第36回 恋愛ってめんどくさいのよ?

 

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「そろそろ誰か見つけて、恋愛でもしたいな」

どこか遠くを見つめがならそんなことを口にする友人をじっと見つめて、真顔で返した。

「それ、考え直したら?」

順調にキャリアアップし、生活も忙しくなってきた独身の彼からすれば、恋愛をすることでより充実した日々が送れるとでも思っているんだろう。それを否定するつもりはない。しかし、恋愛をすることで得られる幸せに負けないくらい、恋愛をしていることで背負う重荷も多いのだ。ロマンチックで、華やかで、毎日バラ色な恋愛をしている人なんて誰もいないと断言してもいい。どっちかといえば、恋愛って汗臭くて、泥臭くて、それでもやり甲斐がある感じではないだろうか。

人間がふたり集まれば、それだけで問題山積みだ。付き合って間もない頃は、恋に落ちている自分にすっかり酔っているのでそれが見えない。そして、お互いの距離が縮まれば縮まるほど、目の前に問題が飛び出してくる。完全に目が覚めた頃にはなんで恋愛なんてしたんだろうという後悔に襲われているだろう。その問題の山を前にして、ひとつひとつ解決していくか、そこから立ち去るか、その分かれ道に常に立たされる。一筋縄では行かない。

「一人で生きた方が絶対に楽だよね」

彼氏の愚痴をこぼし合う友人とは決まってこの結論にたどり着く。もちろん、長年恋愛しているふたりの超偏った意見なので、いざ独身になったらまた違うことを言っているかもしれない。誰かと人生のパートナーになるということは、相手が抱えている問題を一緒になって抱えるということだ。お互いが安定している時は楽しいかもしれないが、どちらかが躓いたら、ふたり分の重荷を抱えて歩くことになる。ふたりとも躓いたときのことなんて怖くて考えたくもない。

若い頃は楽な恋愛ができればと思っていたが、それはもうあきらめた。そんなものはないからだ。いくら長年のパートナーだからって、相手が何を考えているかなんてわからない。年を取れば、人間も変わるし、環境も変わる。その中で誰かと恋愛関係を維持するのは簡単ではない。少しの衝動で、完璧に築いたものでさえあっという間に崩れてしまう。今日は最愛の人でも、明日は宿敵に変わっているかもしれない。

こんなにネガティブに語ってしまったが、恋愛をするなと言いたいわけではない。自分とは違う他人と一緒になって問題を解決するのは簡単ではないが楽しい。その難関を乗り越えた瞬間を誰かと分かち合えるのは間違い無く幸せだ。ただ、その幸せに至るまでの汗や涙も恋愛の一部であることを忘れてはいけない。そのビタースイートなプロセスに価値を見出せる人なら、きっと恋愛を楽しいと思えるだろう。つまり、恋愛好きの人は自分をとことん追い詰めるのが大好きなマゾってことだ。

「どうしてこの人と付き合っているんだろう? この恋愛は自分が求めていたものだったのだろうか? 今ここで歩き去ったらどうなるだろうか?」

今の彼氏とは付き合って4年以上になるが、こうした考えは定期的に頭の中を駆け回る。それに対する答えは持ち合わせていない。きっとこれからもその答えにたどり着くことはないだろう。目の前には、今までに解決した問題と、これから解決する問題と、解決をあきらめている問題がゴロゴロ転がっている。この恋愛をしている限り、その不安定な足場からは逃げられない。それを含めて楽しめないとやってられない。

「誰か見つけたら、40歳までに子供も欲しいんだよね」

恋愛がいかにめんどくさいか説明している横で、友人はもっとめんどくさい夢を追いかけていた。思う存分に苦しんで、充実した日々を送ればいい。

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