第6回 「家族を作りたい」という気持ち

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家族が欲しいなと考えるようになったのは、つい最近だ。同級生から子供が産まれましたといった内容のハガキが届いたせいなのか、そんなことをよく考えるようになった。

性別を変えようと決断したのは16歳の時。その頃から「自分はきっと、他の皆と同じ人生を送ることが出来ないんだろうなぁ」とぼんやり意識するようになった。

男として生まれて男として育てられた私だが、当時の私は何かパッとするわけでもなく、地味で、控えめで、特に目立った才能も無く、不良になるような度胸も無く、何となく周りに合わせて流されて、そしていつも何かにイライラしていた。本当になりたい姿になれずに、でもその不満をどこにぶつけたらいいかも、どうやってその問題を解決すれば良いかも分からずに、16歳の私はただただイライラしていた。

男としての自分の人生に色んな意味で、限界を感じていた。きっとこのまま真面目に勉強を続けていれば、大学へ進学して、就職して、もしかしたら結婚して。まぁ悪くない人生が送れるかもしれない。でも、自分に嘘をつき続けたまま死ぬことになるのだな、と思った。

嘘って、つくのは簡単なんだ。けれど結局、嘘を重ねる度に心がどんどん重くなっていく。当時の私も16年間自分につき続けていた嘘が、鉛のように心に溜まって全く身動きが取れなくなっていた。もう限界だった。

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当時は家庭環境もめちゃくちゃで、気が付いた時には引きつった笑い方しか出来なくて、一体自分は何に怯えているのかもよく分かっていなかった。

性別を変えようと決断したのはそんな頃。女になりたいとはもちろん願っていたけれど、とにかく、漠然と、無性に、ただただ幸せになりたかった。

あの頃に比べて、今の私はよく笑うようになったなぁと思う。10年近くもこういう生き方をしていると、色んな経験をするし、普段出会えないような人達にも会う機会が多く、日々勉強させられる。

人生っていうのは、残念だけどきっと平等じゃない。不公平で、残酷だ。

そして基本的に誰も助けてはくれない。こんな世の中だもの、みんな自分が生きる事に必死だ。でもごく稀に、損得抜きで手を差し伸べてくれる人がいる。そういう人は本当に大事にしなければならないなと、思う。

多分、人間っていうのは元々そんなに賢くはないのだろうなと思う。それが色んな経験をして学んで、やっとまともになっていくんじゃないかって。

今の私がまともな人間かどうかは、あまりよく分かっていないけれど。最近はすぐ泣くようになってしまったし、自分の人生に対するこだわりも、昔に比べて随分減った。

ただ昔は考えもしなかった「家族を作りたい」という気持ちが強くなった。自分の人生というものにある程度満足がいくようになって、そろそろ自分以外の何かへ愛情を向けたくなってきたのだ。安心して過ごせる家が欲しい。ご飯とお風呂と洗濯物の匂いが混ざった、あの独特の安心感。

一度は諦めた、子供も良いなとすら考えている。自分の遺伝子を持った子はもう望めないだろう。養子を頂く事になるのかどうかも、まだ分からないが。それに私のようなトランスジェンダーが子供を持つなんて話は聞いた事が無いし、それが世間にどう映るのかも、ちょっと想像の範囲を超えている。

でもお母さんになれたら、それはそれは幸せだろうなと。少しだけね、考えてしまうんだ。

愛する人達に囲まれて、美味しいご飯作って、一緒に寝て、また次の日が始まって、その繰り返し。ずっとずっと。そんな暮らしは退屈で何も楽しくないと口にする人もいるけれど、そういう安定した退屈な日常が一番幸せな事なんじゃないかって、思う。

いつかもし、そんな毎日が迎えられるようになったら、私も同級生へハガキを出そうかと考えている。


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 2015/09/29 13:30    Comment  コラム   となりのさつきぽん              
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