世界ではじめて同性カップルを認めた町、コペンハーゲンへ。vol3.(豊かな暮らし篇)

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デンマークは、『世界で一番幸せな国』だと言われている。

これは国別の幸福度調査(レスター大学、ワールドバリューズサーベイ、ユーロバロメーター、ワールドハピネスレポート、ギャラップワールドポールなど)において、デンマークは1位、もしくは常に上位にランクインしているからだろう。

多くの国民が幸福と感じているデンマークのことは、実は前から気になっていた。その国の人々の生き方や暮らし方は、そのままその国のデザインに表れるからだ。

美術大学を出てデザインを仕事にして来た僕にとっては、インテリアデザインやプロダクトデザインにおいて、美しく人に温かいデンマークのデザインが、いったいどんな暮らしから生まれてくるのだろう……と思っていたのだ。

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僕の家にあるカイ・ボイスンの動物とハンス・J・ウェグナーの椅子。

〈ヤコブセンのビーチ〉
今回、コペンハーゲン旅行で一番楽しみにしていたのが、このビーチに行くことでもあった。有名な建築家でありデザイナーでもあるアルネ・ヤコブセンが、隅から隅までデザインしたビーチがあるのだ。

コペンハーゲン中央駅からは、10分くらいの高級住宅街に、『Bellevue Beach ベルビュービーチ』がある。駅を降りて300メートルくらいだろうか、てくてく歩くと、北欧の碧い海が見えてくる。

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青と白の監視塔は、すっきりと美しく海に向かって映えている。

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砂浜にあるシャワーさえもすっきりとデザインされている。

ビーチバレーを楽しむ人たちがいたり、日光浴をする人がいたり、海に入ってはしゃぐ人たちがいるのだけど、どこを切り取ってもヤコブセンの目立ちすぎないデザインのおかげで美しいのだ。

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日本だったら、様々な広告や張り紙なんかが溢れかえっているのではないだろうか。ビーチ全体を建築家がデザインするなんて、なんて斬新なアイデアだろうか。

道路を挟んで向かいには、ヤコブセンデザインの『ベルビューシアター』があり、その隣にはヤコブセンがデザインしたレストラン『ビストロ・ベルビュー』があり、今でもヤコブセンのスケッチや足跡を探すことが出来る。

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町から電車で10分のところに、これほど綺麗な海や林があるなんて、本当に驚きだ。この海での景色を見ながら、何度か自分に問いかけた。

「もしかして、僕はもう、死んでしまったのではないだろうか……?」

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そんな風に思うくらい、何もかもが美しかったのだ。

〈日曜日の過ごし方〉
日曜日にランチを食べた後、市場のあるNorrebroまで行こうと思いバス停に向かうと、バス停のあるはずの大きな道が歩行者天国になっていた。仕方なく歩いて目的地に向かおうとすると、なんだか歩行者天国の様子がおかしい……。

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車道にたくさんの家族連れが座り込んでいて、みんなで道に落書きをしているようなのだ。中には、大人だけの人たちもいるし、大人の男の人一人で凝った絵をもくもくと描いている人もいて、驚くことにその道は何百メートルも続いていて、ところどころで大きな笑い声や話し声が聞こえるのだった。

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またしばらく歩くと、有名なTorvehallerne市場に辿り着いた。ここは食品や植物などが分かれている大きな市場で、サンドイッチやホットドッグなんかも売っていてその場で食べることが出来る。

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ここでは何やらサルサのような音楽がかかっていて、おじいさんおばあさん、おじさんおばさんたちが楽しそうに踊っているのだ。それも、くるくると踊りながら相手も変わっていって、それを眺めながらみんな楽しそうに笑っている。

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日本では、日曜日の午後、どうやって過ごしているだろう?

家族連れは、どこか大型ショッピングモールか、近くの大きなスーパーかデパートにでも遊びに行ってお金を使っているだろうか……。

〈一日で最も美しい時間の過ごし方〉
7時半を過ぎる頃、ホテルのそばを散策に出かけると、川辺にはたくさんの人たちが押しかけていた。

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ワインボトルを持って飲むカップル。ビールを片手におしゃべりをしている若者たち。ただ座って夕陽を見ながら手をつないでいるおじいさんとおばあさん……。

北欧の夏の太陽を一瞬でも惜しむかのように、誰もが外へ繰り出し、1日のうちで最も美しい夕暮れの時間を思う存分楽しみ、慈しんでいるように見える。

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ふと住居のようなアパートメントを見上げると、同じようにバルコニーに出て、夕陽の中、のんびりと本を片手に時間を過ごす人が見える。

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日本だったらみんな、残業しているか、電車に揺られているか、家でテレビかインターネットでも見ているのかもしれない……。

