第32回 心ごと生きてゆきたくて 楽園のDoorから…ひとり?

EDEN…楽園…。

名古屋駅から某セクシーサウナに向かう途中に寄ったのを思い出します。(それは、東海地方を営業基盤とする日本の家電量販店チェーンEIDEN)

11月12日、新宿2丁目のアイソトープラウンジで、映画『EDEN』の新宿2丁目特別試写会が開かれました。

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映画『EDEN』公式サイト

山本太郎がゲイで主演!故・原田芳雄さん企画の映画『EDEN』は11月17日公開!(シネマトゥデイ)

概要やストーリーは上記リンクからよろしこ!(手抜きじゃないの効率なの)

思うに「ゲイ映画」ってやつは、圧倒的に欧米寄りの文化です。
『ブロークバックマウンテン』をはじめ、アカデミー賞では毎年のように直球もしくはかなり重要な要素としてLGBTネタが入っている映画が、ノミネートされたり受賞を果たしてるもんね。

それに比べると日本のゲイ映画は元気がない。欧米がおへそに届きそうなのに比べて、日本は水平以下ってかんじです。

橋口亮輔監督のゲイ三部作(勝手に命名)、『二十才の微熱』『渚のシンドバッド』『ハッシュ!』などは、国内外で高い評価を得ている傑作揃いなのに、いわゆる一般からの認知度は低め。
あの、あゆ様が全然違う顔で熱演してるってのによ!

映画という、巨額の費用が必要なものづくりにおいては、「このテーマに賭けてやろう」って作り手とスポンサーの両方がいないと、なかなか名作なんてのは生まれません。
海外では、LGBTを描く作り手と、それを支えるスポンサー、評価推薦する批評家、そして待ち望む観客、が揃っているからこそ、世界最高の舞台アカデミー賞で、そういう映画が常連になれるわけですね。

早く日本も、それぞれが育てばいいんですが、それには堂々と作ったり応援できる立場、つまり「そんな映画作ったり評価するなんて、その方はLGBTなの?」と思われても平気なプライド(開き直り)が必要なのかもしれません。

そんな中、ほぼストレートな皆さんが中心となって、
思いっきりゲイテーマな新作邦画『EDEN』が生まれたわけです。

映画の出だしは、かなり昭和なムード漂うオカマバー。
ロケに使われたのが、惜しまれつつ閉店となった老舗ショーパブ『ラ・セゾン』さんというのにもしみじみしつつ、そこで繰り広げられる主要キャラたちのビジュアルと会話センスには、プチ時をかける少女感。
新作邦画じゃなくて、『Mr.レディー 夜明けのシンデレラ』(鶴ちゃん主演)をまた観てるのかと勘違いしそうでした。

実際、主要キャストの設定には、当事者プロ目線からすると微妙なものもありました。
たとえば高橋和也くん(ハッシュ!)扮するエルメスは、エレガント系ヒゲ女装(エリカ様のお友だちでおなじみのDJ MONDO風)なのですが、ストーリーで語られたのは、女性になりたい ニューハーフマインド。それでヒゲはないわ。ビジュアルがヒゲ女装なら、基本ゲイ男性としての風変わりなこだわりがあるキャラってことにすれば、つじつまもあうしスタイルの幅も見せられたのになー。
あと、ショーパブのスタッフ内でカップルができてるって設定についても、気持ちが女性寄りの女装同士という、MTFレズビアン的なかなり稀なものにするよりは、たとえばMTFとFTM(ニューハーフさんとおなべさん)みたいなカップルのほうが、らしかった気がします。

でもね、この映画に関しては、そういう当事者目線での重箱の隅をつつくような批判は、しょーもないことだったと、後半を観て分かりました。

(多分、主に)ストレートのスタッフがゲイの事情を考えて、ストレートのキャストがゲイの気持ちを演じた、そんな映画は、
当事者であるアタシたちがしっかり涙することができる、前向きなメッセージと愛情にあふれた作品になってたんです。

まず、設定に難アリと言ってしまいましたが、エルメスは当事者から見ても惚れ惚れする、筋の通ったオカマでした。
ショーパブ店内に踏み込んだ警察に、「勃起で障子突き破る小説で売れたくせに、何が風営法だ!」と、こないだまでの都知事おじいちゃんをディスるシーンには胸がすく思いでしたし、
「ジャンヌ・モローも言ってたわ。マイノリティはいつも正しいって」
なんてセリフにもしびれまくり!

そして、ズルいっちゃズルいけど、やっぱり涙腺やられるのが、肉親ネタですよね。
藤田弓子さんが変わり果てた息子に語りかける言葉、山本太郎ちゃんが田舎のお母さんと電話する間の表情には、多くの当事者が自身を重ね合わせ、目から業の深い汁をお垂らしになれることと思います。アタシもグショ濡れだったわ。

はぐれ者のオカマたちが身を寄せ合って、自身や家族の問題と捨て身で取っ組みあっていく、人間味あふれるストーリー。

ビジュアル的にも展開的にも、オシャレというには程遠い、大衆演劇のような雰囲気ですが、だからこそ素直に胸に刺さるものも多いと思います。

警察や田舎の家族に化け物扱いされる現実の中、
彼らのEDEN、楽園は、まだまだ遠いようにも思えますが、
みんなで色とりどりに浜辺を歩く姿は、刹那ながら楽園そのものでした。

そういや、この連載のスタートも、それぞれの幸せの形を目指しての船出に例えてみましたし、
『肉体の門』のパンパンの皆さんも、「みんなでパラダイスを作るのさ!」と息巻いていましたし(結局ドッカンですが…)、

寄る辺なき者たちの心は、いつも楽園を夢見るものなのかもしれません。

そして、そんな夢を見る人が、自分以外にもいて、共にそこに向かおうと歩めること自体が、人生を意味ある楽園にしてくれるのでは、とも思うのです。

青い鳥はすぐそばにいるね!(テヘペロ)

そうね 世界中が他人事なら
傷つかずに 過ごせるけど

心ごと生きてゆきたくて
楽園のDoorから…

ひとりじゃないぞ

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