第134回 渋谷区パートナーシップ証明書を取得してみてわかったこと

11月5日に渋谷区の同性パートナーシップ証明書発行が開始となり、全国的に大きなニュースとなりました。私たちもこの日のために準備を進め、第1号の証明書を受け取ることができました。
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発行後の取材に長谷部区長もお祝いに駆けつけてくださいました。
今回は、前回大好評だった「パートナーシップ証明書取得」の写真レポートに続き、実際に取得してみてわかったことをお伝えしたいと思います。
2015年11月5日。東京渋谷区と世田谷区の2つの区で、同性パートナーに公的書類を発行する制度がスタートしました。この2つの区の制度には違いがあります。
まず、渋谷区は条例で定められたもの。世田谷区は要項に基づいて区長裁量で発行されるもの。
渋谷区は公正証書を作成することが条例に盛り込まれていますが、世田谷区は当事者2人が宣誓書に記入するだけでパートナーシップ宣誓書の受領証がもらえます。
世田谷区は宣誓書の提出のためにお金はかかりませんが、渋谷区は公正証書を作成してから申請する必要があり、公正証書の作成にはお金がかかるのです。
10月23日に渋谷区の長谷部区長の記者会見が行われるまでは、証明書取得に必要な公正証書の作成には、2種類8万円程度かかると言われていました。
8万円! これはとても高額です。「絶対にパートナーシップ証明書を取得したい」と希望していた私たちも、正直この金額には戸惑いました。金額もそうですが、お金がかかること自体に抵抗があったのも事実です。
条例には、「任意後見契約」と「パートナーシップに関する合意契約」の2種類の公正証書が必要と定められています。
私とひろこさんはまだ30代。将来、認知症などになったときのことは、まだあまり実感が湧きません。今任意後見契約を交わしても、変更する可能性も大きい。そして私たちには「財産」と呼べるようなものもまだほとんど持っていない。それなのに、今の段階で何万円もかけて「任意後見契約」をするのはちょっと…。と思っていました。
もちろん「任意後見契約」が必要なカップルもいらっしゃると思いますが、私たちのような若いカップルにはまだピンとこないのも正直なところです。
今年4月1日の条例施行から、証明書発行スタートまでの半年ほどの準備期間に、区は男女平等・多様性社会推進会議を中心として、具体的な規則等の検討を進めてきました。
推進会議の委員である杉山文野さんが当事者を中心にパートナーシップ証明書に関するアンケートを実施してその結果を推進会議に報告したり、私とひろこさんも推進会議に呼んでいただいて、当事者としての実感をお伝えさせていただいたりしました。(8万円はとても高いと正直にお伝えしました)
そんな経緯もあり、「パートナーシップ証明を行う場合の確認に関する特例」がついて、条件つきで公正証書が1種類でも申請可能になったのです。
財産の形成過程など区が規定する条件に合致する場合には、「パートナーシップに関する合意契約」の1通でも申請可能という特例です。
渋谷区のHPには公正証書のサンプルも公開されていて、この特例を適用した場合には15,000円程度で公正証書を作成することができるようになっています。
私たちはこの機会に、「パートナーシップに関する合意契約」に、子どもが生まれてきたときのことや、病気になったときのことなど、必須事項だけでなくより多くの内容を盛り込みました。ということもあり、私たちの場合は公正証書の作成に18,250円かかりました。
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私たちは一緒に暮らし始めて4年になるのですが、これを機会にあらめてふたりのことについてじっくり話し合うことができました。
たとえば…
・病気になった際には、小雪のことはひろこさんに決めてもらう。ひろこさんのことは、小雪がひろこさんのご両親と話し合って決める
・養子縁組や精子提供などで子どもを持つ際には、ふたりで話し合って決める
・子どもにはできるかぎり愛情を注いで、暴力をふるわない
・別れる際には、必ず話し合う機会を設ける
など、必須事項以外にも私たちのパートナーシップに必要と思われることを盛り込みました。(異性のカップルも結婚する前に話し合った方がよいのでは?と思う、重要な内容でした。アメリカではわりと一般的な、婚前契約書のようなイメージです)
私たちは公正証書の作成にあたって、司法書士のKIRAさんにお手伝いいただきました。2CHOPOでも執筆されているエスムラルダさんと、そのKIRAさんのご著書がポット出版から近日中に発売予定です! こちらの本には公正証書の作り方や、渋谷区と世田谷区のパートナーシップ制度実現までの軌跡が丁寧な取材の元に書かれているそうです。私たちのインタビューも掲載予定。発売が本当に楽しみですね。
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仮の書影を送っていただきました。
私たちは公正証書を作成してみて、本当によかったと思っています。最初はお金がかかることに戸惑いがありましたが、結果的にふたりで色々なことを話し合う機会になったし、万が一のときにも安心できる書類がひとつ増えました。
そして、公正証書の作成も含めて、パートナーシップ証明書を取得してよかったと思っています。もし迷っている方がいらっしゃったら、私は取得してみることをおすすめしたいです。手に取ってみて実感できることがあります。そして、実際に使ってみて、「こういうことに使えた」「もっとこうしてほしい」「この部分が使いにくかった」などの声を伝え続けていくことが大切なのではないでしょうか。
まだまだ平等ではない社会の中で、当事者がきちんと声を伝えていくことはとても大切なことだと思います。

公正証書を作成してよかったというのは、あくまで私個人の感想です。区のサービスはすべての人に開かれていてほしいと思いますので、パートナーシップ証明書申請のための必須条件として、公正証書の作成にお金がかかることはやはり望ましくないと思います。でも今回の証明書発行はスタートラインです。これからよりよい制度になっていってほしいという期待を込めて、見守り続けていきたいと思います。

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