第50号 大災害、そのときあなたは、パートナーは……

鬼怒川堤防が決壊ーー。目を疑うような光景の大写真が、新聞に踊ります。テレビでも、電信柱に必死にしがみついた男性を、自衛隊が救助する模様が繰り返し放送されます。水につかった家屋の2階や屋根で、タオルを振って救助を待つ人たち。その横を家屋が流されていく……。
8月末から一足早い「秋の長雨」に突入た列島を台風18号の余波の雨雲が襲い、北関東は未曾有の水害に見舞われました。被害にあわれたかたがたには、心からお見舞い申し上げます。

9月は関東大震災の記念月でもあります。きょうは大災害と私たちの対応、そしてライフプランについて考えてみました。

1e1ac1bba38d8ae1e3d9c93b96531180
列島を襲う大災害。被害にあわれたかたにお見舞い申し上げます。

 ●災害時はおたがいに連絡がつかない前提でどう対処するか
近年、日本は千年ぶりの災害発生期に入っているといわれます。天変地異がつづいた平安時代以来とも。
地震では、首都直下地震、太平洋岸の東南海トラフ地震などへの警戒が呼びかけられています。御嶽山のほか、箱根や浅間山、そして阿蘇山など火山活動も活発化し、首都圏では宝永以来となる富士山の噴火も懸念されています。
地面のなかだけでなく、気候もエルニーニョの影響などで、猛暑やゲリラ豪雨など、近年ずいぶん荒っぽくなりました(長く生きてくると、昔と比較できます……)。

大災害が発生したときは、交通や通信(電話やネット)が遮断されます。そうしたとき、実家の家族、そして同性パートナーとどうやって連絡をとり、安否を確認するか。東日本大震災時に連絡がつきにくくなった経験をされたかたも多いでしょう。
大災害時に電話がつながりにくくなっているときには、被災地にNTTの災害用伝言ダイヤルが開設されます。その使い方を理解しておきましょう。171をかけて、伝言を吹き込んでおくことができます。
「もしもし、◯◯は無事です。安心してください。現在、◯◯区××小学校に開設された避難所に避難しています」
相手の安否を確認したい人は、やはり171にかけることで、こうしたメッセージを聞くことができます。
災害用伝言ダイヤルの使い方はこちらのページで動画でも紹介しています。いちど試してみてはいかがでしょう。
ただし、メッセージを登録するには被災地内(伝言ダイヤルが開設されたエリア)に固定電話の番号をもっていることが必要です。携帯電話の番号などでは登録ができません(聞くのは携帯電話からも聞くことはできますが)。あらかじめご注意ください。

仕事中に大災害が発生すると、帰宅ができなくなる場合があります。最近はすぐに帰宅させず、会社待機できるよう食料や毛布などを備蓄するところもありますね。
自分の勤め先の方針を知っておくとともに、パートナーにも伝えておきましょう。たとえ当日に帰宅できず、そしておたがいに連絡がつかなくても、会社で待機していることがわかっていれば、とりあえず安心材料です。

もちろん、交通が遮断されて、会社から自宅へ徒歩で帰宅する場合のために、会社のロッカーにスニーカーや懐中電灯、自分用食料(携行食)・水などの備え置きもよいでしょう。食品や水は、1月(阪神大震災)、3月(東日本大震災)、9月(関東大震災)など防災が呼びかけられるころに点検、入れ替えしましょう。
勤務先からの徒歩帰宅ルート、そのルート上に自治体が開設する避難所(途中で泊まったり休憩したり)、コンビニなど補給所となりうる店舗の有無などの情報収集もしてみましょう。休日などにレンタカーや自転車などで確認してみたり、ルートマップやアプリも市販されているようです。もちろん、一度歩いてみればなおよし?(苦笑)
帰宅支援マップなどの一例

災害の情報収集は、テレビも停電、ネットも遮断の状態では、ラジオに限ります。スマホのラジコも落ちているでしょう。AMだけのラジオなら千円で買えます。会社や自宅での備え置きに、電池とともに二つ、三つ、ぜひ!
もちろん、ネットが生きていれば、ツイッターその他でいろいろな情報も得られるでしょうが、同時に、デマ情報の温床ともなりやすい。個人発信の出どころ不明の情報を安易に信じたり、リツイートしないことが大事です。災害時の不安な心理による「流言飛語」は、関東大震災での朝鮮人や中国人への虐殺の悲劇を生み、あるいは今回の鬼怒川水害でもデマの流布や拡散が起こっています。

