第54号 新刊紹介『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』

このたび新しい本を刊行しました。きょうはそのご紹介をさせてください。
ふたりで安心して最後まで暮らすための本ーー同性パートナーとのライフプランと法的書面』。
このウェブでもおりおりご紹介してきた、性的マイノリティのための人生設計や既存制度の活用、そして渋谷区や世田谷区で始まろうとしている行政による公的証明、公正証書などの法的書面の活用について1冊にまとめた、ホットなホットな本です。
章別の見出しは、

 1 ウェディングだけではない、ふたりに必要なこと
2 同性パートナーシップを証明する書面
3 お金・不動産・保険、ライフプランニングのコツ
4 性的マイノリティが病気をするとき
5 老後と万一時の心の準備はしておこう

 【付録】もしもに備える伝言ノート

その読み得、お買い得なポイントを、なんと7つにわけて、ご紹介します。

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 くわしい目次はこちらにも

 ●本書の7つのポイント

 ポイント1 公正証書などの法的書面が正確に理解できます
婚姻制度の外で、同性パートナーシップを営むふたりには、さまざまな不安がつきまといます。そうした事態への備えとして、あらかじめ法的効力のある書面を作成していくことが有効です。
そもそもパートナーシップには、婚姻制度のように公(国家)によって認められる「婚姻(法定)モデル」と、ふたりのあいだでの契約や合意によってその内実を形成する「契約モデル」とがあります(52号の中川弁護士のお話も参照)。「契約モデル」の基幹をなす、遺言、任意後見契約、医療の意思表示書を中心に、図表もまじえてわかりやすくご紹介しました。3つの書面で同性カップルの人生をカバーすることができます。

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 ポイント2 ふたりで暮らすために重要で、身近なことから紹介
本編の冒頭に書いたこと、それは「自分の個人情報、実家や勤め先、場合によれば障害や疾病の情報など、おたがいの情報をきちんと共有する」です。出版社の担当者からは、「えっ、そこから?」と言われました。しかし、同性ふたりで「付き合う」と言いながら、おたがいの本名を知らなかった話も聞きますし、一方が事故などで急に亡くなり、実家の連絡先がわからず苦労した実例もあります。大地震など災害時は、おたがいに連絡がとれますか?
ふたりが安心して暮らすために、ノンケ夫婦なら当然考えることから、本書では一つひとつ挙げてみました。いちどふたりで振り返ってみませんか。

 ポイント3 コラムやチェック欄で多面的に情報提供
本文は基本的に見開き2ページで1項目の構成にして、サクサクと読み進められる体裁です。欄外にはちょっとした言葉の解説や一言アドバイスなどで、親切設計(笑)。
盛り込みきれない情報も、コラムのかたちに編集して、たくさんのコラムが随所に挿入してあります。法律やお金の本のわりには、メリハリよく理解できると思います(もちろん、内容がすべて同性カップルや性的マイノリティの現実に即している本は、ほかには見かけないでしょうし)。
必要に応じて問いかけ式のチェック欄もあり、自分たちの足元を振り返ったり、今後を見通すヒントにもなります。

 ポイント4 もしもに備える伝言ノートや緊急連絡先カード付き
さらに本書のこれまでにない特長として、巻末に、「もしもに備える伝言ノート」をつけました。ポイント2で述べた、おたがいの個人情報や実家情報、万一時に連絡してほしい人(そして連絡してほしくない人)などを書き込みシェアできる、一種の「エンディングノート」です。財産や加入保険のかんたんな目録(探索時の参考)、所持する電話やクレジットカード類のリスト、そしてパソコンや各種SNSのIDとパスワードの欄もあり、万一時にFBは、ツイッターは、どうしてほしいのか? 削除の希望なども記せます。
このノート部分は出版社に言えば別売もしてくれますので(〒共300円)、ふたりが別々に持っておきたいとか、相手が変わって書き換える必要ができた(笑)などのときにも便利です。
さらに、カバーの袖には、切り抜いて貼り合わせればそのまま使える緊急連絡先カードもつけました(前と後でふたり分)。ホントに至れり尽くせりの親切設計!

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 ポイント5 買いやすい値段、「帯」にも一工夫
これだけの内容で、ちょっと奥さん! 本書は本体1,500円(税込1,620円)です。いかがでしょう?
全国の大型書店で「社会学」「セクシュアリティ」などのコーナーをお探しください。もちろん、ネット書店各社でもお取り寄せできます(末尾にご注意追記あり)。
書店で買う場合、ゲイ雑誌ではないですが、当事者としてこうした本を買うのに抵抗があるかたもいらっしゃるでしょうか? 帯をご覧ください。「LGBTの友人へのプレゼントに」と入れてもらいました(笑)。他人のために買うような顔して(ついでに「包んでくれます?」とか言って)、どうぞお求めを。