デンマークという国が見せてくれる人々の豊かな暮らしには、驚かされることの連続だった。そしてそれは、セクシュアルマイノリティの暮らしにおいても様々な取り組みが実現されているのでした。

<セクシュアリティに関する学校教育>
デンマークの学校では、性の多様性に関する教育(性別、性自認、性的指向などの違いについて)は小学校の1年生の時に教えられる。その中には、同性愛に関する項目ももちろん含まれている。また、2012年には地方自治体や学校が年長の生徒に対して、同性愛・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどをより詳しく学んでもらうためにカリキュラムが組まれた。

<若い世代のセクシュアルマイノリティに対するいじめの撲滅へ向けて>
デンマークの学校において、『セクシュアルマイノリティに対するいじめを撲滅すること』はとても重要な課題になっている。また、王室の皇太子妃メアリーは、セクシュアルマイノリティをはじめとした人々の人権を守るためにメアリー基金を創設、この問題に対する理解と寛容を広げる運動の主唱者となって活躍している。

<職場でのセクシュアルマイノリティ>
デンマークでは職場においても、セクシュアルマイノリティだからといって特別扱いされることはない。人々はかなりオープンに自分のセクシュアリティのことを同僚に話している。その人のセクシュアリティや性的指向がいかなるものであっても、それによってその人を判断することはないそうだ。

<トランスの性別変更>
デンマークでは、トランスの人が性別を変更するために手術をする必要がない。無条件で役所に届け出るだけで変更できるのだ。(日本では、性別適合手術が性別変更の要件となっているために、本人が手術を希望しないのに手術をせざるを得ない、または、その手術は保険適用じゃないなどの問題がある)

<LGBTの老人ホーム>
基本的には、どんなセクシュアリティでも差別されることなく生きていけるデンマークでも、気心が知れた人だけで余生を過ごしたいと思うLGBTの人たちの希望により、コペンハーゲン市が今年の8月に、はじめてLGBTの老人ホームを創設した。ホームには111個の住居があり、1つの住居は55〜72㎡の広さがある。それぞれの住居にトイレとお風呂が完備しており、フィットネスやウエルネスセンターを備え、家族が訪れた時のために映画館やホテルまで隣接している。(この国では貧富の差は関係なく、誰でも老人ホームに入ることが出来る)パンフレットはこちら

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<世界でいちばん幸福な国には、他にも驚くことがたくさん!>
★食料の自給率が300%(日本:39%)。日本には豚肉やチーズを輸出している。
★風力を中心としたエネルギー自給率150%(日本:5%)。余ったエネルギーは輸出している。
★学校は義務教育だけでなく大学院まで全て無料。
★受験勉強はない。

高校の卒業がそのまま大学へのパスポートになる。そのため、早くから自分の学びたいものを探し、掘り下げてゆくことが出来る。高校を卒業したのち、2年でも4年でも好きに海外に行き自由な経験を積んだあと、帰国して大学に入ることができる。

★18歳以降、学生である間は、国から毎月お金が支給される(条件により最大10万円ほど)。お金持ちの子もそうでない子も、等しく自立するための助けとなる。
★毎日の仕事は、4時か5時には終わる。
★夏休みは1ヶ月近くある。
★仕事をやめても、次の仕事が見つかるまで最長4年間、給料の90%の失業手当が保証される。(たとえそれが自分の都合でやめたとしても)
★病院は無料。手術も無料(たとえ手術に2億円かかるような難病であったとしても)。出産も葬儀も無料。
★老人施設は無料。
★投票率は80%を切ることがない。

社会保障や教育が無料であると聞くと、我々はすぐに、「どうせ税金が高いんでしょ?」と『高福祉=高負担』を思い浮かべるかもしれない。

確かに、日本の消費税にあたる付加価値税は25%だし所得税も日本に比べて随分高いと思う。でも、その高負担によって、デンマークでは教育費や医療費が無料であったり、国民年金としてリターンされる確かな社会システムが実現されているのだ。

何よりも注目すべき点は、デンマーク人自身がその税金をまったく高いとは感じていないことであり、自分たちの暮らしを幸福であると捉えていることだろう。

こうしてデンマークに行って彼らの暮らし方を目の当たりにすると、幸福とはなんだろう……豊かさとはなんだろう……というシンプルな問いが浮かんでくるのでした。

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また行きたいな。コペンハーゲン♡


【関連記事】
▶︎世界ではじめて同性カップルを認めた町、コペンハーゲンへ。vol1.(LGBT篇)

▶︎世界ではじめて同性カップルを認めた町、コペンハーゲンへ。vol2.(観光・レストラン・ゲイバー篇)


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 2015/11/20 10:30    Comment  コラム   コペンハーゲン              
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