私たち向きにアレンジして活用するのか、パープル・ハンズの腕の見せ所。おひとりさまにも、お二人さまにも、対応しています。9月末から正式募集をいたしますので、しばらくお待ちください。

ちなみに、日時は、10月24日(土曜)、午後1時半〜3時半、上野駅そばの会場(申込者へご案内)です。

末尾ながら、あらためてご協力くださったお店のみなさまに御礼申し上げます。

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第2回は、9月の末から参加者募集いたします。

ご協力店(8月20日現在、敬称・スナック略、順不同)
【上野
西郷どん、eddy’s、ちゃお、あらん、きゃんちゃん、梅川、上州男、上野はやし、50、柔、唐変木、アルゴン、待夢、みつる、ドマーニ、桂、やしの実、月光、さつま、丸丹、BIG GYM(上野店、池袋店)
浅草JAD bar、なべちゃんち、あぐぅ、しもん、BBC、オグリン、ナビゲイト、むらまさ、ぽこ3、まめだぬき、UZUMAKI、千和、浅草・鑑
新橋AJITO、ZAP、SAKURA、Aka-chan

 

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