第63号 音で伝える〈LGBT〉〜取材者を取材する③ TBSラジオ崎山敏也記者〜

 

性的マイノリティ/LGBT記事を発信している記者に逆取材する短期シリーズ「取材者を取材する」。最終回はTBSラジオのさまざまなニュース・報道番組で、豊富な取材と鋭い視点・切り口の、テレビやネットでは味わえないリポートを放送してくれる、崎山敏也記者です。
私がかつて発行していた『にじ』(2002〜04)という雑誌を、TBSラジオにニュースへ切り込む記者がいるなあと思って局宛で献本し、お返事をいただいたのがおつきあいの始めでした。

 ●土曜ワイドでパレード会場から20分中継も

ーーセクマイ問題の初取材はいつごろですか?

あなたに『にじ』を送ってもらい、同性愛者の老後や社会制度など、これは片手間の取材ですむ問題じゃないな、勉強しなければ、と思っているうちに2、3年がたったころ、はじめて行って番組を作ったのが、2005年に再開した東京レズビアン&ゲイパレード。一口に性的マイノリティと言っても、いろいろな人がいるんだなあ、が実感でした。名前を出していいのか、職業聞いていいのか、声だけなら出ていい、どこから来たかも言わない、親が聞いていたらまずい……事情は人それぞれ。でも、ハンセン病、精神障害、アイヌ民族など他の社会的マイノリティの取材でもおなじことを経験してきました。

ーーそのころはどんなことを考えて取材していましたか?

当時はパレードがあっても、その夜のニュースにも翌日の新聞にもぜんぜん出ない。まずは性的マイノリティ問題を可視化させなきゃいけない、と記者としては思いましたね。さいわい性的マイノリティに偏見とかはなかった。偏見を持つほど当事者を知らなかったというのが正確かな。あと私のキャラクターとして、何教徒であろうと何人であろうとさほど関係ない。知れば知るほど、自分の知らない世界があることに気づいて、それに興味をもつタイプで(笑)。

ーー「永六輔の土曜ワイド」でパレード会場から中継し、永さんや外山惠理アナと掛け合いをしたり、「荻上チキsession22」でもLGBTテーマを積極的に提案したりとうかがっています。

代々木公園から中継していると、男性が寄ってきて「これは本当に大事なテーマですから、今後もぜひお願いします!」と言い置いていったり、ネットで「きょうのTBSの中継は女装系や裸体系にばかり注目せず、いろいろな課題もバランスよく話していてよかった」ってブログに書いてる人がいたり(笑)。あるいは記者として培った人脈で、当事者にはむしろ「え、この顔合わせが!?」と驚かれるようなトークセッションが番組で実現できて反響があったりすると、まず出演を承諾してくれたご本人のおかげですが、提案者としても嬉しいですよね。

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さきやま・としや記者 1964年鹿児島県生まれ。毎日新聞を経てTBS入社。大学で科学史を専攻したこともあり、震災以前から担当する原発報道には定評がある(ノーベル賞など科学ニュースの解説も聞き物)。そのほか社会的マイノリティや、オウム事件をはじめかずかずの裁判も取材。東南アジア、80年代アイドル、鉄道……その該博な知識は「歩くイミダス」の異名も。リポートは「荒川強啓デイキャッチ」「荻上チキsession22」「人権Today」などで聞くことができる。(写真は当事務所屋上で)

 ●パートナー証明を取材者の目で振り返る

ーー2005年当時から取材を重ねてきたなかで、今年はなんといってもパートナーシップ関連がビッグニュースではなかったでしょうか。

渋谷は急に大きな話題になり、各社でかならずしも性的マイノリティの取材経験がなくても、取材を担当させられた人は多かったようですね。3月の成立時は、横断幕持って出てきた人たちになに聞いていいかわからない風で、「いまどんなお気持ちですか」「今朝はどんな思い?」「これからどう変わっていくと思いますか」。しょうがないから私が、「全会一致にならなかったことをどう思いますか?」「条例の作り方、提案の仕方が拙速だという理由で条件付き賛成の人もいましたが……」(苦笑)。記者は聞きづらいことでも聞くのが仕事ですから。
さすがに半年後、11月の交付のときは、「申請までに手間を感じましたか」などおめでた一色ではない、課題も意識した質問が出てましたが。

でも、3月の段階では、ラジオ局がニュース配信を受けている共同通信でも「同性パートナー条例」って書いていたり、条例成立直後に私が中継したときも、その直前にスタジオで「パートナーシップ条例」って言ってるから、私は中継でまず「最初に正式名言いますけど……」って。番組全体に喧嘩売ってるみたいになりました。

そうそう、渋谷といえば、議会傍聴の録音はさせないわ、傍聴希望者が多くても隣室にモニターの用意もしないわ、記者でもなんでも何時までに来て整理券に並べと言うわ……。原発再稼働で乱闘してる薩摩川内(せんだい)市議会でさえ録音できましたから(笑)、アレは困りましたね。

