第17回 年末調整とLGBT

 

こんにちわ。LGBTフレンドリーな会計事務所、税理士の上村大輔です。

早いものでもう師走……街では「良いお年を」がポツポツ聞かれ始めましたね。会計事務所ではこの時期、年末調整という一大イベントがあって、バッタバッタしております。というわけで、今回は「年末調整とLGBT」というテーマで、季節ネタをお話したいと思います。

1.年末調整って何? 年末の調整なのは分かるけど…
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年末調整(ねんまつちょうせい)制度。サラリーマン版確定申告とも言われたりしますが、毎月の給料から概算で天引きされていた所得税を、年末にしっかりと調整(精算)しましょう、という制度です。毎月の給与天引きの際には少し多めに所得税をとっているケースが多いので、結果的にこの年末調整により所得税が戻ってくることが多く、通常12月の給料に上乗せして精算されることから、年末のプチ・ボーナス的な感覚をお持ちの方もいるかもしれません(実際は多くとられていたものが戻るだけですが……)。

会社にお勤めの方なら、今年も経理や総務の方から年末調整関係の書類を渡されたのではないでしょうか。それらの書類には必要事項を書いて、添付書類をつけて会社に提出しますが、ここでLGBTならではのライフスタイルが関係してくるところがありますので、ちょっと整理してみました。

2.LGBTの観点から見た各種控除
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年末調整は、書類のやり取りを通して社員に適用できる控除(こうじょ)項目(個々人の生活状況等に応じて税金を安くするためのしくみ)を会社が聞き、年間の税額を計算していく流れになっています。色々な控除があるのですが、少しLGBTの視点で見てみましょう!

(1)配偶者控除(はいぐうしゃこうじょ)
配偶者(妻、夫)を養っている場合で、かつ配偶者の収入が一定額以下(給料だけなら年間103万円未満)の場合に受けられる控除です。こちらは、法的婚姻カップルだけが控除の対象になります。11月から実施されている自治体の同性パートナーシップ関連制度で証明書を発行したカップルでも、この控除は受けられないことになっています。また、配偶者の収入要件が少し上がる「配偶者特別控除」も同様で、法的婚姻カップル以外は適用できません……。将来的に日本で同性婚が成立したら、LGBTの方もこの控除を利用できるようになると思われますので、頭の片隅にこの知識を置いておきましょうね。
【詳細はこちら】
配偶者控除
配偶者特別控除

(2)扶養控除(ふようこうじょ)
配偶者以外の生計一親族(6親等以内)を養っている場合に受けられる控除です。対象になるのは主に「子ども」かな~というイメージがあるので、自分には関係ない…と思っている方も多い気がしますが、実は「親」も対象になります。さらに「生計一」というと、同居だけかと思いきや……別居でも仕送りをしている場合などは対象になります。独り暮らしで、実家の親に仕送りをしている方でも、控除の対象になる可能性がありますので忘れずに!さらにその親が70歳以上だと控除額もアップ!ちなみに兄弟姉妹がいて、他の兄弟姉妹のうち誰かが親を控除対象にしている場合は、二重には控除できませんのでご注意ください……。
なお、「社会保険料控除」も生計一親族の社会保険(年金、健康保険など)を負担した場合は、負担した本人が控除を受けることができます。
【詳細はこちら】
扶養控除
社会保険料控除

(3)生命保険料控除
生命保険料を支払っている場合に支払額のうち一定額を控除できるものです。こちらは、通常の生命保険の他、介護保険、個人年金という3つのタイプの保険が対象になっています。前回の記事でも取り上げた同性パートナー受取人指定の生命保険については、残念ながら控除の対象になっていません。……が、例えば契約者が親などのご家族の生命保険料を負担している場合は、その負担している方が控除を受けられる可能性はありますので、こちらも忘れずに!
【詳細はこちら】
生命保険料控除

(4)寡婦控除・寡夫控除(かふこうじょ)
過去に法的な婚姻をされた方で、離婚・死別をした後一定の条件を満たしている場合に受けられる控除です。これ、男性(寡夫)の場合と女性(寡婦)の場合で適用要件が異なっており、なぜか男性の方が要件が厳しいのです……。LGBTの中でも、離婚経験がある方は対象になる可能性がありますので、ご確認ください。
【詳細はこちら】
寡婦控除
寡夫控除

(5)障害者控除
納税者本人や、養っている生計一親族に「身体障害者手帳」をお持ちの人などがいる場合に受けられる控除です。HIVや、うつなどの精神疾患で障害者手帳をお持ちの方は対象になります。
【詳細はこちら】
障害者控除

その他にも色々な控除がありますが、有名な「医療費控除」や「寄附金控除」、「雑損控除」の3つは年末調整では控除できませんので、後ほど自分で「確定申告」(翌年3月15日までに税務署に所得税申告書を提出すること)をする必要があります。

3.会社に言いにくい情報がある場合は
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年末調整はその性質上、かなりプライベートな生活状況を会社に知らせることになりますから、情報提供に抵抗がある控除もあるでしょう。たとえば「寡婦控除・寡夫控除」では離婚した事実、「障害者控除」では障害の有無を、まだ会社に言っていなかった場合は、年末調整を通して会社に知られてしまいます。特に障害者控除は、公式な添付書類ではないのですが、実務上、確認用に「障害者手帳」のコピーを求めてくる会社も多く、障害の内容まで知られてしまう可能性があります。

このような場合、年末調整では控除を受けずに、翌年ご自身で確定申告をして控除を受ける方法をとることができます。しかし、その確定申告で同時に申告をする住民税を給料から天引き(「特別徴収」といいます)されている場合、会社側に住民税の通知が届き、どの控除を受けたか判明する可能性がありますのでご留意ください。会社には知られずに、慎重に障害者控除を受けたい場合は、具体的には所得税の還付申告(税金が戻ってくる申告)を時効(サラリーマンの還付申告の場合5年間あります)の範囲内で時間差で行うなどの方法が考えられます。

いかがでしたでしょうか。年末調整をLGBTの切り口で見てまいりましたが、そもそも、(LGBTに関わらずですが)結構なプライベート情報を会社に伝えないと適正に控除を受けられないという仕組みが、ちょっと今の時代的には微妙ですよね……。ちなみにアメリカでは、年末調整という仕組み自体がなく、会社員も、自営業者も、みんながみんな確定申告をすることになっています。その方が、申告作業は大変だけど、納税についての意識も高まるし、年末調整時の無用なストレスも減るし、ある意味シンプルで良いと思うんですけどねぇ…。なお、来年から始まるマイナンバー制度では、この年末調整が激変する可能性を秘めているとも言われており、その流れの中でLGBTにどういう影響あるのか、私も研究して行きたいと思っております!まずは今年の年末調整、会社員の方は一度色々と見直してみてくださいね。

かみむら会計事務所では、会社員の皆さまの確定申告に関するご相談などを承っております。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。お問い合わせ内容に「2CHOPOを読んだ」と記載いただけるとスムーズです。

 

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