09688cec1d3a9e0aa0136890bac1e86e
わが家で愛用のAMラジオ(千円)。仕事場にも自宅にも常時おいてあります。

 ●自宅周辺の避難所の知識、そしてパートナーへ連絡を届けてもらう工夫を
夜間や早朝、休日など、自宅で災害発生にあう場合もあります。自宅への食料や水の備蓄、家具の固定、懐中電灯やベッド下へのスニーカー・スリッパの備え置きを考えましょう。
いま地震が発生しても1週間ぐらいは家に食料があるように考えて、日頃から買い物することも呼びかけられています。ベターホーム協会では、巨大地震に備え、冷蔵庫が使えないことが前提で、すべて常温保存が可能な食品による1週間分の食料備蓄例を紹介しています。日頃の消費や買い置きにうまく組み込むのがコツのようです。例が「おとな二人分」なのも参考にしやすい。
そのほかトイレの断水に備えて、寝るときも風呂の水は抜かない。トイレットペーパーの買い置きに注意、などがいわれていますね。ペットフードも同様かもしれません。

自宅のある自治体の災害時対応も知っておきましょう。地震時などに町の火災などを逃れていったん逃げ込める広域避難場所や、自宅倒壊や水災時などに泊まれる避難所がどこにあるか。自治体のホームページなどで調べられます。

 意識があり、事故にもあわずになんとか災害を切り抜けられればいいですが、けが(重症)を負い、意識がなくなりパートナーなどに連絡ができない場合もあります。パートナーの側から警察、救急、病院などに照会しても、例の個人情報保護で「家族でないかたにはお話できません」となることが予想されます(法律上は、災害時などは例外とされているのですが、実際の対応はわかりません)。
そうしたことにそなえて、緊急連絡先カードの携行(財布などへ)は、すぐできる対策です。
緊急連絡先カードや医療意思表示については、こちらの記事を参照してください。

 継続的な服薬をしている人が、ちょうど薬がなくなったところに災害が発生、病院もてんやわんや、受診も吹っ飛び、薬切れ……、ということがないとはいえません。HIVなどで定期的に通院している人は、受診日にもあと1か月分程度のストックがあるよう、受診サイクルを見直してはどうでしょうか。

トランスの人の、避難所における「男女わけ」、そしてトイレや入浴の困難は、東日本大震災でも一部で話題になりましたが、私もどうしたらいいのかわかりません。ポータブルトイレを備蓄しておく? 入浴支援に来てくれそうなNPOの情報などを知っておく? 災害時は一時避難できるちょっと遠方の友だちをもっておく? みなさんのアイデアや情報をお寄せください。
3dcb7211ad4b95463c90ebfaa0758a07
冷蔵庫がなくても保存できる1週間分の食料品備蓄例。日頃の買い物にも上手に組み込んで。(ベターホーム協会のホームページより)

 ●大災害で損壊した家屋は、どう補償される……
今回の大水害では、多くの家屋が倒壊、流失、水没しました。あのような場合、損害はどう補償されるのでしょう。持ち家か賃貸かというライフプランを考えるうえでも、少し気になる話です。
持ち家—-所有したかぎりは、損害もすべて自分が負うのが自己責任でしょうから。

とはいえ、今回のような激甚災害、しかも公の造営物である堤防の決壊による損害は、いくつか公的な補償制度があります。
災害により住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対しては、「被災者生活再建支援法」(PDFは内閣府HPより)により、支援金が給付されます。住宅が全壊し、それをふたたび建設・購入する場合は300万円、補修する場合は200万円です。
ただし、世帯人数が一人の場合には、4分の3の金額になります。セクマイは一人暮らしが多いでしょう。あるいは二人で住んでいても同性カップルは世帯と認知されず、所有者(名義のあるほう)も住民票のうえでは一人世帯ですから、男女カップル(事実婚も含めて)との差が生じます。

公的補償以外は、火災保険(水災補償つき)や地震保険などで自己対応することになります。それでも家を買い替えたり再建するに足りるかはわかりません。いわゆる二重ローンを抱える恐れもあります。

家を買う場合は、購入物件のあるエリアのハザードマップや過去の災害歴を調べたり、もともとそこがどういう土地であったのか、図書館で古地図を調べたり、土地の古老にたずねたり、地名などから類推することも必要かもしれません。

そのほかの支援としては、義援金の配分、税金(所得税)の減免などが考えられます。
*来週は連休(シルバーウイーク)のため休載いたします。あしからずご了承ください。
*弊事務所では、随時ご相談をうけたまわるほか、同性パートナーの法的保証に役立つ「使ってみたい人のための〈公正証書〉講座」を毎週土曜午後に開催しています。くわしくは下記HPをご覧ください。

 

Top