ーー証明交付の日は渋谷と世田谷を取材され、番組では現場の音を交えて長く解説していました。

印象的だったのは、メディア取材OKだった同性カップル3組それぞれの、パートナーシップにたいする考え方の違い。世田谷の男性カップルは、これまで結婚とかはどうでもいいと思ってきたが、これ(制度)ができたことで結婚という形をとる気になった。もう一組は、私たちはいつのまにかパートナーだったんですよ、こんなに騒がれてビックリしています。渋谷のカップルは、これを法的同性婚に結びつけたい、と。三者三様並べるしかないと思って、それを紹介しました。だから私の放送では、世田谷のほうが組数が多い分、長かったかもしれませんね。

そういえば、渋谷は午前で世田谷も午後1時に交付、写真も撮っているのに、時間的に間に合う夕刊に世田谷が出てないのが不思議でしたねえ。各紙、渋谷で代表すればいいと思ったのかなあ。

ーー崎山さんはいつもクールに取材するんですね(笑)。

いえいえ(笑)、世田谷では感極まって泣いているカップルさんもいて、私も思わず涙が出てしまいました。ただ、なにを取材し、放送でどう伝えるかは別ですよね。取材のスタンスって、当事者べったりではおかしい、でも完全客観的に語るのもおかしい。その中間で、原発でも被災地でもセクマイでも、当事者の話をよく聞いて、でも外の立場からも一言いいでしょうかーーそれぐらいのスタンスで放送を出してきたと思います。

それに私は、イベントや制度が始まったときより、数回目とか、半年や1年後を取材するほうを大事にしてるんです。すると、もう行き詰まっていたり、逆に想定してなかった結果があったり。パレードも毎年出かけては、「今年は企業広告が多かった」って放送でボソッと言っちゃったり。でも、私の知らない、面白そうな取り組みを始めた性的マイノリティの人にも出会えるので、パレードの存在自体は私が取材を始めた2005年ごろより知られるようになったけど、これからも取材は続けます。
おなじくパートナー証明も、その後どうなったかを追いかけるのが私の仕事かなと思ってます。

 ●リアルな声を伝え、実際に見てきた人間として語る

ーーセクマイ取材に熱心なのはみんな女性記者で、崎山さんのような男性は珍しい印象があるのですが……。

男が無関心かは疑問で、うちの若い男性ディレクターにも熱心なのがいますよ。ただ、女性記者は自分の性を意識させられる機会が多い分、セクマイの問題に共感しやすいかもしれないね。
実際のところ、この連載に以前登場した記者のようなかたを除けば、どのメディアも同性パートナーシップはいま流行りのものを横並び意識で取り上げているわけで、この問題を本当はどう思っているか、日々の放送に追われて、なかなか記者どうしで本音で議論する機会がない。せいぜい、最近話題ですよねとか、他局のアレでやってましたよね、て。
記者だって、同性愛でも「もんじゅ」でも、なんでそんなのやるんですか? って言う人はいますよ。でも、仕事では淡々と職業的にこなしている。放送局には、意外にそういう人も多い。それだけにLGBTもブームが終わったあとが大事ですよね。

ーーテレビや映像が当たり前の時代に、私自身、なぜ崎山さんのリポートをはじめ「ラジオ」がおもしろいのでしょうね?(笑)

ラジオはひとりで取材、編集し、しゃべって、ひとりで1時間の特番が作れる。パレード会場から20分中継したり、スリリングな1時間以上のトークが企画できたりするのは、ラジオならでは。取材もこのボイスレコーダー1台もって、相手とさりげなく話しているうちに、聞きたいことはほとんど聞いちゃって、そのうえで了解を得てそれを流す。そうやって現場を実際に歩き、その音を持ち帰り、見てきた人間としてスタジオで語る。スタジオで現場を踏まない人だけで話すのは気持ち悪いんだよね。せめて関係者を電話でつなぐとか。

クルーで動くテレビはそうはいかないでしょうし、はい何秒以内でお願いしますなんて言われて、自分の言葉じゃないみたい。記者会見で「最後にもう一度いまのお気持ちをお願いします」なんてやるけど、テレビは5分のニュースなら、最後にそうやってしゃべらせた5分の絵があればいい。でも、ラジオで話そうとしたら、100聞いておかないと10も話せない。

ーー深い取材に裏打ちされた自由度は、逆に記者の個性が出すぎて、偏向報道だと言われたりしません?

メディアはあくまで素材の提供者だということですよね。私はほかの記者が聞かないようなことを聞いたり、なかなか話してくれない人から聞き出して、人がとってこないような材料を提供したいーー本当は記者ならだれだってそうだと思うけど。それをリスナーや読者は、(他局や他紙とも)聞きくらべ、読みくらべしてほしいんですよ。

ーー今度は受け手のメディアリテラシーが問われているんですね。

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ボイスレコーダーを持って、きのうは川内原発、きょうは「もんじゅ」、明日は福島……。被災地には定期的に通い、駅前や市場から伝える様子にも、音だけなのに不思議なリアリティがあります。

【お知らせ】
今年の連載はこれで終わりです。ご愛読、ありがとうございました。新年は1月12日(火曜)更新分から開始の予定です。来年も性的マイノリティの高齢期を含む暮らしの問題に役立つ、生活感のある記事の執筆を心がけてまいります。みなさま、よい年をお迎えくださいませ!

 

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