第8回 カンチャナブリーへ行く

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タイの首都バンコクから北西へ120キロ程進むと、カンチャナブリー県へ到着する。隣国のミャンマーとの国境の近くには、仏教を熱心に信仰するモーン族やカレン族の人々が昔ながらの素朴な暮らしをしている。遺跡も数多い。

世界大会が終わった後、仕事の都合もあってこの地へやってきた。日本とは気候も文化も習慣も何もかもが違うこの土地。文明がまだあまり発達しておらず、電気もあまり通っていない。野生の猿や鶏が自由に自然を走り回り、そこらじゅうに実っている真っ青なバナナを採って人々は生活している。

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カンチャナブリーの朝は美しい。川を眺めて、野良猫と一緒に朝ごはんを食べる。昼間は日射しが強すぎるので、あまり出歩く人はいないらしい。現地の子ども達は学校へ行ってるのかどうかもよくわからないけれど、元気にハンモックで遊んでいる。夜になると聞いたことも無いような鳴き声の動物が遠くの方で叫んでいるが、辺りに電気が無いおかげで空を見上げるとプラネタリウムよりも綺麗な星空が広がっている。

まさかこんな土地でしばらく生活をすることになるとは、人生ってつくづく分からない。でも、私の人生はいつだって予想していない事だらけだ。最近は親に一体どこで何をやっているのかと頻繁に連絡を受けるが、正直私自身も一体何をやっているのかよく分かっていない。ただひとつ分かったのは、自分で思っていた以上にこのワイルドな生活環境が性に合っていたという事だ。

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私のようなトランスジェンダーは、一致していない心と身体を近づけようと努力するため、普通の人よりも自身の外見の事を考える時間が圧倒的に長い。気がつけば十年以上もこんな生き方をしていた。毎日毎日鏡と向き合って、生まれながらの女の子が気にしないような部分まで細かくチェックして、今日は大丈夫だろうか、男に見えたりしてないだろうかとビクビクしていた。何だろう、そういう生活から少し離れてみたかったのかもしれない。

見た目なんか関係ないといった類の言葉を、私は信用していない。もし本当にそうなら美容とダイエット業界は大赤字だと思う。でも、見た目が全てだとも思っていない。それ以上に大事なものがあるはずだと、思う。それは何だと聞かれると少し難しいけれど、きっと人それぞれの答えがあるはずだ。

カンチャナブリーの人達は、貧しい。日本では考えられないほど貧しく、まさしく日々のご飯のために必死に生きている。でも人々の顔を見ると、びっくりするほど笑顔に満ちている。活気に溢れていて、細かい事を気にする人なんて誰もいない。時計なんてどこにも無くて、お腹が空いたらご飯を食べて、日が沈む頃に家に帰る。そんな生活。みんな、生きている事自体が楽しいのだ。きっとそれ以上もそれ以下も無くて、ただ今日も生きている事に感謝して、日々を過ごしている。

そんな彼らと生活を共にしていると「そうだよね、生きるって本当は楽しい事なんだよなぁ」と気が付かされる。彼らを見ていると、毎日アイラインの引き方にこだわっていた自分が何だかとてもバカらしく思えてきた。ただ、生きることだけを考えて生活するって日本じゃなかなか出来ない。

上司が、部下が、時間が、残業が、SNSが、ブランド品が、流行のメイクが、おかしな制度が、それを邪魔する。そんな何かに縛られた毎日に疲れた人は是非一度、カンチャナブリーに行ってみるといい。

その時は私が、青いバナナの食べ方を教えてあげる。

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 2015/12/18 14:45    Comment  コラム   となりのさつきぽん              
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