第35回 一夜限りの関係はやめられない

 

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久しぶりに一夜限りの関係を楽しんだ。出会い系アプリで知り合った人の家に行こうと、夜遅くに出かけた。いつもよりファッションにも気合が入る。しばらく履いてなかった勝負下着は少し窮屈に感じた。普段なら行かない見慣れない住宅街を一人で早足で歩きながら、心拍数がどんどん速くなった。緊張が嫌な汗になって流れる。ふと我に返って、自分に問いかけた。なんでこんなことをしているんだろう? 答えは明白だ。私は一夜限りの関係が大好きだからだ。どんな目で見られようと、これだけは胸を張って言いたい。ただのセックス好きと言われるとそれまでだが、実はもっと奥は深い。

今更言うまでもないが、一夜限りの関係の評判はあまり良くない。その時はよくても、結局満たされずに虚しくなることや情が湧いて傷付くことを恐れる人は多い。愛のない衝動的なセックスは品がないと考える人もいれば、誰とでもやってしまう軽い人は問答無用で軽蔑する人もいる。よく知らない人と性行為に及べば、もちろん性感染症のリスクだってある。もしかしたら相手が詐欺師や殺人鬼だったりする危険性だってある。ここまで嫌われている一夜限りの関係であるが、実は経験がない人の方が珍しいというから不思議だ。

相手の家の前に着くと、すぐにドアが開いた。写真とは少し違うが、なかなかタイプの人だ。向こうも自分を気に入ってくれたみたいで、中に招いてくれた。少しホッとする。間を持たせるための小言はできるだけ避けつつ、さっさと服を脱いでから水を一杯飲み込んだ。準備完了だ。一瞬のうちに雰囲気は変わり、キスと共に彼のベッドに倒れた。初めて会った人との初めてのセックスなので、がっしり深くではなく軽くあっさりで終わらせる。お互いに満足すれば、あとはティッシュであちこちキレイに拭いてから後味が悪くなる前に帰るだけ。しかし、どうやら今日の人はちょっと違ったみたいだ。

「お茶でも飲んでく?」

そんな可愛い笑顔で誘われたら、断れなかった。言葉に甘えて彼のリビングでくつろぐことにした。一夜限りの関係も大好きだが、一夜限りのお茶も大好きなのだ。さっきまで親密な時間を共有していたからか、会ってまだ一時間ちょっとなのに、もうだいぶ打ち解けている。お互いの肉棒をしゃぶしゃぶしていれば、それよりも恥ずかしいことはなかなかない。気がつけば数時間話し込んでしまった。彼が貧しい国の生まれだったことや移民としての苦労話、過去のセックスや恋愛話など、ごっそりディープにシェアしてくれた。このまま本でも書けそうなくらい相手を知ることができた。

実はこれが一夜限りの関係の醍醐味の一つでもある。とても短い時間の間に、今までにあったこともない人とここまで近づけるのだ。大げさかもしれないが、相手の人生を垣間見れてしまう。リスクやデメリットは多いかもしれないが、それがあるから一夜限りの関係はやめられない。彼の家を後にしてから、もうお互いに連絡は取っていない。一夜限りの関係だからもう会うこともない。それでも、彼のことはいつまでも心のどこかに覚えているだろう。なぜかそんな気がした。

 

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