第64号「ピンク」と「むらさき」〜年頭漫談〜 

 

 ●LGBTブームの去年を超えて
今年最初の連載更新です。みなさま、あらためて新年おめでとうございます。
昨2015年は久しぶりに巡ってきた「LGBTブーム」。90年代初期の「ゲイブーム」の時代を生身で経験した私には、その再来にも思われた1年でした。

90年代ゲイブームは、女性誌『クレア』の特集「ゲイルネッサンス91」を契機に始まり、今回のLGBTブームは、渋谷区で同性パートナー証明を含む条例案が発表されたのを契機に、突然まき起こりました。
しかし、90年代は、それに先立つ80年代後半からHIVを動因に、ゲイらの社会化の動きが兆していました。
昨年のLGBTブームでも2010年代以後、世界的な同性婚の法制化、NHKの福祉番組での取り上げ、一部経済誌でのLGBT市場特集や企業の動きなど、内外で変動の兆しがありました。なにより昔に比べて、周囲の友人などにカミングアウトする当事者が格段に増えていました。

そして、こうした情報は普及したSNSで急速にシェア・拡散されていきます。
知ってしまった人びとのあいだに、「海外ならアタリマエの存在が、なんで日本じゃダメなの?」「友人のゲイが、レズビアンが、なんで結婚できないの?」ーーそんな気分が風船のように膨らんでいたところをプチンと刺した渋谷の「針」。ブームは起こるべくして起こったのでしょう。

90年代ゲイブームは、93年10月オンエアのドラマ「同窓会」でピークに達し、94年には終息していました。ひるがえって2015年LGBTブームはいつまで続くのか? 情報の消費速度が格段に加速化している現在、すでに「飽きられ」始めているのか? それとも今年、第二幕、第三幕が切って落とされるのか……?

とはいえ、たとえブームは終わっても、私を含む当事者にとって性的マイノリティであることは、生涯にわたる人生の重要な一面です。
いま、私たちのあいだにどんな動きが生まれようとしているのか。以前に比べて新しい課題はなんなのか?
今年も目をこらしながら歩き、見たこと聞いたこと感じたことを、この2CHOPOでも書いていきたいと思っています。

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生涯を、性的マイノリティの誇りをもって歩んでいきたい。

 ●法で守られる安心を感じてほしい
さて、タイトルにかかげた「ピンク」とは、一昨年から業務を開始した東中野さくら行政書士事務所。昨年は当事務所でも何組か、ゲイやレズビアンのかたの公正証書作成のお手伝いをさせていただきました。

同性パートナーシップ契約書を作成し、公証人から「おめでとう」と声をかけられて恥ずかしそうにしていた若いカップル。
おなじく公証人による遺言の読み上げを聞きながら目頭を押さえた、カップル歴30年以上にわたる60代のゲイのかた。
書面に込められた一組一組の尊い人生を思い浮かべながらの業務は、私のかけがえのない経験となっています。

まだまだ、けっして多い業務数とはいえませんし、それ専業で成り立つところまではいっていません。こうした法的書面が大事だとわかってはいるけれど、いつか作ろうとか、費用が心配などで、なかなか踏み出せないのかもしれません。事務所が継続できるのか、この3年目が分かれ目でしょう(もとより商才のある私ではありませんし)。
ただ、取材や編集の過程で培った情報やネットワークを活かし、専門家として仲間の役に立とう、と志してとった資格です。思い立ったときには事務所が無くなっているまえに(笑)、ぜひまちの法律家」行政書士へ、お気軽にご相談していただければと願っています。

弊事務所では、公正証書で同性パートナーシップ合意契約書を作成し、それを補完するかたちで、病院面会などのための「医療の意思表示書」(行政書士作成)をつけ、あわせて同性パートナーのライフプラン全体についてコンサルティングするパッケージを「さくらセット」と名付けて、5万円(税別。公証役場手数料も込み)で行なっています。
パートナーシップ初期の若いカップルには、経済的負担も少な目で、お勧めできると思います。
*渋谷区に在住の場合、この公正証書1つで区のパートナーシップ証明を申請することもできます。

