第30回 友達の彼氏が40歳年上だって知ったら、どうする?

 

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秋になったトロントはすっかり肌寒くなり、熱いラテ片手に雲ひとつない青空を眺めて夏を惜しんでいた。こうやってひとりになりたい時に限って、会いたくない人に出くわす。仕事に戻る前に静かな時間を楽しみたかったのに、噂話が大好きな知り合いが目の前に現れた。相変わらずハイテンションの彼は、聞いてもいないのに嬉しそうに最新ゴシップを届けてくれた。

「あの20代の子、60代の彼氏と付き合ってるんだって! 遺産目当て? セックスどうしてるのかな? 自分より3倍も年上の人とやるなんておかしくない? まさかのオケ専?」

そんな話題には興味がない。さっきから誰が見てもわかる苦笑いでそれを伝えようとしているが、彼がそれに気付くわけもない。ラテ休憩なんて取るんじゃなかった。40歳もの年齢差は確かに頻繁に聞く話ではない。それにしても、それだけでこんなに騒ぐほどなのだろうか。情熱的に噂を撒き散らす彼を観察しながら、そんな疑問で頭の中がいっぱいになった。そういえば、同じく60代の彼氏がいる友人はこんなことを言っていた。

「自分より30歳も年上の人と付き合うことになって、この年齢差はどうすればいいんだって思った。正直に言うと、それが理由で別れようとしたことが何回もあった」

彼らはもう10年以上も付き合っている。周りからの白いの目も、実際のふたりの年齢差も、ふたりの前に大きな壁として立ちはだかったという。しかし、それでも彼らは自分たちのペースで恋愛関係をゆっくり築いていった。その友人の言葉はとても印象に残った。

「人間と人間、一緒になれば必ず違いがある。お互いを知れば知るほど、小さな違いから大きな違いまでいろいろ出てくるだろう。それを怖がって好きな人と一緒になれないなら、誰とも付き合うことはできない。自分の場合は年齢差という違いがあるってだけだ。どうせ違うんだから、どれだけ違うかなんてきっとそこまで関係ないさ」

いつか、ゲイカップルは男性と男性だから共通点が多くて楽だという意見を耳にした。本当にそうなのだろうか。男性と女性はだいぶ違うけど、ストレートカップルは至る所にいる。年齢や性別じゃなくても、文化だったり、人種だったり、収入だったりと、違いは数え出したらきりがない。肉好きとビーガンのレズビアンカップルは、毎晩別々に夕食を用意するという。愛があれば、それも苦にならないらしい。

目に見える違いや気付きやすい違いにばかり注目が集まるが、目に見えない違いだって山ほどある。自分と彼氏には共通点がたくさんあると思っていたが、付き合えば付き合うほど違いが増えて行く。何度注意しても、彼は汚い靴下をあちこちに履き捨てる。きっと、そこは一生変わらないのだろう。毎回目くじらを立てるだけ無駄なのかもしれない。その違いを無理に変えるよりも、それを受け入れて、そこからどうやって関係を築けるかに注目したい。もちろん、そこから立ち去るのも自由だ。

今、目の前で噂話を垂れ流す彼とそれに嫌気が差している自分の間にもきっと埋まらない違いがあるのだろう。それが40歳もの年齢差より大きな違いなのかはわからないが、これ以上休憩時間を無駄にしたくないのは確かだ。ぐいっとラテを飲み干して、あっさりとバイバイした。

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