第53号 情報と人の輪こそ老後の支え〜セクマイのための老後セミナー報告〜

 

 ●つくばから横浜まで、68歳も参加

NPO法人パープル・ハンズでは、性的マイノリティの事情に即した老後の準備セミナー「にじ色あんしん老いじたく」講座を、今年、上野エリアの会場で開催しています。これは郵便貯金でもおなじみの一般財団法人「ゆうちょ財団」さまの、高齢者、被災者、障がい者などへの金融相談支援事業という助成金に採用していただいたもの。こんなところにも、世間の性的マイノリティへの関心の高まりが感じられます。

49号では、そのためのご案内に、上野・浅草のお店回りをしたこと、そこでいろいろ聞いたことを、ご紹介しましたね。

さて、本番……。どれぐらいお申し込みがあるのだろう。助成元の財団への企画書には、「まだまだ当事者—-とくにシニア層の性的マイノリティの、この種の社会的活動への警戒感は高いと思われる。10名程度の参加があれば成功だと考えてください(それでもいいならぜひご助成ください)」と書いた私です。

ところが、蓋を開けてみたら、40名近いお申し込みをいただきました!
会場定員の都合から、まず20代はお申し込み時にお断りし(でも、20代で老後が心配って……汗)、最終的には30代のかたもご遠慮いただき、全員40代以上、上は68歳まで、約30人での実施となりました。

北はつくば市から西は相模原・横浜、東は市川と、広範囲からご参加があったことに驚いています。各年代が3分の1ずつで、女性のかた、FTMゲイ(女性から男性へ移行し、男性が好き)のかた、HIV陽性のかた、既婚ゲイのかたのご参加もありました。バーでチラシを見たというかたも多かったし、通院しているエイズ拠点病院でチラシを見たというかたもいらっしゃり、嬉しいことでした。

 ●「ひとり」と「おかね」が心配

アンケートは29枚、ほぼ全員が書いてくださいました。参加の動機には、老後が心配はもちろんですが、性的マイノリティならではの情報がないことへの不安が目立ちました。(以下、アンケートはプライバシー保護のための整理を加えて紹介します)

「ライフプランニングの必要性は感じるが、どうやって始めたらよいかピンとこないために参加しました」

「会社等で投資やライフプランの講座には参加しています。しかし、ゲイ向けのライフプラン(とくにセカンドライフ)についての講座はなく、夫婦・子どもがいる前提のものしかありません。シングルを含めたゲイ向けの講座ははじめて聞いたので参加してみたく思いました」

「バラバラで断片的に聞き知っていた話ですが、業界ネタ、当事者視線の解説をしてもらい、話が一本につながった感じです。相談窓口ができてよかったです」

老後のセミナーは、いろいろなところで開催されているでしょうが、たいてい老夫婦や子どもがいることが前提で、一人暮らしだったり、法律上は家族と認知されづらい同性パートナーがいるなど、われわれセクマイの事情にはちょっと当てはまらないことも多いですね。また、銀行や証券会社が開催するものはとかく富裕層向けで、相続税対策にアパート経営やりましょうとか(笑)、ちょっとわれわれには縁遠い面もあります。

私たちの講座では、まず私たちの現状に即し、かつ、ほどほどのお金で安心して暮らすために、をテーマにしています。
そういう面からは、「ひとり」と「おかね」への心配を吐露されたかたが多かったのも印象的でした。

「今年、長年一緒にいたパートナーから別れを告げられ、一人の老後について考える機会になると思い参加しました」

このかたは50代ですから、またつぎのパートナーとめぐりあうこともあるでしょうが、すでに「ひとりで生きて行く」と決めているかたも少なからずいらっしゃいました。
ちなみにパートナーの有無は、有りが13、シングルが16。有りも5人が3年以内でした。年代のわりに長いパートナーシップを維持している人は少ない、と言えるかもしれません。

おかねについては、

「老後破産が心配。今年定年を迎えるが、退職・再雇用の選択に迷いがあります」

定年直前のかたですが、いまは社会参加とボケ防止・健康維持もかねて75歳ぐらいまではなんだかんだで働いてみるのがいいのでは? 持ち家とお答えだったので、ローンの未完済を心配しているのかもしれません。
ちなみに持ち家(相方名義を含む)は12、実家は3、賃貸は13の回答でした。

