第57号 “ひとり”を基準にセクマイの老後を考えてみる

 

 ●みんな最後はシングル? 

シブヤ・セタガヤで同性婚や同性パートナーシップの話題の多い今日このごろですが、わたし的には、性的マイノリティは短期的なパートナーシップを繰り返しながら、シングルで暮らす人が多いのもまた一面の真実のような気がします(むしろそちらのほうが多い?)。

そして、「灰になるまで男(女)は男(女)」「河岸を変えればまたモテ期」……とは言いますが(私が言ってるだけ?)、そうした恋多き人にも、やがてシングルで迎える老い・高齢期が訪れます。

発病と入院、高齢になっての一人暮らし、身体能力や判断能力の低下、認知症、そして死……。子どもがいない私たちは、それらをどうやって乗り越えていくのでしょうか。

自分と同じく高齢になったきょうだい、あるいはその子である甥・姪ーーそれぞれに家族のある彼らに頼めるのでしょうか。事情があって親族と疎遠にしている人もいるでしょう。

パートナーがいるから安心、とはいきません。超老け専でなければだいたい同世代、自分が老いれば相手も老いています。そして死別すれば自分は子なし高齢シングルです。
「性的マイノリティの老後を考え、つながるためのNPO」「老後と同性パートナーシップの確かな情報センター」であるNPO法人パープル・ハンズでは今年度、ゆうちょ財団さんの助成金をいただいて、上野エリアで私たち性的マイノリティの事情に即した老後セミナーを開催しています。その第2回(10月24日)は、

 シングルで、同性ふたりで、
入院・介護・認知症、どうする?

 一人暮らしや、家族と認知されづらい同性パートナーとの暮らしで、入院や介護の状態になったら? 
 
病院面会や財産管理の代理など法律的な知識を正確に理解しておきましょう。

をテーマに開催。席数35が満席(全員40代以上)となる好評で、みなさん熱心に聴講くださいました。終了後は向かいにあるパブのハッピーアワーで交流会を呼びかけたところ、そちらにも16名のかたが参加され、自己紹介ののち、随所で歓談の輪ができていました。

セクマイの老後に、お金も大事、相方もいればなお幸せ。でも、たくさんお金があって不幸な人はいっぱいいるし、相方がいて寂しい人もいっぱいいる。安心できる老後(セクマイライフ)のために必要なのは、私たちバージョンに翻訳された情報と、多様な人のネットワークではないでしょうか?

パープル・ハンズが、そんな情報を得られ、いろんな人と出会える場になれたら、光栄なことだと思っています。

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  ●病気や介護、高齢期の一人暮らし……どんな対策があるの?

今回の講座では、つぎのようなことをお話しました。

 病気時

とかく心配される医療からの締め出し。パートナーや信頼する親友など、親族以外の人が面会したり医者から説明を聞けたりするためには、個人情報保護法や医療の意思表示の仕組みを正確に理解し、あらかじめ書面などを作成してパートナーや親友に預けておくことが有効です。
あわせて、救急などの情報が行きにくいので、相手の連絡先を明記した緊急連絡先カードを、財布などに携帯しておく自衛策も必要(参加者には、パープル特製の緊急連絡先カードをお配りしました)。

 介護

地元にある「地域包括支援センター」が相談窓口。ここは介護や高齢期の心配ごとのよろず相談所。自分の住所を管轄するセンターがどこにあるか、場所ぐらい知って、ちょっとのぞいてパンフレットなどもらっておいてはいかが?
そのほか、介護保険の仕組みのあらましをお話しました。

 高齢期の一人暮らしや認知症

なにかと不安な高齢期に、キーパーソンがついてその人の財産管理や病院・介護の手配などを代理する成年後見人の仕組みについてお話しました。これこそ家族力に乏しい私たちにとっての「外付け家族」です。

成年後見には、本人の判断能力が衰えたあとで裁判所に申し立て、後見人を指定してもらう「法定後見」があります。ただ、これだとパートナーや親友が後見人になれるか微妙ですし、そもそもパートナーや親友は親族でないので裁判所への申し立てもできません(申し立て権者は本人および4親等以内の親族)。

それで、あらかじめパートナーや信頼する親友間で、将来いざというときはよろしく頼みますという約束(契約)をしておく「任意後見」という制度もあります。任意後見は、これまでの連載では、例の渋谷区のパートナーシップ証明のための条件の一つとしてお話することが多かったと思いますが、パートナーの証明のためにするものではなく、本来はこうして老後に備えてするもの。相手としてはパートナーと契約したり、一人暮らし高齢者のための見守り団体や弁護士・行政書士など専門家と契約したりすることが増えています(だから、かならずしも任意後見、即パートナーシップの証明、とはならないわけです)。

セミナーでは、そうした基礎知識のうえで、こうした後見制度を私たち一人暮らしやまだ家族とは認められづらい同性カップルで活用した場合の想定ストーリーを紹介。「よくわかった」「こういう使い方ができるのか」と、大変好評でした(ストーリーはいずれここでもご紹介しましょう)。

今回は、助成元のゆうちょ財団のかたが活動監査ということで参加され、一緒に聴講してくださいました。最後に感想をお願いしたところ、ご自分もおひとりさま女性としてみなさんとおなじ心配を抱いている、おたがい偏見なく、おなじ問題に向き合うものどうし手を取り合っていきたい、と嬉しい感想を述べてくださり、大きな拍手を浴びていました。

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第3回は1月に、「遺言と相続、お墓、死後事務」など、いわゆる終活について考えてみる予定です。

 ●あなたには最期を託せるパートナーや友人がいますか?

