第29回 間違いだらけのセックスでもいいじゃない

 

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「どうすればいいかマジでわからない」

セックスの最中、そんな壁に打ち当たることがよくある。ありとあらゆる男と遊んできたはずなのに、次の一歩がわからない。あんまり硬直していると、向こうに気付かれてこれまでに築いたセクシーな空気が台無しになってしまう。しかし、もうやることは一通りやった。ここからどう動けばいいのだ。頭の中は真っ白。早く顔も真っ白になってことが終わればいいのに。冷や汗が止まらない。思えば、この感覚は初めてではない。学生時代、授業中にも冷や汗をよくかいた。

大学卒業も間もない頃、留学に備えて今更英語のクラスに参加した。周りはみんな自分より若い。それなのに英語ペラペラだ。そんなことを気にしてたら、急に先生から質問をされた。しかし、周りの視線が気になってなかなか答えが出てこない。自分の答えには自信がない。間違ったことを言って笑い者になるのは嫌だ。どうすればいいかマジでわからない。沈黙のまま考え込んでいたら、余計に注目を集めてしまった。カチカチに固まった自分に気付いたのか、その先生はこんな言葉をかけてくれた。

「正解なんて心配しなくていいから。君の意見を聞かせてよ」

そんな風に言われたことなんてなくて、ビックリした。いつもの授業なら、正解を得た人が褒められて、間違えた人はスルーされるか、周りから笑われる。下手すれば落第だ。だからできるだけ正解をもらおうと必死だった。そんな正解が持ち上げられる教育で育ってきて、いきなり自分の意見を聞かれたって余計困る。自分の意見と正解は一緒じゃなくてもいいだなんて、誰も教えてくれなかった。授業の後、その先生が話しかけてきた。

「もっと肩の力抜いて、間違えることを楽しめばいい」

シンプルに聞こえて、実に難しい。どうすれば間違えることを楽しめるのだろうか。授業だけではなく、社会の中では様々な場所で正解を求められる。間違えることはダメで、恥ずかしくて、避けたいものだ。セックスだってそうだ。少しでも間違えれば下手というレッテルを貼られてしまう。それを今更楽しめだなんて、悪い冗談にさえ聞こえてしまう。さて、回想をしていたらすっかりセックスが気まずくなっていた。心配そうにこちらを見つめる相手と目が合った。少しの失敗を気にするあまり、全然セックスを楽しめていない自分がそこにはいた。

新しい人とセックスをする度に、ゼロからのスタートとなる。自分と相手という生まれも育ちもきっと違うふたりの人間が、どう絡み合うのかはやってみるまでわからない。試行錯誤がなければ、何も学べない。何も学べなければ、セックスが気持ち良くなるわけもない。正解を見つけることばかりに気を取られて、間違えることを恐れていては、何も楽しめない。今更自分の中に植え付けられた恐怖心を取り除くのも大変なので、もう開き直ってしまおう。間違えることに怯えている自分に手を伸ばして、友達になってみよう。

「間違ってもいいじゃん!」

そう声をかけて、できることを試してみればいい。それが成功すれば、そこからまた別の道が見つかるだろう。それが失敗なら、また違うことを試してみる。好奇心も誘い出してアドベンチャーに出ればいい。大事なのは、お互いが楽しく気持ち良くなれるかどうかだ。

「大丈夫?」

痺れを切らした相手の声で現実に戻って、またセックスを再開した。まだ冷や汗はかいているが、良い汗も混じっていた。

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