Vol.14 正統派女装男子を擁するアイドルグループ「恥じらいレスキューJPN」インタビュー(後編)

女装モデルとして活躍すること数年、ついにアイドルグループ「恥じらいレスキューJPN」のメンバーとして活動を始めたあおにゃんこと一条碧唯さん。

前回はグループ運営さんにグループの狙いなどを聞きましたが、今度はあおにゃんさんへのロングインタビューにて、バックグラウンドを掘り下げていこうと思います。

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○あおにゃんさんがアイドル活動を始めた理由は?また、周囲の反応は?

たまたま話が舞い込んできた! というのがキッカケです。折角ですので、それに至る経緯を少し詳しく説明したいと思います。

数年前から当人のジェンダー意識の問題(LGBT)からは切り離された形として、カジュアルな女装がじわじわとブームになりつつありました。その中で、既存の女装に対する社会的イメージを転換すべく、自分を含めて芸能に携わる人々が中心となり、写真集やDVD、その他各種メディアを通して”現代的な女装文化”を発信してきました。

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○あおにゃんさんは私の写真作品のモデルとしても、何回も登場してくれていますね。

このような活動を地道に続けた結果、昨年の2014年にはテレビ番組でも女装男子の特集が頻繁に組まれるなどし、女装に対する社会的な認知度が一気に押し上げられました。さらに、女装子という言葉が流行語大賞にノミネートされるにまで至ったのも大きな出来事でした。

○ノミネートをきっかけに、私のところへいくつもテレビや雑誌の取材が来ました。あれからいっそうメディアからの注目度が高まったように感じます。

こうして女装というものが一般化されることは、火中にいるぼくらにとっては大変喜ばしいことではあったのですが、その一方でエンターテイメントとして活動としている人間としては、”一般化に伴う女装が持つ特別感(=コンテンツとしての価値)の喪失”を恐れていました。

○女装が特別なことでなくなると、必然的にエンタメとして機能しなくなりますものね。

ぼくはテレビ番組に出演するようになった昨年の春ごろの時点から、必ず来るであろうブームの沈着を意識し、次の一手として何を打っていくべきかをずっと考えていました。いくつか候補を考えていましたが、当時の自分からすれば全く別の方向性に進む選択肢も考えていました。つまり、<女装+α>のαの部分を今後の課題として追求していく方向と全く別のジャンルに進んでいく方向の二つがあると考えていました。

○そのように客観的に自分を見ることができるということ自体、なかなかだと思います。

世間(”の一部”かもしれませんが笑)では女装男子が取り沙汰され、その一方で自分は今後どうあるべきか暗中模索の真っ只中にいた、そんな矢先です。昨年の10月初頭のことでした。たまたま縁あって、「恥じらいレスキュー」というアイドルグループの新規メンバーのオーディションに是非参加してみないかというお声が掛かりました。

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○恥じらいレスキューのことはご存知でしたか?

恥じらいレスキューは、テレビ東京の人気番組「YOUは何しに東京へ?」の中でチーム結成からデビューまでを密着取材されたこともあり、当時は注目を浴びていた前途有望なアイドルグループでした。しかし、活動開始から間も無くメンバーの1人が脱退する事態が生じたため、新たにメンバーを募集していたのです。その時、たまたま知り合いを通じて、声がかかりました。

○もちろん、あおにゃんさんが女装男子ということを踏まえた上で、ですよね。

ちなみに、募集していたのは勿論女性(のはず)でしたが、よく見ると確かに要項にはそれが明記してありませんでした!(笑)。お話を頂いた時は、「これだっ!」という感覚がビビッ! ときました。

女性アイドルグループの中に1人女装男子が混ざっているというコンセプトは、これまでの自分のキャリアを活かせるばかりか、やったことがないチャレンジングな仕事もできて、きっと自分の成長に繋がるなと思いました。岐路に立たされていた自分にとっては、当時考えていた二つの方向性をどちらも併せ持つようなお話だったのです。

○まさに、渡りに船!という状態だったわけですね。

そこで、思い切って船に乗り込み冒険してみようとオーディションを受ける決意をしました。その結果、女装男子が女性アイドルグループに混ざるのはやはり面白いね!ということになり、見事採用されました。こうして今、「恥じらいレスキューJPN」のメンバーとして活動しています。

○なるほど。アイドル活動を通じて、どんな発見がありましたか?

特に大きな発見は、仕事のスタイルです。ぼくは今まである意味で1人で成立している仕事(モデル、俳優など)しかしていませんでした。もちろん、それらも色々な人たちの協力で成り立っていますが、どちらかというと個人プレイがメインの仕事でした。スポーツで例えるなら、テニス、水泳、陸上みたいな感じです。

でも、アイドルグループの活動は、サッカーやバスケットなどのようなチームプレイのスポーツだと言えます。パス回しを上手くするには、技術的な面だけでなく、お互いに良いところ悪いところを知り、信頼関係を築くことがとても大切です。それから、困ったり悩んだりした時は助け合うことも必要です。