さて、アンケート(回答30)には今回もさまざまなリアルな声が寄せられています。

そのなかで、「ご自身が発病や認知症時、託せる人や任せられる人がいますか」と質問してみました。

「いる」と答えた人では、パートナーや同居人と答えたかたは8名いました。そのほかに兄、姉、友人、担当してくれている福祉関係の人をあげたかたもいました。

一方、「いない」と答えた人のほうがむしろ多く、17人でした(参加者は40代、50代、60代が3分の1ずつで、まだみなさんそれを考えるには若かったのかもしれません)。
回答には、

 ・パートナーができればパートナーにしたいが、現状は妹

・ひとりっ子の自分はどうすればいいのか、悩み中

・他人に完全に任せるには躊躇する。親か妹に頼るしかないのかな、と思っています。

 ・まだ具体的にはないが、友人との関係をつくるとともに、法的な専門家と契約するのが現実的かと考えている

 ・見守りサービス、死後事務委任契約の利用

 ・いまのところは家族。今後は唯一いる姪っ子に……

 ・どうしても見つからない場合は自決するか?

などの記入もあり、いろいろ考えられました(自決なんて言葉も出るなんて……)。私も自分の高齢期をどうやって支えあうのか、不安だからこそパープルの活動を立ち上げたのも真実です。

 ・性的マイノリティに特化した老後の見守り法人として、パープルハンズの今後に期待大です。これから実績を積み重ねてほしい」(50代後半、ホモ)

という声もありました(セクシュアリティの表記は自称に従っています。以下同)。

 ・私たちは二人ぼっちで生活しており、外部を気にしないふりをして生活していましたが、これを期に外に出て、自分たちの置かれている状況を把握し、緊急時に対応していけたらと思います。(50代前半、ゲイ)

このかたは、昔はよく繁華街に出て知り合いも多かったそうですが、近年はパートナーとの生活に閉じて、あえて接触しないようにしていたそう(なんとなく気持ちはわかります)。でも、ゲイショップで買い物をしたらチラシがはいっていて参加してみたとのこと。ご縁はおたがい大切にしたいものです。

 ・自分の終活をしています。突然死のときの死後事務の委任や見守りサービスの情報など、参考になりました。(40代後半、バイセクシュアル)

 ・独居生活なので病気や突然死が不安、かつ友人も少ない、うつ病で服薬している。遺言作成や任意後見人の指定は早めに行ないたい。(50代後半、ゲイ)

 ・亡くなった後始末、私も自助グループに属していますが、どこまで有効なのだろうか。自分がなくなったあとのことを心配しても仕方がないけれど、最期の後始末をなるべく迷惑かけたくないです。(40代前半、FTMゲイ)

みんなそれぞれに心配ごとを抱えているようですが、こうして言葉にできることで、解決のための一歩を踏み出しているのではないでしょうか。

 ・死別で残ったパートナーの悲嘆のケアに関心があります。同性のかたがたはどう過ごしているのか。同性カップルでもこういう方面での活動やサポートがあったらいいな。(40代後半、レズビアン)
これもまた一つの宿題をいただいた思いですね。


【お知らせ】

成年後見や老後の見守りの理解に役立つイベントが2つあります。ぜひお出かけください。

LP研例会「成年後見、その実際を司法書士に聞く」
司法書士という専門家として、すでに認知症高齢者などの成年後見を多数受任しているパープル・ハンズのメンバーに、後見業務の実際をいろいろ聞いてみます。
日 時:11月23日(月、祝)17:00~19:00
場 所:コミュニティセンターakta
話し手:パープル・ハンズメンバーの司法書士、ゲイ(会場では本名でお話しします)
参加費:500円(会員無料)

TOKYO AIDS Weeks 2015「HIV陽性者の高齢期、その課題とサポート」
性的マイノリティ全体に重なる孤立、介護、認知症、貧困などの課題や、成年後見による支援について、ゲイに多いHIV陽性者支援の場面を例にご紹介。
日 時:11月28日(土)12:45~14:15
場 所:国立国際医療研究センター4Fセミナー室
話し手:永易至文(パープル・ハンズ事務局長、行政書士)
参加費:無料

 *第29回日本エイズ学会と世界エイズデー(12/1)連動イベント

 

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