もちろんこれでも高額ですから、ふたりで同性パートナーシップのコンサルティングを受けていただき、お金をかけなくても備えておけることをいろいろ知っていただくとともに(永易式ノウハウ?)、せめて医療の意思表示書だけでも作成しておくことを、1万円(税別)で行なっています。

ふたりでお金を出し合って住宅を買う場合、共有名義が難しい現在、名義者に万一のことがあったときに備えて遺言を作ることが大切です(できれば公正証書で)。遺言作成費用は、マンション購入費用の一部かもしれません。頭金部分を名義者でないほうが出すなど大きなお金が動く場合にも、両人間で法律的に適切な書類を作成しておくことが安心につながります。そうしたご相談も、何組か受けてきました。

パートナーシップが長いとか、お互いにいい年の場合には、もう少ししっかりした委任契約や任意後見契約を作成しておくこともいいでしょう。入院や介護、認知症時の財産管理や契約などの法律行為を代理することができますし、任意後見契約は登記もされますから対外的な証明にもなります。

こうした書面の作成やご相談を機会に、行政書士という専門家と知り合いになっておくのは先々、大事なことではないでしょうか。
私は、まだまだ社会的に困難なことが多い性的マイノリティは、事情をわかってもらっている3つの相談先が大事だ、と呼びかけています。「身体の相談先」(かかりつけ医など)、「お金の相談先」(FPや保険担当者)、「法律の相談先」(弁護士や行政書士など)です。行政書士でFPでもある弊事務所は、あとの2つをワンストップで兼ねることができます。

もちろん、書面はしょせん紙ですし、作成費用がかかったわりに「万一」の事態が起こらなければ使わない、無駄じゃないの? と思うかもしれません。でも、その紙がなかったばかりに「万一」が起こってしまったとき、病院で会えなかった、死に目に立ち会えなかった、マンションを失った……などの悲劇が起こってきました。

苦心の末に世界ではじめて真珠養殖に成功した御木本幸吉(みきもとこうきち)は、「世界中の女性の首を、わしの真珠で締めてみせる」と言ったそうです。それに習って言えば、「日本中の同性カップルを、わしが公正証書で巻いてみせる」……さすがにそこまではいきませんが(苦笑)、少しでも多くの人に、法で守られる安心を感じてほしいと願っています。

なお、法的書面やライフプランの情報については、昨年刊行した拙著『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』でも解説しました。その一部が、こちらでも読めますので、参考にしてみてください。

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パートナーシップ相談は初回無料です。どんな事務所なのか、気軽にお立ち寄りください。

 ●学びと仲間作りの場を今年も
もうひとつの「むらさき」であるパープル・ハンズは、友人らとともに運営している性的マイノリティの老後を考えるNPO法人です。学びと仲間作りの場、老後と同性パートナーシップの確かな情報センターを掲げ、この3月からは法人4期目に入ります(設立から通算7年目)。

昨年は、一足さきに老後問題が現れているゲイのHIV陽性者サポートを切り口に何度か講演の機会をいただいたり、郵便貯金でおなじみの一般財団法人ゆうちょ財団さんの助成金をいただいて、性的少数者の現状に即したライフプラン講座の提供を行なったりしてきました。
もちろん、新宿のaktaさんをお借りして、基幹イベントであるライフプランニング研究会やパープル・カフェも継続しています。地味な場ながら、熱心に通い続けてくださるかたがいます。

会費を払って支えてくださる会員さんは、正会員・賛助会員あわせて約50名おられ、またいくつかの団体・基金から助成金をいただいて、身の丈にあった規模のイベントを実施しています。
春の東京レインボープライドではブースを出したり、「レインボーウイーク」にもなにかイベントをしようと考えています。

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ゆうちょ財団さんの助成をいただいて上野エリアで開催中の、老後の無料ライフプランセミナー。毎回好評です。ブログやツイッターでお知らせするほか、メルマガ登録が確実。

お正月は昔なら、一つ年をとる季節。また一つ老後に近づいた私たちを支えるのは、セクマイバージョンに整理された情報と、人のネットワークです。情報はもちろん、今後の活動予定も2CHOPOでお知らせしていきますので、ぜひ、この場も活用していただければと願っています。

では、みなさま、今年も一年、よろしくお願いします!

 

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