第131回 精子提供と「出自を知る権利」

子どもの「出自を知る権利」について、3年ほど前から考え続けています。もちろん、明確な答えが出るはずもなく、それでも考え続けています。
答えが出ないことでも、人生のどこかのタイミングで決断しなければならないこともあります。その時点で「一番よいと思われること」を選択するしかない。そしてそれで正しかったのか否かは、数年あるいは数十年しないとわからない……。そんなことが人生にはあります。
私たちは「友人からの精子提供で子どもをつくろう」としています。
女性同士のカップルには精子がないわけで、子どもをつくるには、どなたから精子をいただいてこなければなりません。
日本にはAID(非配偶者間人工授精)という技術があり、実用化されてすでに60年以上が経っています。しかし長い間「AIDで子どもをつくったことは、子ども自身にも周囲にも言わない方がよい」とされてきたため、何かあったときに突然その事実を知らされて、当事者の子どもが大人になってから大変な傷を負ってしまうということが起きています。この問題を知った私は、当事者の方にお話しを聞きにいったり、関連するニュースをチェックしたりし続けています。
男女の夫婦では、AIDを利用した場合に、子どもに事実を伝えないで育てるということがあり得ますが、私たち女性同士のカップルの場合、それはあり得ません。ある程度の年齢になったら、子どもが「お父さんはいるの?」とか「どうしてうちはお母さんがふたりなの?」といった疑問を持ち、「女性同士で子どもはつくれない」という事実に気がつくだろうからです。
AIDで生まれたことを大人になるまで知らされなかった当事者の方の悩みや傷つきは、想像を絶するものがあります。しかし、その辛さがどこから来ているのかについて想像力を働かせなくては、私たちがこれからつくろうとしている子どもも同じように傷付けてしまうことになってしまうかもしれません。だからこの数年、ずっと考えているのです。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、出自を知る権利について、ほんの少しだけ見えてきたことがあります。
・子どもにはできるだけ早いうちから、出生にまつわる事実を伝えた方がいいということ(真実告知)
・精子提供者は生まれた子の生物学的父親であり、子にとっては「自分の半分」なので、どんな人物か話して聞かせることができること(ストーリーの獲得)
・子どもが望んだ場合に、精子提供者に会える可能性が担保されていること(アクセス可能性)
最近では生殖補助医療に関する報道などでも一般的に「出自を知る権利」という言葉が使われていますが、今の日本では「出自を知る権利」とは「どこまでのどのような権利」で、「なぜ重要なのか」が、まだ明確でないように思います。
▶︎参考記事
先日、臨床心理士の信田さよ子先生と雑誌『現代思想』で対談させていただいた際に、子どもにとって重要なことは、上記の3つに分けて考えると整理されるのではないか?という大きな気づきを得ました。頭の中でずっともやもやと考えてきたことが、すっきりと言語化された対話でした。
信田さよ子 x 東小雪「私たちがつくる〈家族〉のかたち」
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私たちは現在、「精子提供者の方には親戚のおじさんのような距離で子どもに関わってもらう」という方向で話を進めています。これが正解かどうか、子どもが絶対に傷つかないか、残念ながらわかりません。それでも現時点で、必死に考えて話し合って私たちがたどり着いた、ひとつの「答え」です。
精子提供を受けて赤ちゃんを授かるレズビアンマザーが日本でも増えています。それぞれの家族が考えて出した答えを尊重しながら、つねに子どものことを一番に考えて、進んでいきたいと思っています。
▶︎参考記事

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現在、NHKがLGBT当事者の声を集めています。
回答者が多いほど影響力があり、NHKでLGBTについて報道される際の基礎資料となる、貴重なアンケートです。回答は5分程度ですぐ終わります。
10/25(日)が締め切りです。ぜひご協力ください!
※個人情報は保護されます。

 

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