第116回 「孫の顔を見せないなんて親不孝」……中国で親から子に強いられる“同性愛治療”の実態とは

 

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まきむらよ。

毎週金曜、世界のニュースから性を考える時事コラム「まきむぅの虹色NEWSサテライト」をお送りしております。

今回のテーマは「中国で親から子に強いられる“同性愛治療”とは」です。

「孫の顔を見せないなんて親不孝だ、ちゃんと異性と結婚して子どもをつくりなさい」……的なことを言われた経験のある方は、日本でも少なくないと思います。お隣の中国ではなんと、そうやって我が子に“同性愛治療”を強いる親御さんたちがいるようなんです。

今回はそのことについて、

★ 隠しカメラで撮影、中国で“同性愛治療”を行う病院の実態
★ “治療”は違法で医学的根拠なし、なのになぜ続く?
★ 日本で家族から“同性愛治療”を強いられた方へ

以上の流れでお送りします!


★ 隠しカメラで撮影、中国で“同性愛治療”を行う病院の実態

2015年10月はじめ。

中国のテレビでは流せない、ある衝撃的な映像が、イギリスのドキュメンタリー番組「Unreported World(報じられていない世界)」で放映されました。

その映像とは……中国の病院で“同性愛治療”と呼ばれている行為をとらえたもの。中国の社会活動家であるジョン・シェン氏とその協力者が、隠しカメラをもって中国の病院に潜入し撮影した映像です。

「中国では、儒教に基づき、『子どもをつくらないことは最大の親不孝だ』というようなことわざがあるんです」

そう語るシェン氏自身、自らがゲイであることを隠していませんが、親にだけはカミングアウトできていないといいます。

隠しカメラは、こんなふうに語る医師の姿を捉えていました。

「もし(同性に惹かれる)衝動を感じたなら、冷たいシャワーを浴びなさい。それからジョギングに行き、ホルモン分泌を活性化させるのです」

「(同性に惹かれるたびに飲む薬は)吐き気を催す作用があります」「同性への衝動を感じる度に、電気ショックで自分を罰しなさい」

「現在のあなたの状況は、同性に対して愛情を感じるというもの。私はあなたが同性に対し、愛情ではなく恐怖を感じるように変えたいのです」
そう言われて男性はベッドに寝かされ、電気ショックの痛みに苦しまされることになります。その後、彼はカメラにこう語りました。

「(顔の半分を指しながら)このへん全部、感覚がない……」

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写真:PAKUTASO

こうした拷問のような“同性愛治療”を強いられているのは、同性愛者だけではありません。今で言うバイセクシュアルやパンセクシュアルなど、「同性に惹かれる指向があるのでは」と考えられた人に対して行われているのです。

同性に惹かれる指向を、電気ショックなど不快な刺激と結び付けようとする試みは、「嫌悪療法」と呼ばれ、実は1940年代ごろから欧米で流行したものです(関連記事:バイセクシュアルを電気ショックで“治療”しようとした結果)。これらは“治療”どころか、マヒ、火傷、健忘症などの後遺症を引き起こし、あまりの苦しみに自ら死を選ぶ人もいました。

やがて1993年、WHO(世界保健機関)が「同性愛は治療の対象とならない」と宣言して以降、こうした嫌悪療法はとっくに過去のものとなっていました。……っていう、はずなんだけど……いったいなぜ、2015年の中国でこんなことが続いているのでしょうか?


★ “治療”は違法で医学的根拠なし、なのになぜ続く?
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写真:PAKUTASO

端的に言えば……おカネ、でしょうね。

中国では、同性愛はもはや犯罪でも病気でもないということになっています。

▼中国における同性愛の近代史

・1997年 : 同性愛を非犯罪化
・2001年 : 中国政府、同性愛を精神疾患の一種と分類することを廃止
・2014年 : 同性愛治療”を行った病院に罰金刑が課される判決

(出典:The Guardian, Independent

が、相変わらず「同性愛をないことにしておきたい空気」は色濃いようで、中国語辞典から「同性愛」に関する記述が削除されたりとか、女性同士のカップル含むフェミニスト活動家たちが逮捕されたりとか、今回“同性愛治療”について告発したジョン・シェン氏が警察につきまとわれたりとか、いろいろ不穏な感じです。

そういう空気の中、“同性愛治療”を行うクリニックは、一回の治療で3,500元と足元見まくった請求をしているわけです。これは日本円にして66,000円前後、中国の労働者の月収2か月分にあたります(出典:The Guardian)。

ここでは詳しく書かないんだけど、日本でも自称霊能力者とか自称セラピストが同じようなことをやってたりする事例があり、そういうのが「まーくん(仮名)! 同性愛なんてダメよ! ○○先生のところに行けば治るんだから行きなさい!!」みたいな形で繰り返され続けるのは愛で飾られた無知によるものだったりして、なんていうか、もうなんていうか、はぁ、ってなっています。私は、はぁ、ってなっています。

何を信じ何にカネを払うかは個人の自由ですが、“同性愛治療”と称する何かにカネを払わされそうになっている方がいらしたら、ぜひ、事前に頭に入れておいていただきたいことを最後にまとめたうえでこの記事を終わろうと思います。


★ 日本で家族から“同性愛治療”を強いられた方へ
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・1993年、WHO(世界保健機関)は同性愛について「いかなる意味でも治療の対象にならない」と宣言しています。日本精神神経学会もまた、この声明を支持しています。

・1994年、日本の厚生省(当時)も「同性愛は病気ではない」としました。

・同年、日本の文部省(当時)も「同性愛を青少年非行のリストから削除する」としました。

・中国や、アメリカの一部の州など、“同性愛治療”と称した行為で対象者に後遺症をあたえた団体が告訴され有罪となった事例も複数あります。

・同性愛含む、多様な性のあり方については、日本の法務省も公式YouTubeチャンネルで啓発ビデオを発表しています。

・そもそも「同性愛者」という単語自体、医学的な概念ではありません。「同性愛者」という言葉は、同性愛を犯罪としていたドイツで、同性愛非犯罪化を目指した作家のカーロイ・マリア・ケルトベニが1860年代につくりだしたものであって、人間を同性愛者と非同性愛者に区別するための客観的・統一的基準は存在しません。

中国含め、世界各地で、“同性愛治療”と称する何かを強いられて苦しむ人が少しでも減ることを私は願ってやみません。

……ということで、読んでくださってありがとうございました! また、再来週の金曜日にね(お引越しのため、今月は更新回数が減ってます)。まきむぅでした◎


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