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 ポイント6 田中昭全さんのステキなイラスト
まだある、という感じですが……。
本書を田中昭全さんのイラストで飾らせていただいました。田中さんは、香川県で同性パートナーと暮らすゲイであり、LGBT支援法律家ネットワークがこの7月に日本弁護士連合会へ行なった同性婚人権救済申立の申立人の一人(一組)です。保守的といわれる「地方」で、ゲイとしての誇りを胸に、家族や地域へカミングアウトし、香川の地元団体「PROUD」の活動にも参加する田中さんの素晴らしいイラストで本書を飾れたことに、心から感謝します。

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 ポイント7 親が見ても納得
そして最後に……。
出版元の太郎次郎社エディタスは性的マイノリティにかんする良書をたくさん刊行していますが、読者カードなどによると、当事者だけでなくその親などの読者も多いとのこと。
子どもにカミングアウトされた親たちが抱く不安のなかには、わが子はこれから幸せな人生を送れるのだろうか、というものがあると聞きます(親も情報がないのです)。
この本を通読することで、同性ふたりにも堅実に人生を歩む方法があることを知れば、親として、わが子とそのパートナーを心から祝福してやることができるのではないでしょうか。ふたりで読んだあとは、親御さんにも見せてあげてください。

いろいろお買い得をギュッと詰め込んだ一冊です。ぜひ、ご覧ください。タイトルに惑わされて「自分は相方いないし……いらないや」というかたも、お金、医療、老後など、知っていて損はない情報がいっぱいです。非法律婚の男女カップルにも、意外に使える内容かも。

 ※私のこれまでの本と同様、本書も、外国人がパートナーである場合、そして同性カップルで子どもをもつ場合については、触れることができませんでした。外国人パートナーへの配偶者ビザ発給は現状、絶望的であり、また子どもをもち、育てることは本書の一章ですむ話ではないからです(私も今後、研究していきます)。あしからずご了解ください。

 ●暮らしを作り、生きるのは、あなた自身!

最後にちょっとだけ、本書に込めた思いを書いてみます。

 リアルに考えよう
人生は生老病死、冠婚葬祭、お金も一生ついて回る。愛だの夢だのだけでは、ふたり暮らしも立ち行かない場合があります。「みんながレインボー色に輝ける街へ」式の虹色ポエムを卒業したら、そろそろゼニ金・老後の話もしませんか。富裕層でなくても、キラキラしてなくてもいい。ほどほどのお金で、一人であっても同性ふたりであっても、人としての当然の安心を感じながら暮らすためになにができるのか。私も来年は50歳、自分のためにこの本、書いてます。

 認めてくださいと乞うより、いまやれることをしてみよう
渋谷区で、そして世田谷区で、同性カップルを公的に認める制度が始まろうとしています。制度ができることは、確実に社会の風を変えていくでしょう。尽力されたすべてのかたに感謝を捧げます。
さあ、つぎに動くのは私たち自身です。認めてくれてありがとう、嬉しいです、涙が出る……その気持ちは私もわかります。でも、感謝するだけ、ネットのなかでニュースをRTするだけで、実際の次の行動がなければ、せっかく制度づくりに汗をかいた人も残念な気持ちでしょう。
同性婚認めてください、私たちのこと認めてください、と乞いつづけるより、ふたりの暮らしを守るためにいまできることからやってしまおう。お金のかからない方法だってある。制度がない自治体でも、できることはいっぱいあります。
もちろんネットで、「渋谷区がーっ」「世田谷区がーっ」と小賢しい批判をするばっかりでなにもしない手合いは論外ですが。

 仲間を、コミュニティを、信頼しよう
性的マイノリティの人生設計に大切なもの、それは私たちバージョンに翻訳された情報と人のネットワーク(そして少しのお金)。当事者やノンケの専門家として、支援者として、そうした情報を発信し、動いている人がたくさんいます。各地のNPOやサークル、コミュニティセンターなど、情報と人の結節点も重要。ゲイ(セクマイ)の敵はゲイ(セクマイ)とばかりに警戒し、ネットで中傷を放送しつづける人はいまもいるけれど、仲間を信じ、自分から開いていかないかぎり、なにもあなたには入ってこない、届かない。
LGBT支援法律家ネットワークも、コミュニティセンターのakta(新宿)やdista(大阪)も、あるいはこの2CHOPO(とそこで紹介した人びと)も、私にご縁があった小さな範囲だけでも、多くの人が貴重な情報を発信しています。私たちパープル・ハンズや、東中野さくら行政書士事務所も、もちろんそのつもりです。ぜひみなさんに、それらを活用してほしいのです。

本書とそこに収められた情報の背後には、私にこれまでさまざまな学びを与えてくれたコミュニティの活動者のみなさんや仲間の存在があり、なによりライフプラン研やパープル・カフェの場で、そして弊事務所へのご相談を通じて、私にセクマイのリアルを開示してくださった当事者のみなさんがいます。
そうしたみなさまのおかげで、この本はできあがりました。みなさまがくださった情報は、きっとほかの仲間が人生を生きることの役に立ってくれるでしょう。
本当にありがとうございました。

【お知らせ】
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