第16回 同性パートナーの生命保険金にかかる税金を改めて整理してみた

 

こんにちわ。LGBTフレンドリーな会計事務所、税理士の上村大輔です。

11月初旬、渋谷区、世田谷区で同性パートナーシップ関係の制度が始まるのと時を同じくして、民間の生命保険会社でも、すごく画期的な動きがありました。テレビや新聞などのニュースでも紹介されていたのでご存知の方も多いと思いますが、死亡保険金の受取人として、同性パートナーを指定できるようになるというものです。特に社会へのインパクトが大きかった「ライフネット生命」では、発表後、既に数十件の申し込みがあったようです(11月17日時点)。

さて、生命保険金と税金は実はとても関係が深いのですが、これまではそもそも同性パートナーを受取人にできなかった(?)ために税金以前の問題でした……が、ここにきて、いっきに税金の話が必要な段階に来ました!

というわけで、今回は時事ネタで、同性パートナーの生命保険金にかかる税金を改めて整理してみました。

1.……ていうか、逆に今までダメだったの!?
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このニュースを見て、逆に、これまでは受取人になれなかったの!? と思った方もいたかもしれません。2CHOPOの連載でもおなじみの永易至文さんの記事によれば、かんぽ生命(旧・簡易生命保険)では過去にも同性パートナーを死亡保険金の受取人にできたようです。他にも、たとえば民事信託を活用したり(2CHOPOでも先日紹介されていました)、パートナーと一緒に会社を設立し(二人とも役員になり)会社として生命保険に加入する、生命保険金の受取人を本人にする+遺言書を使って財産をパートナーに託す、などの方法で、結果的に同性パートナーへの死亡保険金給付と同じような効果をもたらす方法は(少し裏技的ですが)ないことはない、という状況でした。このような状況の中、今回は保険会社側から、公式に同性パートナーへの死亡保険金を認めるという発表があったので、大変画期的な出来事だったといえます。

2.死亡保険金を受け取った場合は
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同性パートナーへの死亡保険金の受取人指定をOKとしたライフネット生命では、特設サイトを設けて死亡保険金を受け取った場合の税金面についても紹介しています。
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こちらをもう少し詳しくみてみましょう。

まず生命保険金というのは、本来の相続財産ではないのですが、実質的には死亡したことによってもらえるものだから、相続財産とみなしましょう、という「みなし相続(遺贈)財産」に含まれます。

ではどれくらいの相続税額が発生するかというと……

亡くなった方の遺産の総額(現金預金に加えて、土地建物などの不動産は金額換算したものや、生命保険金を含めた合計額。借金などがある場合は相殺できます)がいくらか、相続人(両親、兄妹、甥姪など)が何人いるか、あるいはいないかによってだいぶ変わるので、一概に言えないのですが、おさえておきたいのは下記の3つのポイント。

①相続税の「基礎控除」は最低3,000万円

まず、大前提のお話になりますが、遺産の総額が3,000万円までは、相続税の「基礎控除」以下になるので、相続税は発生しません。この3,000万円は最低額で、もし法定相続人がいる場合は、一人600万円が加算されます。※同性パートナーは、(養子縁組をしていない場合は)加算対象にはならないので、もし他に法定相続人がいないときは、3,000万円です。

逆に、たとえば亡くなった方に法定相続人(兄妹など)が2人いたけど、結果的には同性パートナーだけが遺産をもらうような場合は、基礎控除は4,200万円(3,000万円+600万円×2)になります。つまり遺産を誰がもらうかにかかわらず、基礎控除は法定相続人の数で自動的に決まる…という点、ご留意ください。

②配偶者の税額軽減、生命保険金の非課税規定はなし

過去の記事でも見ましたが、婚姻カップルの場合、配偶者への相続にはものすごく大きい特例(優遇措置)があります。詳しくはコチラ

これは現状、同性パートナーは対象外……。それから、生命保険金についても、相続人がもらう場合は非課税枠(相続人の数×500万円)が使えるのですが、同性パートナーがもらう場合は使えません……(非課税枠はないのですが、遺産総額が基礎控除であれば税金は出ませんが)。

③2割加算

そして最後に追い打ちをかけるように…同性パートナーがもらった財産について相続税が発生する場合は、算出された相続税額が2割増しになります(涙)。

保険加入を検討するときは、これらの知識を頭の片隅に入れつつ受け取る保険金の額を決めるといいかもしれません。パートナーが実際に亡くなるのがだいぶ先の場合は、その時には税制なども変わっている可能性は大きいですが……。

3.意外と減税効果が大きい「生命保険料控除」はダメ
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もう1点、税金と関係のあるのが「生命保険料控除」。サラリーマンの方はちょうどいまの季節に書類準備をしている「年末調整」で受けられる所得控除のひとつです。所得税が課税される所得の計算上、支払った生命保険料の額に応じた一定の控除額を引くことができるので、結果的に税金が安くなる制度です。上限額もあるのでそこまで劇的に税金が安くなるものではありませんが、保険料を払っている期間中、ずっと受けられるものなので、長年の蓄積で見ると結構大きい税額軽減額になります。

こちらの生命保険料控除、実は保険料を負担した人(所得控除を受ける人)と生命保険金の受取人との関係性に制限がありまして、結論から言うと養子縁組をしていない同性パートナーは対象外になっています。国税庁のタックスアンサー「生命保険料控除の対象となる保険契約等」では、この控除の対象になる生命保険料を「保険金等の受取人のすべてをその保険料等の払込みをする方又はその配偶者その他の親族とするもの」としています。この場合の親族とは、当コラムの過去記事でも紹介した通り、「6親等内の血族、3親等内の姻族」になりますので、同性パートナーは入る余地がないのです……(養子縁組をされている場合は一親等の血族になりますので入ります)。

いかがでしたでしょうか。

税制がまだまだ追いついていなくて、同性パートナーを受取人にした生命保険については、法的婚姻カップルに比べて税金面では依然、不利な扱いになっているのが現状です。とはいえ、冒頭でも述べましたが、生命保険金の問題が、税金の話までおりて(あがって?)きたということ自体がすごく大きな前進で、次の段階として税金の問題が表面化して、改正されていく方向になるとは思います。ちなみに同性結婚ができるようになると、同性パートナーが法的婚姻カップルと同じ扱いになり、これらの問題は一瞬で解決する可能性もありますが、実態が同じようなカップルには結婚の有無を問わず同じような税負担になる社会が良いのではないかな……と個人的には考えます。皆さんはどう思われますか?

かみむら会計事務所では、同性パートナーの皆さまの税金に関するご相談などを承っております。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。お問い合わせ内容に「2CHOPOを読んだ」と記載いただけるとスムーズです。

 

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