結果的に個人ではなく、チームとして良くならないとダメなんです。

○それまでの経験を活かした上で、全く違う仕事の仕方をする。理想的なキャリアアップですね。チームで動く中でのエピソードを聞かせてください。

ライブ本番前には、そよちゃにヘアを手伝ってもらっています。この前はつかぽんから髪を結ぶリボンを貸してもらいました。ナツミコはダンスで分からないところを丁寧に教えてくれます。皆と一緒にご飯を食べる時は、たわいもない話で盛り上がって大笑いすることもあれば、ライブの反省会として真剣に議論したり、個人の悩みを聴き合ったりすることもあります。

そんな風にして、ぼくたち8人は手を取り合いながら少しずつだけど一歩ずつ着実に一つの大きな(そして険しい)山を登りはじめています。この山は、きっと一人では登れない山だと思います。助け合う仲間がいるからこそ登れる山がある! そういうことに気付かされました。

○まるで青春そのものですね。

それからもう一つ、今までの自分の活動と大きく違うなと思ったのは見せ方の部分です。一度何らかしらの媒体を通して編集したものをお客さんに見せるのではなく、お客さんを直接目の前にしてパフォーマンスを見せる点です。

やり直しが効かないですし、お客さんの視線も集中しています。さらに、お客さんの反応が間近で伝わってきます。そのため、ステージの上には独特の緊張感と高揚感があります。

○全ての反応が目の前で返ってくるというのは、ライブ特有ですよね。

ライブは文字通り「生」っていう、なんとも言えない感じがあります。画面を通したものだと、どうしてもgiveしたコンテンツをお客さんがtakeするという一方通行な形になってしまいがちですが、ライブではお客さんと同じ時間?同じ場所で気持ちを共有し、一体感を肌で感じることができます。これは今までの活動では味わうことができなかった醍醐味であり、これも自分にとっては大きな発見の一つでした。

○女装男子だけのアイドルグループはありましたが、女の子の中で一人だけ男の娘というケースは初めてです。これについてどう思いますか?

実はこれに関して、ぼく自身は全く驚いていません。

恥じらいレスキューJPNの一つの大きな売りは『ダイバーシティ(多様性)』です。
メンバーの中には国籍が違う人もいれば、ハーフの人もいます。また、その他にも様々なバックグラウンドとキャラクターを持ち合わせたメンバーがいます。その中で、ぼくは男女の境界を越えたポジションを担っています。

歴史的にも異例ですから、周りからすれば斬新で、ちょっと奇をてらったようなコンセプトのように見えるかもしれません。でも、本当にそうなのかな?と考えると、実はそうではないんじゃないかなと思っています。

○というと?

グローバル化と多様化が一層進んでいる昨今の時代の流れや既存のアイドルコンセプトの成熟化などを考えると、このようなアイドルグループが生まれるのはイレギュラーなことではなく、むしろごく自然な流れであって、必然的(!?)と言ってしまっても良いのかな、と個人的には思っています。

そして、”日本”という国は、世界をリードしてそのような文化を発信していく種とそれを育む土壌を持っていると思うんです。だからこそ、恥じらいレスキュー”JPN”なのだと思っています。日本バンザイ!(笑)

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○ご自分の女装について、どのようなスタンスでいますか?

この質問の回答は二つあります。一つは個人としての”ぼく”に関して、もう一つはこのグループにおける”ぼく”に関して、です。

○一つ目の「個人としてのぼく」とは?

“女にならないこと”です。勿論どう頑張っても本当の女性にはなれないのだけれど(笑)。もう少し具体的に言うと、あらゆる手段を使って100%の努力をすれば(現代医療も駆使するなど……?)見た目としてはほぼ完全に女性に近づくことはできますが、でもそれは世間的には性同一性障害、職業としてはニューハーフなどと呼ばれている方々が主に持っているっしゃるマインドです。

ぼくのジェンダー意識はそれらに属していないので、目指すべき方向として女性にベクトルが向いていないのです。つまり、単純に自分が自分らしくあるため、そしてあらゆる意味での創作活動を行うための表現手段として、自分にとって丁度良い男女のバランス感を模索した結果が今の自分というわけです。

○二つ目の「グループとしてのぼく」についてもお願いします。

ずばり魔法少女的女装です!

普段は普通の男子、ステージの上では(何故か分からないけど?)変身して女の子になる、そんな漫画やアニメの世界にありそうなネタを3次元に展開したエンターテイメントを意識しています。セーラームーンでも、変身すると女性になってしまう男性キャラクターがいたような気がしますけど(笑)。

○表現手段として、自分らしくあるため、そうやって女装を活用できる姿勢がすばらしいと感じます。今後どのように活動していきたいですか?

とにかく新しいものをつくりたい、そして、ぼくはそれに人生をかけています。次の時代の姿をいち早くキャッチしてそれを提示していく、そんな仕事をしていきたいです。そして、これからは恥じらいレスキューJPNを盛り上げていくことに邁進していく所存です!

○頼もしいです!では、最後に読者に一言お願いします。

この記事を読んで下さった皆さん! 是非、ライブ会場に足を運んで頂き、日本の新しい風を感じて頂けたらなと思います!

○恥じらいレスキューJPNのあおにゃんこと一条碧唯さんでした。ありがとうございました!

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