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アンケートには、「このまま一人の先々が気になり、少しでも情報を知りたくて」とか、「老後がとても気になったので」「ひとり死はイヤ」など切実な言葉が多数見られました。同時に、「おなじゲイなので参加しやすかった」「気が楽だった」などの言葉も。

 ●〝旅立ち〟を見すえながらの仲間作り

あんしんできる老後のために、私は、携帯に並ぶニックネームとアドレスしか知らない百人ではなくて、おなじマンションに、自転車3分の距離に、かけつけあえる3人の生身の友人ネットワークを作ろう、と話してみました。そのことに共感してくださるコメントがいくつかありました。

「相方がいなくても、かけつけあえる3人のご近所さんを確保するという考え方もありなのかな、と思いました」

「高齢期こそ、私が同性愛者であることを知っている人とのネットワークが必要だと感じた」

「老後はさみしさ、孤独をいつも感じていると思う。孤立しない暮らし方、2~3人でよい絆と、自分にとってのキーパーソンを作ることを目標にしたいと思います」

「安否確認、生活相談、情報共有、なりゆきゲイタウンなどが記憶に残った」

私がいつも言うことですが、お金があって不幸な人もいっぱいいるし、相方がいて寂しい人もたくさんいます。お金や相方もさることながら、気にかけあえる人のネットワークこそが、老後のなによりの支えではないでしょうか。
こうした思いの先にあるのは、自分の「旅立ち」のとき、そしていわばカミングアウトの問題かもしれません。

「突然死んでもまわりの人が困らない(驚かない)状態、身辺をきれいにしておくこと。60歳を超えた現在、セクマイであることをどうしても伝えておかなければならない親族に、いまさらどのように伝えるとよいのか、それが目下の関心事です」

とはいえ、仲間を作ろうといっても、そうかんたんにできるわけではありません。

「孤立しない暮らし方を考えるのは重要だ。見守りしてくれる友人が必要だ。しかし、作ろうとしてそんな友人ができるわけでもないだろうし、(有料の)見守りサービス利用も考えるべきだろう。どんなサービスがあるのか知りたいです」

そんなコメントもありました。パープル・カフェなど私たちの小さなイベントも、友だち作りの場ですが、独居高齢者向けの見守りサービスも増えたなか、それが私たちにも理解ある対応をしてくれるようになることは重要なことだと思いました。パープル・ハンズも、将来、セクマイ向けの見守り法人として、独居高齢セクマイの後見人などを引き受けられればと考えています。

 ●第2回は、病院面会や介護について!(受付中)

さて、現在、第2回の講座のお申し込みを受け付け中です。今回は、「シングルで、同性ふたりで、入院・介護・認知症、どうする?」と題して、一人暮らしや、家族と認知されづらい同性パートナーとの暮らしで、入院や介護の状態になったときに起こりがちなトラブルやその回避策について考えます。

病院でパートナーが締め出されたなどの実例も耳にしますし、介護で同性パートナーが身元引受や保証人などになれるのかも、これから問われるでしょう。
一人暮らしと認知症の問題は深刻ですし、HIV陽性の場合は認知症が有意に多いこともわかっています。

今回は、病院面会や財産管理の代理など法律的な知識をわかりやすくご紹介しながら、いざというときへの備えについて考えたいと思います。ふるってご参加ください。

日 時:10月24日(土曜)午後1時半~3時半(座席数30名)
会 場:地下鉄銀座線・上野駅から徒歩1分(お申込者にご案内)
講 師:永易至文(パープル・ハンズ事務局長、行政書士、2級FP技能士)
性別不問、参加費無料、秘密厳守
終了後、向かいのイングリッシュパブのハッピーアワーで軽く交流会を予定しています。(自由参加)
一般財団法人「ゆうちょ財団」助成事業

お申込みは、お名前(ニックネーム可)と年齢を書いて、info@purple-hands.net へ、お申込みください。おおむね40代以上のご参加を想定。 申込み締切は10月21日夜12時
定員を超えた場合、年齢のお若い順にご遠慮いただく場合がありますので、あらかじめご了承ください。


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上野・浅草・新橋のゲイバーや各地のNPO、コミュニティセンター、そして首都圏のエイズ拠点病院などへチラシを設置させていただいています。

 

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